「ありがとう、お姫さま。愛してるよぉ♪」

Knightsのお姫様が泉くんに恋をするのは当然だ。泉くんは女の子を恋に落とすのが上手い。嫌になるくらい。

「それデ?子猫ちゃんはボクに何の用なノ?」
「占ってもらおうと思って!!私には塩対応しかしない瀬名泉との恋について!!!」
「……あァ、そウ。まぁうまくいくんじゃなイ?」
「えっなんでそんな投げやりなの!?もっとちゃんと占ってよ……!」

夏目くんに相談したら、この対応である。
泉くんどころか夏目くんからも塩対応。
私もたまには甘やかされたい。じゃあKnightsのお姫様になればいいじゃんって思うんだけど、でもそれは何ていうか……違うのだ。
普段の瀬名泉を見てしまっているせいか、彼のあのファンサがただのファンサでしかないことを知っているから。
本物はだってもっと愛情表現が気持ち悪い……って、なにこれ悪口みたい。でも私は、そんな瀬名泉が好きなのだ。

「普通に好きだって言えばいいでショ、ボクに相談なんかしなくてモ」
「ええ……だってあの瀬名泉だよ?告白したところでフラれて終わるのが目に見えてるっていうか……」
「そうやって二の足踏んでるト、かっさらわれちゃうかもヨ?」
「え?」

ふっと視界が暗くなる。
驚いて顔をあげれば、とんと肩を押されて壁に腕をつかれた。え、これってもしや壁ドンってやつですか。え?

「"好きだよ、菜々"」
「な、夏目、くん?」
「"瀬名泉じゃなくて、ボクを見て。ボクなら菜々を幸せにしてあげる"」
「待って……なつめく、」

あわや唇が重なるかという距離まできて、不意に夏目くんが離れた。
顔が熱いのは夏目くんが急に変なことをするせいだ、馬鹿。悪態をつこうにもドキドキと早鐘のような心臓が煩くて上手く言葉がまとまらない。

「まったク……邪魔しないで欲しいんだけどナ」
「はぁ?邪魔してきてんのはアンタでしょ、何勝手に菜々に手を出そうとしてるわけ?」
「えっ」
「ほら菜々、行くよ」

いつの間にか泉くんがいたらしい。
強引に腕を引かれて、夏目くんの前から連れ出される。待って待って、本当に何が起きているのかわからない。
目を白黒させたまま泉くんについて人気のない場所まで移動すると、何故か再び泉くんに壁ドンされるような体勢になっていた。
何なの、今日は壁ドンが流行りなの?

「い、泉くん?これはあの」
「……アンタ、あいつが好きなの?」
「は?」

いやいやいや、私が好きなのは泉くんですけど!?
確かにさっきの夏目くんには不覚にもドキドキしちゃったけど、泉くんには勘違いされたくない。
でもまさか泉くんとの恋を占って貰おうとしてましたなんて言えないし。なんと言えば良いか迷っているうちに、泉くんは長い長い溜息を吐いた。

「……困らせてるね、ごめん。頭冷やしてくる」
「まっ、まって、泉くん」

ふっと泉くんが苦笑して離れていく。
泉くんを傷つけたような気がして慌てて呼びとめた。
もしかして、告白するなら今──だろうか。

「あのねっ、泉くん、私……!」






「あーあ、上手くいっちゃったカ」
「元より、邪魔するつもりなんてなかったでしょう?」
「煩いよセンパイ」

いつの間にか近くにいたセンパイを殴る。
結構ボクも本気だったんだけどななんて本音は心の奥に仕舞ったまま、その場を後にした。
まぁ、せいぜい幸せになってよね…、菜々。


- 神対応と塩対応



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