「……どういうこと、ですか」
「貴女が私を恋愛感情で見ているのには気づいていました。ですが、私にはその気持ちは分かりません。……一人相撲は悲しいでしょう、他の人へ興味を移すのをオススメしますよ」
「でも……でも、私は日々樹先輩が、」
有無を言わせない視線だった。だから、ハッキリと迷惑だと、そう告げられる前に部屋を後にした。
ただ隣にいられるだけでも幸せだった。
日々樹先輩の演技に魅せられて、釣り合うようになりたくて頑張ってきたのに。
段々と足は重くなり、前を向くのが辛くなる。
やがて道路の隅に蹲ってしまった私に声をかけてきたのは、通りすがりであろうみかくんだった。
「……菜々ちゃん?どないしたん、そんなところで蹲って」
「……、みかくん」
どうもしてないと答えるのは簡単だ、みかくんは優しいからきっと信じてくれる。
でも、
「ちょっと……傷心中で」
「傷心……って、誰かに馬鹿にされたりしたん?菜々ちゃんに限ってそれはないやろうと思うけど」
「うん、違う……」
ここでみかくんに甘えるのは狡いだろうか。
純粋なこの子の気持ちを利用するのは、
「みかくん、ちょっと」
「んん?どうしたん?」
小さく名前を呼んで手招けば、近づく距離。
彼の腕を引いて、有無を言わせないまま唇を重ねた。
「〜っ、菜々ちゃん!?急にどうしたん、」
「……みかくん、好き」
「何、言うてるん、」
「好き、だよ……」
呆然とするみかくんに構わず抱きついて顔を肩口に埋める。
視界の端で、水色の長髪が揺れた。