僕に黙って何してるの?

久しぶりに友人と買い物に出かけた。
くだらないお喋りが楽しくて、めいっぱいリフレッシュして家に戻れば、千秋くんが静かにそこに居た。
「あれ、千秋くん?来てくれてたなら教えてくれればよかったのに」
「……」
話しかけると千秋くんは無言のまま顔を上げた。
……なんだろう、千秋くんがこわい。
流石に正義のヒーローがしていい表情じゃないと思う、なんて口には出せなかったけど。
「え、なに、どうかしたの……?」
「……菜々。俺に黙って、何してたんだ?」
「え?」
とん、と肩を押されて身体がソファに沈む。昏い表情のまま、千秋くんが呟いた。
「……菜々に触れていいのは俺だけだ、そうだろう?」
「な、に……どうしたの、千秋く、」
強引に抱きしめる腕の力は吃驚するくらい強い。とんとんと胸元を叩けば、有無を言わさず唇を塞がれた。尋常じゃない様子の千秋くんにガタガタと身体が震える。
「菜々」
優しく名前を呼ばれれて顔をあげれば、千秋くんはそっと私の頬に触れた。そしていつも通りの明るさで笑う。
「愛してるぞ」
捩じ込まれた感情の重さに、泣きたくなった。
Back Top