潔白なら証拠を見せて

無いものは証明できない。悪魔の証明だ。
「それで?おぬしの言い分はそれだけかや?」
冷たく突き放すような零さんの声に、思わず涙が滲む。浮気なんてしていないし、していない事の証拠なんてどう用意すればいいのか分からない。
「……だって、」
「それではおぬしは浮気をしたと認めるのじゃな」
「それは違う……っ」
そこだけは否定しなければと慌てて声をあげれば、零さんは大仰に肩を落とした。
「潔白ならば証拠を見せてみよと言うておる。我輩も、そんなに気が長い方ではないんじゃよ」
「……っ、どうすれば、納得してくれますか」
それでもここで引き下がるわけにはいかないと、必死で頭を働かせる。零さんは冷たい空気のまま笑った。
「くっくっく、必死じゃのう。しかし、ヒントを与えてしまっては意味があるまい?」
「なんでもします、零さんに信じてもらうためなら何でも……っ」
ほとんど勢いで、縋るように口にすれば、零さんは妖しく口角を上げた。
「その言葉、偽りはないかや?」
零さんを見上げて頷く。不意に衝撃が襲い、意識が途絶えた。
「……今宵はご馳走じゃな♪愛しておるよ、嬢ちゃん」
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