乾杯、という合図と共にカチン、という小気味いい音。机に並べられている芳しい香りのする料理に皆々表情を緩め、手をつけはじめる。

「いやあ、労働終わりの一杯はやはりいいものだねえ」
「マーリンは何もしていませんでしたけどね」

麦酒をぷは、と飲み干したマーリンは傍らにいるアナの言葉に「アナは相変わらず私に手厳しいね」と苦笑するも、意に介さずこくこくと蜂蜜入りのミルクを飲んでいる。そんな二人の向かい側、藤丸立香とマシュは料理に舌鼓みを打ちながらレオニダスと共に会話に花を咲かせている光景を料理を口に運びながら見ていると、横から「タケル殿」と牛若丸から声が掛かる。

「どうですか、一杯」
「…牛若丸殿。其方は少し飲みすぎではないか?」
「む、タケル殿。よもや私の麦酒が飲めないというのですか?」
「牛若丸様、絡み酒はよくありませんぞ。タケル殿、申し訳ない。普段はこのような酔い方はしないのですが……」
「弁慶、酔ってはおらぬぞ。宴の際このような絡みをするのが通例だと以前藤丸殿に訊いてな」

やってみたくなってな、と快活に笑う牛若丸にタケルは小さく笑い、弁慶は呆れながらも主を映す眼差しは暖かく。

酔ってまたウルクの橋での失態を繰り返してはいけませぬぞ、牛若丸様。ほう、面白いことを言うな弁慶。よーしそこに直れ。

二人の会話をああ、いつものやり取りだな、と微笑ましく思いながらタケルは麦酒を口につける。魔獣からウルクを守るために戦う日々だが、こうして晩餐を囲む時間は心が安らぐ。



ウルクの夜は、ゆっくり更けていく。





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