夜空の下、ウバメの森には一人の青年と側にはブラッキーが佇んでいる。

昼間でさえ薄暗いこの森は、日が沈み夜の帳が落ちる時間帯には子供は勿論大人でさえも寄り付かない。ホーホーと虫ポケモンの鳴き声だけが絶えず聞こえている。

黒髪の青年は切れ長の桔梗色の瞳にただ黙って目の前の祠を映している。

ウバメの森に伝わる伝説。森の神であるセレビィは、時を渡ることができるという───

「…時渡り、ねえ」

青年の形のいい眉がひそめられる。その表情はどうせ眉唾物だろとでも言いたげだ。

仮に、仮にだ。時を越えることができたら自分は一体何をしたいのだろう。

───過去を、やり直すことができる?

そう考えた瞬間、どくりと心臓が鳴る。思わず祠を見つめるも静寂に包まれているだけで無言を貫いている。







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