「ツバキ!!」

珍しく焦燥の表情を浮かべた青年の姿がスローモーションに映り、自身の名前を叫んだと同時にどん、と突き飛ばされる。

「っ、……!」

瞬間、耳をつんざくような何かが落ちた大きな音、視界を覆う砂埃。

耳に残る残響と突き飛ばされた衝撃にふらつきながらもツバキは辺りを見渡すと、先ほど起こった事象を即座に理解する。

「落盤事故…」

危うく下敷きになるところを回避できたのは、あの時自分を突き飛ばして救ってくれたミカゲのおかげだ。

───じゃあ、そのミカゲは?

コンクリートがまるで紙のように積み重なり、人の姿は見えない。

ツバキのすぐ傍、ミカゲの一番の相棒であるブラッキーが倒れたコンクリートの隙間に頭を突っ込み、“何か”に呼び掛けるように必死に鳴き声をあげている。

(まさか、)

覗いた視線の、先。

だらりと力なく下がった右手からは絶え間なく赤い液体がぽたりと落ち、血だまりを作っている。

切れ長の桔梗色の瞳は固く閉じられ、開く様子は微塵もない。

「ミ、カゲ…………」

呆然と友人の名を呼ぶも、自分の声だけが虚しく反響するだけだった。





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某ドラマに影響されて書いたやつ。




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