資料や文献を読み漁っていればもうすぐ日付が変わろうとしている。資料や文献から時計に目を移し、カチカチと規則的に時を刻む秒針をひたすらに見つめる。

私の膝の上でプラスルが、マイナンとニンフィアは寄り添うように床で静かに寝息を立てている。

カチ、カチ。長針と短針が重なるまで、あと数秒。

────…カチリ。時計の針が重なる。日付が変わった証。

「…おめでとう、ミカゲ」

血を分けた、誰よりも愛しい大切なあの子を想いながら一人そっと祝いの言葉を呟く。

毎年こうしてあの子の誕生日を、あの子がいない空間で祝うのは習慣と化している。

寂しくないと言えば嘘になるが、自分の身勝手な理由であの子を手放したのだから自業自得だ。

けれど、夜空の下で邂逅したあの子の鮮やかで美しい桔梗色を記憶の中でなく、もう一度確りと目に映してあの子の生まれた日を祝福したい。

そしてあの子にずっと伝えたかった言葉を言うのだ。生まれてきてくれてありがとう、と。



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