この日のために完成させた論文を手に持ち、壇上へと上がっていく。ひそひそと微塵も隠すつもりのない悪意の言葉が煙のようにまとわりつく。「世間を知らない若造が」「盗作じゃないのか?」馬鹿馬鹿しい、と内心で一蹴する。声がしたほうに一瞥しようとするも、どうせ「睨んでいる」などと難癖をつけられるのがオチだ。カツン。壇上に上がれば自分を値踏みしている視線の数々。興味なさそうに、いや、実際興味ないのだろう───欠伸をしている姿もみえる。

改めて上から見下ろせばその顔触れは口が達者なだけの烏合の衆。ひどく滑稽で笑いさえ込み上げてくる。

「──…本日は私めのためにお集まり頂き、誠にありがとうございます」

建前の挨拶を述べ、本題へ。

これはほんの序章。自ら深淵に足を踏み入れ、その先へ。



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