※ゆちさん宅のゼンカミ前提の話。




恋人ができたの。想いを寄せている目の前の幼馴染に言われた言葉に青年は一瞬、ほんの一瞬カップを持つ手を震わす。おめでとう。自身の気持ちを隠し、笑って祝福の言葉を述べる。俺は今、上手く笑えているだろうか。











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ソファーに仰向けに寝転びながら映画の台本を読んでいた手を止め、スイはぼんやりと天井を見上げる。

内容は、久しぶりに会った幼馴染が互いに好意を寄せているのもののすれ違いを繰り返すが最後は結ばれるというもの。

自分が演じるのは幼馴染の役だが、現実でも幼馴染という立ち位置にいる。

役の自分は想いを寄せている幼馴染と結ばれるが、現実の自分は結ばれることなくいつまでも幼馴染の関係で在り続ける。

その皮肉さにスイは顔に腕をのせ力なくふ、と自嘲した。

「現実は映画やドラマみたいに上手くいかないなあ…」

当たり前だとわかっているけれど、そんな馬鹿げたことを思うほど彼女が好きだった。

彼女の隣には恋人という位置の、濃い紫の髪色をした青年がいる。互いに幸せそうに笑いあう姿を思い出し、スイは灰色がかった青い瞳をそっと閉じた。

誰よりも大切な幼馴染が幸せならそれでいい。例えそこに自分がいなくても。

「…好きだよ」

この気持ちは彼女には届かないし、届けるつもりもないけれど。


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