受信トレイ
day:14/08/12 13:46
from:ウソップ
sub:無題
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週末、久々に高校の時の同級生たちで遊ぼうと思う!!
勿論お前も来るだろ?
-END-
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久々に来た高校の友達からのメール。
同級生って、誰が来るんだろう。
──…でもウソップが企画したんなら、
仲のいいルフィも、来るよね…?
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夏の夜、蒸し暑さが残り僅かに汗をかくことのある時間も
海沿いだと空気が、匂いが違う。
潮の匂いに波の音、砂浜を踏む感覚…どれもが普段なかなか味わうことのないもので、それだけで気持ちが弾んでしまう。
大学生にもなって、海で遊ぶ機会が来るとは思わなかった。
水着を着たのもいつぶりだろう。久しぶりだから、思わず新しい水着なんて買ってしまったり。
そりゃあ、まあね。好きな人がいれば女の子なら誰だって見栄張りたいよね。
一般向けの打ち上げ花火で騒ぐ、高校の頃の同級生たち。大学は別々になってしまって会う機会がだいぶ減ってしまったけど、変わらず仲良くしてくれる皆にホッとした。
その中で、一番に騒がしいのはルフィだ。その良い意味での騒がしさは同じクラスだった時となんら変わってなかった。
疲れてしまって近くに座り込んだ私は、打ちあがる花火に目を輝かせたり、ウソップと一緒に走り回りながら手に持つ花火を楽しむルフィの姿に、自然と口角があがってしまう。
大学生になっても、子供みたいな無邪気っぷりは健在のようだ。私の大好きな笑顔も、健在のようだ。
「イオー花火やんねェのか?」
見てるだけの私に気付いてくれたルフィが、ちょうど持っている花火が終わりそれを水の張ったバケツに放ると、私の方へ歩み寄ってくれた。
立ったままのルフィを見上げて、「じゃあやる」と答える。
「私線香花火がいいな」
「線香花火ィ?もっと他にもいっぱいあるぞ!色が変わるのとか、ねずみ花火も!くるくる回ってすっげーぞー!」
「ルフィたちの見て充分楽しんだもん。私線香花火好きなんだ」
「ふーん…じゃあ持ってきてやる!待ってろ!」
ルフィは私の言葉に納得したのか分からないが、花火をまとめて置いてある方へと向かう。その場でしゃがみこんでがさごそと物を漁っている背中を見つめていると、やがて彼は立ち上がり、こちらへと駆け寄ってくる。
私の隣に来て持ってきたものを広げた。線香花火と一緒に、ライターを持ってきていた。その場で火を点けられるようにと気を利かせたのだろう、ルフィにしては珍しい。
「ほら」と差し出された一本を受け取ると、早速ルフィが火を点けてくれる。
先端からぱちぱちと火花が散る様子は、久々に見たけれど相変わらず綺麗だ。
ルフィたちが遊んでいたような派手なものじゃないけど、静かに輝いている線香花火を見るのが私は好きなのだ。いかに長く保っていられるかを頑張るのもお決まりで楽しいしね。
「…地味だなァ」
他の友達は派手な花火でまだまだ騒いでいるのに、私は少し離れたところで線香花火。明らかにルフィは向こうのグループにいるべきだろうに、つまらないなら、無理に側にいなくてもいいんだけど、な(嬉しいけど)
だって線香花火って、たいていは最後の締めくくりでやるもの。でも花火の量からして終わりにはまだ早いから、皆は線香花火に目もくれない。そんな雰囲気でもない。
同じ砂浜にいる筈なのに、一緒に遊びに来た筈なのに、少し離れた場所でやっている花火が違うだけでこうも世界が変わる。
騒がしいところで一緒に笑っているのも楽しいけど、このまったりとした時間も捨てがたい。
「ルフィにはつまらないかもね。でも、この儚い輝きが私は好きなのよ」
「ふーん…」
とても理解できないのか、ルフィは立てた膝においた両腕に更に顔をのせると、まじまじと線香花火を見ていた。
その視線を何となく感じながらも、私は僅かにする花火の音、小さく弾ける光に意識を傾ける。久しぶりということもあって、私はすっかり線香花火に夢中で
「……イオ」
「ん?」
ルフィの視線が、花火から私に変わっていたことに気付かなかった。
「おれ、線香花火より、線香花火見てるイオの顔が好きだ」
それはあまりに唐突で突飛な発言だった。
驚いた私は線香花火からルフィへと顔を向ける。その所為で、大きく成長していた線香花火の玉は呆気なく砂浜へと落ちて光は消えてしまった。
目を丸め何も言えない私を見てか分からないけど、ルフィは「にしし」と白い歯を見せて笑っている。
「暗いなかでよ、花火がイオの顔を照らすんだ。お前ェいつもそんな顔しねェくせに、やさしい顔で花火見てるから」
「キレーだなって!」
始終笑顔で恥ずかしげもなく話すルフィに、私の顔はどんどんと赤くなっていく。暗くて、良かった。こんな林檎みたいな顔ルフィに見られたくないもの。
恥ずかしさに耐えきれず顔を逸らした私。ルフィは私の態度をさして気にする様子もなく、新しい線香花火を二本手にとった。
「よしイオ!おれと勝負だ!」
「え…勝負?」
「おう!負けた方が、勝った方にちゅーな!」
「ふーん、ちゅ……ちゅう!?」
普通に差しだされた線香花火を受け取り勝負に臨むところであった。思わず声を荒げる私に、ルフィは相変わらず笑っているだけ。
線香花火を持つ手とは逆の手で、私の言い分も聞かずライターを使って線香花火に火をつける。
「え、ちょ、私の先につけるとかずるい!」
「火ついた花火持ったままじゃイオのやつ火つけらんねェだろーバカだなーイオは」
頭の中を整理する暇も、心の準備をする暇もなく勝負は開始されてしまった。
ルフィに心をかき乱されてばかりの私は、案の定線香花火を持つ手にも動揺が現れているようで、勝負なんて目に見えていた。
──…まぁ…勝っても負けても、悪い話ではない、かな。
その話を持ち出したルフィも、私と同じことを考えてるって思っていいんだよね?
「しししっ!おれの勝ちだ!」
「あぁあ〜…」
でもやっぱり自分からキスは恥ずかしい。
20170726