※@の続き
※ただ沖田のリアクション書きたかっただけでろくなオチなし


「あれ?陽ちゃん風邪?」
「そっ、そーなんですよ〜!ゲホッゲホッ」


真選組に出勤していつものように掃除を始めていると、予想通り隊士からマスクしていることについて触れられた。陽は心の準備をしていてもドキッとしてしまい、頭の中でシミュレーションしていた通りの対応をする。嘘がつけない陽なりには頑張ったが、ぎこちなさは見え見えだ。しかし陽を可愛がる隊士たちは疑うこともなく心配してきて、仕事など休んでいい、自分が代わると言い出す。嘘をついたことに罪悪感もあるのに、仮病まで使い隊士たちを働かせることなど出来ないので必死に拒否したが。

ただ、その様子を見ていた沖田は彼女の嘘にすぐ気付いた。
少し離れた場所にいた沖田は彼女が隊士の取り巻きから解放された頃に無言で近づく。沖田の存在に気付いた陽は視線を向けて挨拶をするが、いつもとは違う様子に気付いて息を呑んだ。


「何でィそのマスク」
「か、風邪を引きました…!」
「へェ〜…馬鹿は風邪引かねェと思ったが」
「ば、馬鹿でも風邪引きますよっ!」
「へェ〜…」


視線が全く信用していないことを物語っており、陽はその視線に耐えられず顔を背ける。その態度が更に疑いに変わると何故気付けないのか。
沖田は彼女がこちらを見ていないうちに手を伸ばしてマスクを取り去る。ハッとしてマスクを取り返そうとしたが、沖田は反射的に自分の手を高く挙げて届かないようにした。


「――…!おめー、それ」


沖田は陽の頬にある腫れに気付く。珍しく目を丸くして驚く姿を目の前で見られて陽は少し貴重だと思ってしまった。しかしその驚きの表情はすぐに消えてしまい、目を細めてこちらを見下ろす表情に嫌な予感を覚える。


「誰にやられた。まさかあの万事屋の旦那に――」
「んなわけないでしょう!! 銀さんはこんな酷いことしませんよ!! 頭は殴るけど!!」
「へェ…おめーの本命でも無けりゃ、俺の奴隷に手ェ出す馬鹿はどこのどいつでィ?痛い目見て分からせてやらねーと」


片手で顔を鷲掴みされる。頬が寄って僅かに腫れている頬も痛むが、突き出している形になってしまった唇を動かして何とか答えた。


「や、もう痛い目には遭ってるっていうか……ほんと、もう解決したことなんで…」
「………」


ジッと品定めするような沖田の視線を恐る恐る見つめる。沖田は彼女の目を見て嘘はついていないと判断すると、その顔から手を離した。持っていたマスクを陽の頭に乗せると、背を向けて歩き出す。「ちゃんと冷やしとけよ」と声をかけてくれた背中を呆然と見つめていた陽は、


(な、何か私のために怒ってくれたみたいで嬉しいな……きっと人のものに手を出されて怒ったって感じなんだろうけど)


少しだけ笑みを浮かべていたのだった。



余話Bへ続く

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