※学パロ
別に期待などしていなかった。
自分のような、特別格好良くも頭が良くもずば抜けて運動神経が良いわけでもないような男を好きになる女などいない。
取り柄といえば射撃と工作ぐらいだ。
自分で云うのも何だが、あの天才的な射撃の腕前を見せれば、少しは惚れる女も出るのだろうか…。
「無理っしょ」
机を挟んで向かい合わせに座るイオから、何とも容赦のない返答が返ってきた。
彼女とは高校で知り合った女子だが、さばさばした性格だからかやけに気が合う。男友達の方が多いような奴だ。
お菓子を食べながら頬杖をつくイオを、項垂れた状態でジロリと睨む。
「お前…少しは慰めの言葉でも出てこねェのか…!」
「本当のこと云ったまでじゃん。射撃って云ったってゲームの話でしょ?」
「馬鹿野郎、屋台の射的でも百発百中だ!」
「屋台の射的で惚れるなんて聞いたことないし。それにウソップにはこの鼻がねぇ…」
「鼻が何だよ」
「…ねぇ…」
「何だよ云うんならハッキリ云えよ!!泣くぞ!!」
自分の鼻をつまむ手を払いのけて声を荒げるが、周りに生徒がいることに気付いてすぐに静かになる。
「ウソップはそういう行事気にしないタイプだと思ってた」
「…最初は気にしてなかったんだけどよ…サンジが沢山貰ってるの見て……」
「…あー、あの人黙ってれば格好良いもんね」
年上であるサンジの姿を思い浮かべながら呟くイオ。確かに美人を見るとアホ丸出しになるが、料理も出来るし紳士的だし、モテる要素は幾つもあるだろう。
イオは脳内にいるサンジを消して、ちらりとウソップを見やる。
落ち込む姿は何ともみっともない。普段もみっともない。子供だし逃げ腰だし授業中もろくに話も聞いていない。…誰が、そんな彼を好きになるのだろう。
「……じゃあほら、これあげるよ」
イオが静かに差し出したのは、シックなデザインの小さな紙袋だった。
ウソップはそれを見て何かすぐに分かった。今日は貰うはずがないだろうと諦めていた、チョコである。
「……イオはこういう行事気にしないタイプだと思ってた」
「うん、去年まで関係なかった」
まじまじと紙袋を見つめてからそれを受け取り、中を見る。美味しそうなブラウニーが入っていた。
紙袋からして手作りだろうと思ったが、予想以上に凝っていて少々驚いた。
「…はは、義理でも嬉しいぜ。ありがとうイオ」
「………………………………………義理じゃないよ」
ぽつりと、
下手をしたら聞き逃してしまうぐらいの小さな声が聞こえて
ウソップは丸い目を更に丸くさせて、顔をあげた。
正面にいるイオは、窓の外を見つめながらお菓子を黙々と食べている。
聞き間違い、だろうか?
反応のないイオを見ると、聞こえてきた台詞に自信がなくなる。周りにいる生徒の会話だろうと片付けた時
「あたしが義理なんかでわざわざお菓子作ると思うの?ラッキーだったねウソップ、あたしの唯一の手作りお菓子だよ」
「………」
唯一、ということは……他にあげた者はいないということ?
嘘なのではないかと固まったまま呆然としていたが、ほんのりと頬を染めたイオを見てホッとしていた。
すると、何故だろう。面白さがこみ上げていて、くつくつと笑っていた。
「何が『無理』だよ、惚れてる女いるじゃねェか」
「別にあんたの射撃を見て惚れたわけじゃないから」
「へー、じゃあおれのどこが好きなんだ?ん?」
「…ッ調子のんな馬鹿!!」
「いでェ!!」
どうして世の中の女性はウソップの良さに気付かないんだろう。