※天竜人夢主
※若干原作のストーリー無視



天竜人?何それ、おいしいんですか?
聞くだけで鼻で笑いたくなるのはあたしだけでしょうか。
偉いのは先祖だけで今の奴らなんて何もしてない…寧ろクソじゃない。奴隷とかいって人間を売り買いして酷い扱いして、嘲笑って。
自分は何もしてないくせに、何であんなに偉そうなんだか分からないよあたしには。

あたしの一番嫌いなものを教えてあげましょう。

「天竜人」です。



「イオ、行くぞえ〜」
「…はいはい」

「イオ!何度も云ってるアマスよ!空気が汚いんだからマスクを被るアマス!」
「…はいはい」



…だから、あたしは自分が大嫌いだし、家族だって嫌いだ。

窮屈な日々。家族に買われ奴隷になってしまった人の絶望に満ちた顔。…毎日見てると目を反らしたくなってきた。
街に行けばみんな震えながら頭を下げて道を開ける。誰も目を合わせてはくれない。
こっちから声をかけても、やっぱりみんなは怯えるばかりで。

…あたしは、みんなと同じように暮らしたいだけなのに。
…みんなみたいに思いっきり遊んで笑っていたいだけなのに。

ただ、あんなクソ女から生まれただけで。




毎日が嫌になっていたある日、珍しい男と出会った。

どうやら仲間とはぐれたらしく、腹が減ったといって騒いでいた麦わらを被った男。多分、同い年ぐらい。
あたしが来ても怯えもしないから…なんだか凄く新鮮な気分になって、あたしはその男の仲間を一緒に探すことにした。
多分…この島に来たばかりでかなりの非常識人で…あたし達が村人に恐れられてることも知らないだけなんだろうけど。でも、それでも嬉しかったから。普通に接してくれたのが。


「おれはルフィ!海賊だ!」
「そっか、あたしはイオ。よろしく」


何とも人懐っこい笑顔を向ける男…ルフィ。
なんだかその笑顔がやけに魅力的で、吸い込まれそうな不思議な感覚に陥った。初めての、感覚。

マスクは外した。周りの人々から妙な誤解を生むだけだし…マスクが嫌いだったから(だって邪魔だし。窮屈だし)


「お前いい奴だな!おれ困ってたんだ」
「うん、困ってたみたいだから声かけたしね」
「しししし!」


あぁ、また。輝くような笑顔で笑う。今までの生活にはなかったような、手の届かないようなものだ。
そうだ…こんなに近くにいるのに、この人は凄く遠い存在なんだろうな。
自由だし、毎日楽しそうだし…あたしとは全然違うんだ。


「イオ?」
「ん?」
「何か元気ねーぞ?お前も腹減ってんのか?」


食うか?と出されたのは、さっきあたしが買ってあげた食料。苦笑交じりに断っておいた。気持ちだけで十分嬉しい。


「元気無かった?」
「おう、そう見えたぞおれには」
「そっかー…じゃあそうなのかな」
「やっぱ腹減ってんじゃねーか!」
「いや、お腹は減ってない…」


元気ない=腹減ってるの式が出来てるらしいルフィ。なんというか…本当に変わった奴だ。でも、何故か気分が楽になれる。


「…ありがとう」
「ん?何か云ったか?」
「…何にも!」


どうやら聞こえていなかったらしいルフィにあたしは笑顔で返す。
眉を寄せ首を傾げるルフィにそれ以上何も云わず、あたしは先に歩き出した。


それから暫くしてルフィの仲間と出会うことが出来た。
楽しい時間はあっという間だったけど…毎日「楽しいこと」が無かったあたしにとっては、素晴らしい一時だった。
その時のあたしといえば、胸が幸福感や充実感で満たされていて笑顔にならずにはいられなかった。



だけど、事件は起きた。



少ししてからまた糞家族の買い物につきあい、人間や魚人やらが売買される人間オークション会場に来ていた。
そこで目の当たりにしたのは、商品となった人魚。糞兄に撃たれた魚人。そして殴られた糞兄。殴った張本人――ルフィ。

確かに糞兄の魚人に対する発言やら行動やらは人を怒らせるものだったのだろう。
…どうやら今のルフィは天竜人というものを知っているらしい。それでもうちの糞兄を殴ったんだ。そこが何というか…ルフィらしいと思った。
けれどこの時のあたしは糞兄や糞姉や糞親父やら…みんなと同じマスクをつけている状態で……同じ“天竜人”だというのを、明らかにしていた。

仲間に酷い扱いをする男と家族のあたしを、ルフィはどう思うのだろう。
すぐに 嫌われたと思った。


折角 折角出会えた、“光”なのに。



家族はすぐに伸された。あたしだけ呆然としていたが、逃げようとするルフィにハッとして慌てて追いかけた。
忌々しいマスクを捨てて。



「ルフィ!!」



追いかけられているルフィや仲間を必死で追いかけた。(正直体力に自信は無いからもう息が荒れている)
そしてルフィ達を追いかける海軍を止め、あたしは叫ぶ。


「あたしはイオ!天竜人の一人だぞ!!ここから離れなさい!!これは命令だ!!」


どうやら海軍は馬鹿ではないらしく、あたしを天竜人だと分かるなり、戸惑いがちに後退りをしていった。
睨みをきかせると、やっぱり戸惑いつつも海軍は退いた。…多分糞兄達が命令してまた追っかけてくるだろうけど、今追い払えるだけでも違うだろう。

……初めて、天竜人である“権力”を使ってしまった。


(…これじゃ…あたしも糞じゃん…)



泣きそうになりながらも、立ち止まってこちらを見ているルフィに視線を向ける。
周りの仲間達も戸惑っていた。何で天竜人が海軍を追い払ってくれたのかやっぱり不思議だろう。



「あの…ルフィ…ごめん、騙すつもりは、なかったの」
「……」
「普通に接してくれることが、嬉しくて…!天竜人っていえば、嫌われると、思ったから…っ」


でももう、バレた。
あんな…酷いことする奴と家族だなんて。血が繋がってるなんて。
幻滅しただろう。引いただろう。偏見するんだろう、な。されても仕方ない。


「ごめん、ね…うちの糞野郎達が、ルフィの仲間、傷つけちゃって……あたし自身でも、嫌気がさしてるんだ…もう…嫌、だよね。あたしと関わるの」


だんだんと溢れてくる涙。拭うことも忘れて、ルフィを見ることが出来なくなって、ただ服をぎゅっと掴んで謝るしか出来なかった。

どうせなら、もっとルフィと色んな話したかったなあ。今までに行った島とか、沢山の冒険話。
でも、もう話せないんだ。終わり、なんだ。



「!」



すると、自分の服を掴んでいたあたしの腕を、誰かが掴んだ。
正面を見れば、ニッと笑っているルフィ。目を見開く。


「嫌じゃねぇよ」
「…え…?」
「まぁ、イオがてんりゅーびとってのは吃驚したけどな!イオは二回も助けてくれたじゃねェか!」
「……」


はぐれた時も、今も、助けてくれた。

そう云って笑顔のままのルフィに、あたしはただ目を見開いたまま固まっていた。


「おれが嫌いなのはてんりゅーびとっていうより、アイツらだ。ていうかてんりゅーびとでもイオみたいな奴いるんだって分かっておれ嬉しいんだ!」
「ルフィ…」
「お前が何で元気無かったのか今やっと分かった。今の生活嫌ならよ、おれの船に来い!」


予想もしなかったルフィの言葉。
驚いたのはあたしだけじゃなくて、ルフィの後ろにいた仲間達も例外ではない。ルフィは背を向けているから気づいて無いけど、あたしの方からはよく見える。
「天竜人」が、「海賊」に…?
聞いたこともない。だって天竜人は世界政府を後ろに置いて生きているようなもので…そんな存在が世界政府の敵である海賊になるなんて。


「て、天竜人、なんだよ…?」
「だから何だよ。イオはイオだろ」


そう云ってルフィはあたしの腕を掴む手とは反対の手であたしの頬をぺちぺちと叩き、


「マスクもつけなくていい。ナミみたいな服着て普通の女になれば良い!」



「だから行こう!!」



楽しいぞーッ!

そう云って「にししし」と笑うルフィに、あたしの止まっていた涙はまた溢れだして、そのままルフィに思い切り抱きついた。
腕を掴んでいた手は掌に来ていて、優しく握られていた。私も握り返した。










逃避行しようか

(さよなら退屈ライフ!いざ大海原へ!)



何だこれ。書きながらも「なんだこれ」と何回か呟いた。
ただ…ルフィと天竜人の話面白そうだなーとちょっぴり思ったから書いてみた…んだ。何だこれ…orz意味不だ。
恋愛要素がほぼ無し。ていうか…ヒロインの片思いに近いなこれ。
続編というかこのヒロインでまた書きたいけど、この後皆離れ離れになる…あぁorz



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