クズ高での練習試合を勝利した後、ユニフォームのまま風にあたろうと体育館の外に出た。
持ってきたドリンクを口に含んだ時、ここにはいるはずのない…思わぬ姿を見つけて、目を丸めた。
ごくり、とドリンクを飲み込む。


「…お前、何でここにおるんじゃ」


そこにいたのは、幼馴染でありこちらに来るまでは毎日のように顔を見ていたはずの女。


「……別に、あたしがどこにいようと関係ないでしょ」
「お前何標準語使っちょるんじゃキモッ」
「ここで方言使ってるトビこそキモッ」


素直じゃなくてツンツンしててガサツで、女の子らしさなんてどこにもない彼女…紗枝。
広島にいた頃は家が近いこともあり、学校でもよく関わることがあった。それに自分の家庭内の事情も知っている。
だからこそ、なのだろうか。神奈川に行くと言ったって、彼女は涙の一つも見せなかった。…寧ろ笑っていた。


「家族旅行で横浜に来たからついでに様子見に来てあげたんじゃん」
「どーせワシ目当てで旅行先ここにしたんじゃろ」
「また喧嘩ばっかしてろくでもない生活送ってんじゃないかって思ったもんで」
「しとらんわアホ」


最初は荒れていたが、バスケ部に入ってからは落ち着いたものだ。
喧嘩はしなくなったし、真面目にバイトだってするようになったのだ。


「へーじゃあ女遊びもやめたの?」
「あーーー…」
「うわ否定しないし」


最初喧嘩をしてないと聞いて感心した表情になった紗枝だが、次の質問に曖昧な返事をする様を見て顔を顰める。

──こんな、色気も無いような会話が当たり前
そんな当たり前なことを、懐かしく思うようになっていた。



「トビ君!片付けサボらないで手伝ってよ!……って、あれ?」


そこに、トビに文句を云いながら駆け寄ってきた空が。
どうやら練習試合のために出したベンチなどの片付けをするように云いに来たみたいだが、見覚えのない女子を見て首を傾げた。
トビと紗枝を交互に見た後、ハッとしてトビを見る。


「まさかトビ君また違う女の子と…!!」
「コイツは違うわアホ!」
(「また」って云ったこの子…)


やはり女遊びしているのかとジト目で見る紗枝に気付きながらも、トビはそんな紗枝を指差して幼馴染だと説明する。
空はあっさりと納得すると、紗枝へと向き直って自己紹介をした。


「僕トビ君の友達で同じバスケ部の車谷空です!」
「うん、さっきの練習試合見てたから知ってる。バスケ上手いんだね」
「いやあそれ程でも…」


自分以外にはやけに素直で簡単に褒めたりする紗枝。それに素直に喜びだらしない顔をしている空。
二人を見てトビはつまらなそうな顔をすると、空の首根っこを掴んで紗枝から離す。


「お世辞にいちいち反応するなチビ」
「なにをう!」
「コイツは意地の悪い女なんじゃ」
「残念、意地が悪いのはアンタにだけです。褒めたのは本心だからね車谷君」


紗枝の言葉に空が勝ち誇ったような笑みを浮かべたので、妙に腹が立ち体育館へと追い返した。
小学生のようにぶーぶーと文句をたらしながら片付けへと戻った空を見ていると、後ろから声。


「良い友達出来てよかったね」
「どこが良い友達じゃ」


顔を顰めながら振り返ったが、予想外にも紗枝が寂しそうな顔をしていて思わず目を丸めてしまった。


「試合もさ、なんか上手く補いあってるっていうのかな…良いチームだよね。個性あるけど良い人そうだし」
「…変な奴ばっかじゃぞ」
「でも、楽しそうだったよトビ」

「生き生きしてて、何か小さい時のトビみたいだった」


ボールを手に入れて純粋にバスケを楽しんでた、あの頃。

紗枝はその頃からずっと側にいたから、トビの変化に気付いているのだろう。
ただのやんちゃだった頃も、荒れて喧嘩ばかりだった頃も、そして今も
紗枝は変化しはじめた頃にすぐ気付いていたっけ。


「…トビ、こっち来て正解だったのかもね。広島にいるより、こっちで──」


腹が立ちそうなことを云いそうだったので、言葉を紡ぐその口を自分の口で塞いでやった。
突然のことに、勿論驚く紗枝。それもそうだろう、沢山の女に手を出してきた中で自分には何もしてこなかった。
紗枝は自分は可愛くないからだろうと割り切っていたけど、実際はそうではない。

周りの女と同じように、彼女を扱いたくなかったのだ。


「そんなこと云うなアホ。バスケやる仲間がおっても、お前がいなきゃつまらんわ」


「まぁ…お前はワシがいなくても平気なんじゃろうけど」


止まらなくて、そのまま紗枝を抱き締めていた。
思ったより華奢ですっぽりと腕の中に収まった彼女に、更に想いが溢れそうだった。


「……」


最初、ジッとされるがままでいた紗枝。
しかし突如トビの胸を押し返して離れた。無理矢理抱き締めていることなんて出来たはずなのに、拒絶されたショックからか何も出来なかった。
離れた後、紗枝は俯きがちに口元を押さえていて


「…ッ何でそーいうことすんの…!?何とも思ってないくせに、女がみんなアンタにキスされて喜ぶと思わないでよ!」
「……別にお前に喜んでもらう為にキスなんかせんわ」
「何それ…!!」
「ワシがしたいからしたんじゃ」


トビの言葉に怒りを露わにしていた紗枝の動きが止まる。
目を丸めてトビを見つめる。トビは怖気づくはずもなく、真っ直ぐと紗枝を見つめ返しながら続けた。


「好きな女が側におらんのに、こっち来て正解だって思うわけないじゃろうが」

「お前、何年も一緒にいたのにワシのこと分かっちょらんの」


告白するつもりなど微塵もなかったのに。
勢いに任せて暴露してしまった。いつも自信に満ち溢れているくせに、こういう時に限って自信などない。
胸の中は不安ばかりだ。このまま気まずくなって前みたいに話すこともなくなってしまうのだろうか、なんてしおらしいことを考えて。

暫く必死に頭を働かせているのか、呆然と立ち尽くしていた紗枝。
しかしやがて…丸めた目からボロボロと涙を流し始めて、流石にギョッとした。
普段気が強く、自分の前では泣いたりしない。だからこそ…そんなに、キスが嫌だったのだろうかと悲しくなる。


「アンタも分かっとらん馬鹿トビ!!」


最初、持っていた鞄で殴られた後、紗枝は涙を流したまま抱きついてきた。

──勿論甘えられたことなんて、初めてで 驚いた。



「…いなくなっても何とも思わないような奴、わざわざ新幹線乗ってまで会いに来ると思う…?」


消え入りそうなその声に、トビは更に目を丸めて
自分の胸板に顔を埋めている紗枝を見下ろして、広島を発つ日の時のことを思い出しながら恐る恐る訪ねた。


「…あの時、お前平然と…」
「……泣いてもトビは居てくれるわけじゃない。最後ぐらい笑って見送ってやろうって思ったあたしの想いを勘違いしたんはそっちじゃ」
「…分かるかアホ」


ふっと笑みが零れて、抱きつく紗枝をそっと離す。
焦げ茶色のさらさらとした髪に指を通した後、頬に手を添えて唇を落とした。








強がりの君

(方言出とるで。神奈川で方言使っとるキモッ)(アンタに云われとうないわメロンパン!)


…甘って何だっけ…orz
まぁ、この二人なりにいちゃついてると思います←
多分トビの幼馴染は気が強くて、トビと云い合いばっかしてそうだなと思んです。
うーん、短編って難しいですね…。また長くなっちゃったし…。
原作のトビはあんなに格好良いのに、全くトビの良さを出せてないような気がしてなりません。うぅ(泣)
方言難しいね!でも広島弁って良いよね!
さて、こんな出来になりましたが…真人さん、文句受け付けます…よ…!
リクエストありがとうございましたあ!^^


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