「そう、転校するんだ」
「せや」
「短かったね」
「…せやな」


数ヶ月前にうちに転入してきた人懐っこい笑顔を見せる金髪関西弁は、今となってはクラスの人気者とでも云える程連れも出来てその中心で騒いでる奴だった。
やっぱ関西人って人懐っこいものなのかな、とか教室の端っこの席でボーっと窓の外を見ながら思っていた。
バスケが凄く上手いらしく、今まで無名だったうちが結構勝ち残っていってたとか。
そんな人によってはヒーローとでも云えるような関西人…二ノ宮は、また転校が決まってこの学校を去ることになった。

私と二ノ宮はたいした会話をしたことがない。
特別、仲良くもない。本当にただのクラスメートという関係。

それなのに、二ノ宮は私にいち早く転校することを教えてくれた。


「バスケ部はさぞがっかりするだろうね」
「……ん」
「まぁ、次の学校でも頑張りなよ。持ち前の明るさで」


本当はその人懐っこさも皮を被ったものだって知ってる。それでもコイツは、これからのためにもそうやってヘラヘラと笑顔を向けるんだろうな。
大変だな、転校ばっかする人も。
きっと親友みたいなものも出来ず、ただ沢山の人に囲まれた生活っていうのを送っていくんだ。勿体無い、な。


「……なぁ、」
「ん?」
「寂しいとか思ってくれへんの?」


冗談交じりに笑顔でそう聞かれた。
けれど私は相変わらずの無表情で答える。


「そういうのはもっと仲良い人に訊きな。数ヶ月クラスにいた人がどっか行こうと私には関係ないし」
「……ほんまに、掴めん人やなぁ、自分」
「何が」
「絶対、突き放すんやもん。俺が話し掛けてもあっさり」


頭を掻いて苦笑する二ノ宮に私は何も云わなかった。
何でコイツは、目立ちもしない孤立してる私なんかに、話すんだろうね。笑顔向けてくれるみんなにだけ同じように笑顔返してればいいのに。
アンタはそうだ。どれだけ私が冷たく、素っ気無く返しても絶対絡んでくる。最初は随分鬱陶しく感じたな。(私煩いの嫌いだし)


「アンタさぁ、虚しくなんない?」
「?」
「その場しのぎの友達作ってさ。どうせ転校したらその人とも関わりなくなっちゃうんでしょ?」
「……」
「私、その一人になりたくなかったしね」


また転校すると知ってるのにわざわざ仲良くなろうとなんて、思うわけないじゃん。
だから最初、アンタに「ニノって呼んでいい」って云われた後に「やだ」って断ったんだ。誰もがそう呼ぼうと私だけは二ノ宮をあだ名で呼ばなかった。


「……俺な、」


二ノ宮は困ったように笑いながら続けた。


「最初の頃から気になってたんや、自分のこと」
「……」
「女子にしては誰とも連まなくて珍しい雰囲気出してて、クールで」


最初はそれだけやったはずなんやけどなぁ、と云った後に呟いた。





「――惚れとったんや」






そっぽを向いていた私の後ろにいつの間にか二ノ宮が回って、私を抱き締めていた。
特別、それについて反応は示さなかった。ただ大人しく抱き締められてやっていた。


「一生会えんでも、関わりなくても、俺は忘れへんよ、自分と過ごした日」


普段の私なら手をつねるなり腹に肘突き入れるなりして引き剥がすのに、私はそれが出来なかった。




「――っ」




自分の涙隠すので精一杯だったんだ。







本当はさ、

(私も好きだったんだよ、ニノ)(時に見せる本当の笑顔が、たまらなく好きだったんだよ、馬鹿野郎)

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