※男主友情
「――……」
驚いた。
いや、何となく予想はしていた。していたんだけど、それでも「まさかな、」みたいな考えの方が俺には強くて。
たった一人で体育館に来てみればボールの弾む音。体育館の入口のドアが開いていたから中を覗いてみれば、クラスメイトで大親友の(なんか自分で云うの恥ずかしいな)空がいた。
綺麗にボールがリングを通っていくのを見て、今でも凄いと思う。あいつの3Pは最強だよ。
何度も、何度も、ボールをとって色んな方向からシュートを放つ。
「……おっす」
少し邪魔かと思って気が引けたけど、思い切って声をかけてみた。(今更遠慮とかする仲でもないし)
朝っぱらから汗をだらだらと流している空は俺に気付いてパッと笑顔になった。
「あ、来てたんだ!おはよう」
「…お前何してんの?」
「何って…見ての通り。練習だけど?」
まるで「何でそんなことを訊くんだろう」とでも云わんばかりに首を傾げる空。(あぁ、コイツはそういう奴だったな)
昨日あれだけのことがあったのに何でコイツはあっけらかんとしてられるんだ。機転が早い奴だ。
「…お疲れさん。やってらんね」
「え!折角なんだから一緒にやろうよ」
「勘弁しろよ…俺お前みたいに練習馬鹿じゃねーもん」
体育館を出ようとしたのを引き止められ苦い顔をすると、空は頬を膨らます。
まぁ、こんなのはいつもの光景。
いつも通り、朝一に体育館で練習に来てる空に、電車の都合で時間があるために暇潰しで体育館に来た俺が顔を合わせ、
空が一緒に練習をしようと誘って、俺が渋る。
普通すぎて、今日は少し違和感を覚える。
「つーか……何?もう元気ハツラツな感じ?」
呆れながら空を見ると、空は一瞬何のことだかと目を丸めたが、すぐに真剣な顔になって頷いた。
手に持っているボールへ視線を落とす。
「うん。いつまでもぐじぐじしてらんないなって」
「……」
前向きな、奴だ。
昨日の練習試合、また負けたのに。
クズ高に来て、この男子バスケ部で、勝ったことは一度もないな。
相手が悪いのか。それとも俺らの実力不足なのか。両方かもしれない。
いい流れになることはあっても、試合が終わる頃には負けている。
このチームで勝てたこと、ないんだ。
お前、昨日、めちゃくちゃ泣いてたじゃねーかよ。
「……勝てっと思う?」
「え?」
ポケットに手を突っ込んで俺も自然と視線を下に向けた。色々な色のテープが這う体育館の床をボーっと見ながら続ける。
空の顔は、見れなかった。
「俺ら…勝てんのかな。寧ろインターハイなんて、遠すぎる」
「……」
「どうしたら勝てんのか、分かんなくなっちまった」
インターハイ目指してる空には悪いけど、それどころか俺には沢山の学校に勝っていける気もしない。
バスケしてる奴なら誰でも目指すだろうインターハイ。それだけ壁がでかいのに、俺らは目の前の敵さえ倒せやしねぇんだ。
どんな顔、してんだろう。
一番にインターハイ目指してるだろうからこそ、空の顔が見れなかった。
母ちゃんから貰ったと云っていた使い古された空のバッシュを見ていると、不意に手中にあったボールをドリブルさせて空はゴールへ向かった。
ステップを踏んで、小さいくせに手伸ばしてリングへボールを届かす。
3Pほど綺麗にはいかないけれど、ボールはリングを通り抜け、床に落ち弾んだ。
「僕にも、よく分かんないけどさ」
転がるボールをもう一度引き寄せて数回ドリブルした後、手にとり俺に視線を向けた。
真っ直ぐとした、迷いのない澄んだ瞳。
「前を見てるしか、ないんじゃないかな」
「そうでもしないと、始まらないような気がするから。僕には」
――…あぁ、コイツはそういう奴だった。
根拠もないこと云ってただ直向きに練習して上を目指して
転んでも転んでもボロボロになりながら立ち上がって希望を失わない。
(……本当、馬鹿な奴)
まぁ、そんな馬鹿だから 俺は一緒にバスケやろうと思ったんだけど
How to Win
(…しょうがねぇなーやるか練習)(えっ!本当!?)
今度は、一緒に勝とうな