『日曜試合あるから見に来てほしいべや!』
そんなことを云われて仕方なくあたしは教えられた試合会場に出向いた。
丁度開いていた席に腰掛けてコートを見れば、いつも教室で馬鹿やってる「馬鹿」がシュート練習をしていた。
時間を見ればあと数分で試合開始。あ、呼人先生がみんなを集めて色々指示を出してる。
先輩達の中でただ一人あたしと同い年の馬鹿はいつもとは違う…真剣な顔で話を聞いていた。
あれ、あれって…不破、だよね?
何だか変な気分。
不破がバスケやってて、結構凄いってことは知ってた。知ってたけど、いつもふざけてあたしに抱きついたりしてくる鬱陶しいアイツが、まさかこんなに真剣な顔をするなんて全く思わなかったから。
バスケに興味がないあたしは不破がバスケをしてるところを見たことがなかったんだ。
「珍しいね、応援?」
「!」
不意に声をかけられて驚きながら横を見れば、頬杖をついてコートを見下ろす上木君がいた。(び、吃驚した)
ドキドキする胸を掴みながらあたしは「無理矢理ね!不破がさ!ウザイから!」と答えた。ちょっと声上ずったな。はずい。
(というか何故上木君観客席に?あ、人数が多いからかな)
「…やっぱり豹が誘ったんだ」
「無理矢理、ね!」
「君に良い所、見せる気なんだろうね」
「え」
「豹、バスケぐらいしか出来ないし」と続けた上木君に妙に納得できた。(運動神経は良いけど、あいつ普通に成績でも馬鹿だし)
「格好良い所見せて、振り向かせる気なんでしょ」
「……え」
平然とクールに云い放った上木君に、あたしは一瞬頭の中が真っ白になった。
不破が、あたしを振り向かせる?いやいや…駄目だよもう遅いよ。あいつ鬱陶しい・ウザイ・馬鹿以外の何者でもないもの。最初は驚いたけど今でも抱きつかれるの慣れちゃってさ。(慣れって怖いよね)
今更バスケ真剣にやってるところなんか見せられても――
「始まるよ」
上木君の声でハッとしてコートを見る。選手達がコートの中心に集まり並んで、礼をした。
そしたらすぐに試合開始。
けれどその選手の中に、不破はいなかった。
(……駄目じゃん)
振り向かせるどころか不破のプレーも見れないよ。
ベンチにいるだけで本当は補欠じゃないの?
とりあえず先輩達(名前知らないけど)の凄いプレーをボーっと見てた。うん、やっぱりというかうちが勝ってる。
そしてそのまま時間が過ぎ、上木君の云う「第三くぉーたー」になった中間で、奴が動いた。
呼人先生に呼ばれ、シャツを脱いで軽く準備運動をする。
ブザーが鳴って一度タイムが止まった時、一人の先輩と入れ替えに不破がコートに入った。
自信満々なその表情。怖気づくなんてこと、不破はしないんだろうな。(胆が据わってんだかただ馬鹿なのか…)
時々する(癖なのかな)舌で唇を舐める仕草をした後、不破はボールを見据えた。
「――――」
ディフェンスは全然駄目。先輩達の方がずっと上手いんだけど、オフェンスになったら印象がバッと変わった。
見たことのないような様々なテクニックで巧みに相手選手を抜く不破。
まるで獣のようなその猫目は、ゴールしか見てなかった。
ゴール下にまできて、ボールを両手に持ち高くジャンプする。
他の選手に比べれば不破の身長は平均的。
それなのに、あいつは、見事にダンクを決めてみせたんだ。(生で、初めて見た)
自分勝手に突っ込んだからか先輩に殴られたりしてるけど、不破の入れた得点は確かなものだ。
バスケしてないあたしでも分かる。あいつ、あんなに凄かったんだ。あんなに、獣みたいな目つきをするんだ、
「……惚れた?」
上木君に冗談交じりで訊かれたけど、あたしは何も返せず不破に見入ることしか出来なかった。
野心湛えたその瞳
(あ!見に来てくれたんか!どだった?俺のプレー!かっこよかったべ!)(……っ知らない!!)
有り得ない嘘だ何でドキドキしてんだよあたし