「……」



何となく校舎裏に来てみれば、バスケットゴールにシュートを打つ男子を見つけた。
髪がメロンパンみたいだ。何だあれ、凄いな。アメリカ人にあんな人いないかな。

ドリブルした後に打ったボールは綺麗に弧を描いてリングを通り抜ける。
バスケって詳しくないけどこういう単純なものならすぐ分かる。とりあえずあの人上手い。

しかもなんか綺麗なプレー。見てて面白い。ずっと見てたいな、って思える。
思ったから、見てることにした。



「……何じゃ、お前」



暫くしてから男子に声をかけられた。
気付かれてたことが予想外で(あれ、じゃあ今まで放置プレイされてたのかあたし)目を丸くさせ思わず返事をするのを忘れるあたし。
男子は少し垂れた目であたしを見下ろす。


「あの、えと、バスケしてるなーって」
「何じゃそら」
「君のプレー、見てて面白いから、」
「……」


「凄いね」



あたしが笑ってそう云うと、男子は少し驚いたのか目を開いた。
けどすぐに顔を背けて、再びバスケを始める。
「見るな」とは云われてないし、見てていいよね。うん、見てよう。



「ねぇ、名前なんて云うの?」
「…トビじゃ」
「とび?君はお父さんお母さんに鳥の名前を授けられたの?」
「字は同じじゃけど意味が違うわ」
「んんん?」


ていうか、変な名前。云いたいけど云ったら怒るだろうからやめておこう。


「それに、授けられたんは“トビ”じゃない」
「はい?すいません馬鹿なあたしに分かるように教えてください」
「夏目健二じゃ」
「………」


……ん?つまりトビってあだ名?


「…えっと、じゃあ夏目く」
「トビゆーたじゃろ」
「え、あ、ありがとうございます」


初対面なのにあだ名で呼んでもいいなんて、見かけによらずなんてフレンドリーな人なんだ。
思わずお礼を云ったあたしにトビ…君は、「変な奴じゃ…」とか呟きながらドリブルしてゴールに向き直った。
またシュートを打つ。そして決まった。


「ねぇそのボールってさ、」
「?」


地面に転がるボールを指差し、あたしは続けた。


「随分使い込んでるんだね。ボロボロ」
「…外で使ってるのもあるわ」
「あ、そっか。でも否定しないから使い込んでんだね!」


笑顔で云うと返事は来なかった。いこーる図星。
第一印象不良だったけど、トビ君て良い人そうだなー。友達になってくれないかなー。


「だからそんなにバスケが上手いんだね」


地面にしゃがんで頬杖をつきながらトビ君の背中を見つめる。




「そのボールは、努力の結晶みたいな感じか!」




ボロボロになったボールは、トビ君の今までの努力を物語ってるんだよね。
そう笑顔で云ったら、トビ君は驚いて目を開きあたしを見た。
何でそこまで驚くのかあたしには分からなくて思わず首を傾げると、暫くの沈黙の後にトビ君は小さく吹きだした。



「ほんとに、変な奴じゃ」




背を向けたトビ君だけど、何だか声が少し、さっきより優しくなっていたような気がした。









努力の軌跡の傷

(ねぇトビ君、君は明日もここにいるのかな?)(知らん)(えー!じゃメルアド交換してください)(……)
君の軌跡を、もっと見ていたいって思った



.
X i c a