「…………」
「…………」
「…………」
「………あの」
「うん?」
ジーッと、何も云わずにただただ修復作業を続けているモキチを見ていたら、声をかけられた。
先日ある事故で火事に遭ってしまった男子バスケ部の部室。そんな部室でたった一人で作業を続けていたモキチに。
最初私が部室に入ってきた時、一度視線を向けたけど、何も云わずすぐに作業に戻ったくせに。まぁ、今更気にしたりはしないんだけど。
「ずっと見てるんなら 手伝ってくれても いいかと」
「何?手伝ってほしかったの?」
「…、」
ニヤリと笑って云ってみる。
モキチはそれに何も云わずに、また作業を再開しちゃった。あ、愛想つかされたなこれは。
それでも私は気にせずに、またモキチを見てる。
手伝いはしない。モキチが本気で頼んでくるか本当に困ってたらやってやろうかな、とは思ってるけど。
男バスには関係性皆無の私が手伝うのもどうかな、と思うし。
「…モキチさぁ、」
「?」
「バスケ、やってんの?」
頬杖をついてふと訊いてみると、作業をしているモキチの手が一瞬止まった。
だけどすぐに動き出して、こっちを見ることなく答える。
「それは バスケ部に訊くものじゃ ないと思う」
「練習はついていけてんの?」
「………、特別に、メニューを」
やっぱり。
小さく吹きだして笑ってやった。
モキチ体力無いもんね。
「――――…」
それでも、頑張ってるんだ。
中学でバスケ部だったくせに、高校で科学部とか入るからどうするのかと思った。
けど(何でかは知らないけど)バスケ部に入って、そして今練習にも参加してる。
あのモキチが、一人でもこうして部室直そうとしてるんだ。バスケに、マジになってる証拠。
(これがモキチなのかな。“らしい”のか“らしくない”のか、よく分かんないや)
どれくらい経ったんだろう。
ずっと黙々と作業を続けるモキチの背中を見ながら、私は一人中学の頃を思い出していた。
「モキチ、次の試合っていつ?」
「…廃部になったから、それはいつになるか…」
「なーんだ。じゃあいっそ練習試合でも良いからさ、今度予定教えてね」
「?」
歩み寄って、私の言葉に振り向いたモキチにグッと顔を近づける。
少し屈んで座っているモキチと視線を合わせて、すぐに頬にキスをしてやった。
驚いて少し目を開くモキチに、私は目の前でニッと笑う。
「応援しに行ってやろう。久々にモキチのバスケ、見たくなった」
云うと、私はさっさと部室を出て行った。
静寂の中、部室での出来事
((――やるだけやって、帰られた)) ((本当に、卑怯な人))
僕のバスケを見たら、君は振り向いてくれるだろうか