ごめん。 本当ごめんね。
空はいつも、部活の練習になってしまったと云って土下座する勢いでデートを断る。
空のことだから、嘘ではないとすぐに分かる。この子単純っていうかお馬鹿さんだから。嘘吐いたらすぐバレる。
あたしはバスケしてる空に惚れて、バスケに興味を持ったあたしに空が嬉しそうに話し掛けバスケを教えてくれて
バスケのおかげであたしは空と付き合えたから、バスケに文句は云えなくて(実際あたしもバスケ好きだから)
人が良すぎる空は、いつもあたしと遊ぶのを断る時申し訳無さそうにする。
凄く悲しそうな顔をする。そして後ろ髪を引っ張られるような想いで、練習に出てるんだと思う。
あぁ、あたし、空の足引っ張っちゃってるんだ。
暫くしてから、あたしはやっとその事実に気付いた。
空はバスケが好きだから、あたしなんかよりずっと好きだから、でもあたしを傷つけてしまって申し訳なくなってるから
とても、困ってたんだろうな。バスケとあたしの間にいて。
だったら、あたしがいなくなればいい。
空の足は引っ張りたくなかったの。
空からバスケを…笑顔を奪いたくなかったの。
だからあたしは空と別れた。一方、的に。
空は納得がいかないと云って、だけどあたしは曲がらなかった。
空はあたしを忘れるべきだ。
だからメールも、返さないで 電話も、無視した。
酷い女、だな。あたし。
でも空にはバスケだけに集中してほしいから。
“今度の日曜日、フェスだけど僕達参加するんで観に来てください”
着信拒否まで出来なかったあたしの元に届いた、一通のメール。
何故か敬語になっていた。まぁそこは良いとして。
バスケが好き。
空が 好き。
クラスも違うから。部活も違うから。
空を見なくなったあたしは、この気持ちを抑えることが出来なかったんだ。
「あの小さいの試合出るのか?」
「それは無いだろ…小学生じゃねぇよな?あれ」
結局フェスを観に市民体育館に来たあたしは、沢山の人がいる中を一人歩いて突き進む。
そして二階からコートをそっと覗いてみた。
今は試合前の練習中。それぞれのゴールでシューティング練習をしていた。
相手のチームは確か「ゴリラズ」ってところ。やけに大きな人がいる。
手前のコートで、3Pシュートを打っている空が視界に入る。
あぁ、空だ。前と全然変わらない、空だ。
相変わらずシュートがよく入るな、とかちょっとは身長伸びたのかな、とか色々考える。
つい最近まで彼女だったのに、何だか随分遠くにいる存在のように思えた。
「!」
油断した。
空と、目が合ってしまった。
空はあたしを見るなり凄く嬉しそうな顔をした後、ボールを持ったままあたしの近くにまで来て向き直った。
咳払いをして、少し照れた様子で口を開く。
見下ろすあたしと、見上げる空。なんか、どこかで見たことあるシチュエーションだな、とか暢気に思う自分がいた(あ、ロミオとジュリエットか)
「僕、バスケとどっちが好きかなんて訊かれたら選べないよ」
――…分かっていたんだ。あたしが思っていたこと。
訊きたくても訊けなかった。
“あたしとバスケ、どっちが好き”かなんて。
「けど、君がいなくなったら、ポッカリと穴が開いたみたいになった。正直バスケより君と別れないようにすることに一杯一杯になってた」
「バスケにも、身が入らなくて。頭の中君でいっぱいになった」
――…何それ。結局あたしは、空の足を引っ張ったことに、なるの?
戸惑うあたしのことなんて知りもせず、空は視線を下に落とす。
「…君が、バスケに興味持ってくれて凄く嬉しかった」
僕は、ずっと前から君を好きだったから
空の言葉に目を見開いた。
嘘だ。だって、関わりもなかったのに。ろくに会うことさえ(廊下でたまにすれ違うぐらいしか)
空は、顔を上げて真っ直ぐとあたしを見た。
「デートもろくに出来ないし!バスケばっかたし!馬鹿だし!僕の方が身長ないけど!」
「けど、好きなんです!!」
「―――…だから、離したく、なくて……」
周りにもあたし達を知らない人達がいっぱいいるというのに告白をしてきた空は、林檎みたいに顔を真っ赤にして消え入るような声で付け足した。
ざわつく人々。隣にいる人があたしと空を交互に見ている。
みんなの視線をいっぱいに感じながら、恥ずかしさでいっぱいになった。けど、告白をした空の方が恥ずかしいんだよね。
茶木さんと鍋島さんに茶化されている空を見ながら、あたしは頬を緩めた。
本当、わざわざこんなところで云わなくても良いのに。
馬鹿だなぁ、空は。 でも、
でも、そういうところ全部包めて好きになったんだよ。
無茶苦茶で、だけど真っ直ぐな空が さ。
がむしゃらに、まっすぐに
(空!)(?)(この試合勝ったら、また付き合おっか)(…うん!約束だよ!?)
どうか クズ高が勝てますように