※学パロ


あぁ、私の馬鹿。
何で今日は天気が良いからって安易に屋上に来ようなんて考えたんだろう。
何で屋上でお昼食べようと思ったんだろう。

そうだ…すっかり忘れてた…
屋上は不良の集り場って噂あったんだった…


噂だけならまだ良い。
けど今目の前では…実際に不良がいるんです。集っていないけど。


「……」



不良さんは私に気づいたのかフェンスに器用に腰掛けながら(凄いなあ、危ないのに)振り向いて私を見た。
普段なら絶対に交わることのない視線に、思わず肩がびくついてしまう。

嫌でも知ってる。だって凄い有名だもの(悪い意味で)
腕っ節が凄くって町一番強いんじゃないかって言われる程の人で、学校でも誰かとつるんでるところを見たことがない一匹狼の…ヒトカゲ君。
いやぁ…クラスメイトだもん。授業はサボってるけど嫌でも知ってます。ていうかクラスメイトじゃなくても知ってます。

その時、初めて目が合って瞳が深緑色だったんだって知った。…怖くて、見ようともしなかったから(あぁ、何でこんな暢気なこと考えてんだ?私)
頬には切り傷があって…やっぱ喧嘩の痕なんだろうと思った。


ヒトカゲ君は、ふいっと顔を逸らしまた前を見てしまった。
……え、どうしたら良いんだろう…に、逃げて良いのかな…!


「んだよ、帰りてぇんならとっとと帰りゃ良いじゃねぇか」


…顔が帰りたいって云ってたのかな…。ヒトカゲ君は背を向けたまま私に声をかけた。
…声も、初めて聞いた。
見た目通りというか…低い声。同い年でも中々いないぐらい。


「あ…じゃあ、あの、失礼 します」


お許しを貰ったので帰ろうと踵を返す。…けど、何故か足は一歩前へ出ようとはしなかった。
…私の中で引っかかることがあったのだ。

私はそっと振り返ってヒトカゲ君を見る。
ヒトカゲ君は最初見た時と同じように、フェンスに座ったままただ屋上から見える町を眺めていた。



「…あの、傷、大丈夫ですか?」



…返事は、無かった。

暫くの沈黙の後、ヒトカゲ君は頭を掻きながら私に声をかけた。


「…お前…俺のこと知らねぇのか」
「知ってますよ…ヒトカゲ君、ですよね。同じクラスだし分からないわけありません!」


まぁ貴方の場合は別の意味で分からないわけないんですけどね!

すると、ヒトカゲ君は振り向いて私を見る。
そして少し眉を寄せ何かを考えているようだった。…私には分かる。「クラスにいたっけ?」みたいな顔だ。
そうですよね、あなた教室にほとんどいませんでしたもんね。私のことなんて覚えてるわけないですよね。
別に慣れてますよ…どうせ影薄いですよーだ。


「…じゃあ尚更…何で俺に話しかけてんだよ」
「……、は…話しかけちゃ…まずかったですか…?」


話しかけるのも禁止だったのかな。そうか…鬱陶しいのかもしれない。
だったら怒られるかもしれない。何だかまた恐怖心に襲われて頬が引きつるけど、ヒトカゲ君は少し困ったように返事を躊躇い「…いや、そうじゃなくて」と呟く。

…ん?違う、の?

ヒトカゲ君はフェンスから器用に飛び降り、着地した場所で立ち上がりポケットに手を突っ込んだ状態で私を見る。
目が合うだけで、凄く緊張。


「…俺が怖くねぇのか」
「え…」


……いや…正直怖いんですけど…ここは怖いって云っていいのかな?何か…失礼な気がする。
でも怖くないって云っても…生意気?喧嘩強いんじゃないかって誤解されないかな…。
いや!でも私みたいな平凡な見た目で喧嘩強いなんて考えるわけないか!あはは!


「こ!こっこここ怖くないです!」
「怖いんだな」


しくじったどもってしまったよ!
自分の嘘の下手さに泣きたくなった。あっさりバレました。

どうしようかと思っていると、ヒトカゲ君は歩み寄ってきて私の前で立ち止まる。

……あれ、ヒトカゲ君前にして今初めて気付いた。…ヒトカゲ君…私より身長…低いんだ…。
こんなに小さな体で……ずっと、喧嘩してたんだ…。ずっと、独りで――…


「……何だよその顔」
「え…?」


私顔に出てた…?ど、どんな顔で?アホな顔してたのかな…。
眉を寄せるヒトカゲ君にどうしようかとあたふたする私。そしたら舌打ちされて体が固まってしまった。
い、苛々させてる…!?ですよね…!



ぐるるるるる



「………」
「………」


…お腹の虫の音。
緊張してる私のお腹からそんな音が出るわけない。私の腹の虫もそこまで空気読めないはずはないと思う。
…となると、この場に二人しかいないんだから自然と誰かは分かる。

視線を逸らすヒトカゲ君の頬が少し赤く染まってて、
そんな表情を見たことがなかった私は、


「……っぷ」


思わず笑ってしまった。


「…何笑ってんだてめぇ」
「ごっごめんなさい!」


一層声を低くされて咄嗟に謝ったけど…ヒトカゲ君も恥ずかしいだろうな。今の場面で、この静かな場所で…お腹鳴ったら。
あぁ、何だろう…何か、また笑いがこみ上げてきた。


「……」
「っ…、」
「笑いすぎだ!!腹が減って何が悪ぃ!!」


…何だろう、今一番に怒鳴られたのに、全然怖くない。
だってこれも恥ずかしいからなんだもん。そう思うと…あぁ、ヒトカゲ君も結構、私達となんら変わらない子供なんだって、ふっと思った。

私きっと、表面しか見てなくて、ヒトカゲ君のこと全く分かってなかったんだ。



「…悪くないです!よかったら、私のお弁当一緒に食べませんか?」








不良と平凡少女1-1

(ヒトカゲ君のこと、ちょっと知りたいって思った)


自分より小さい奴が喧嘩強くて不良でツンデレだったら萌えるのは私だけですか(…)
続きます。



.
X i c a