隣にいるのはおれの筈なのに、
お前は、いつもいつも、アイツしか見ていねェ。






「はぁ」
「どうした?」
「ルフィって鈍感だよね」
「今更だろ」


釣りをしながら、いつも通りイオの相談を聞いてやっている。
相談の内容はいつも決まって、ルフィのこと。子供で馬鹿で、良い奴って分かってるけど正直云って恋愛対象にはならねぇだろ、っていう…そんなルフィを、イオは好きになった。
おれが云うのも何だけど、物好きだ。
しかも、一目惚れだとか云うから、世の中何が起きるか分かんねェな、と思う。


女の扱いに慣れてるサンジにでも訊けば良いものを、相談事をおれに持ってくるから、やっぱりイオは変だ。
恋愛相談なんておれが答えられるわけがねェのに。
ただ、相槌をうって、次も頑張れとか云って、きっと振り向いてくれるとか、ありきたりなこと云ってるだけなのに、決まっておれのところへ来る。


「ルフィにとっては、あたしって仲間でしかないんだろうなぁ」
「もういっそ大胆なことしてみろよ。そうでもしねェと気づくわけねェよアイツ」
「えー…」


困った様子で膝を抱えるイオを見ることなく、おれは海面を見つめる。
目なんて、合わせられるわけねェだろうが。


「……ウソップって優しいよね」
「今更だな」
「うわー」


にやりと笑って云ってみると、イオはケラケラと笑った。

…ルフィはガキすぎると、おれでも思う。
けどこいつも…結構子供だなあ、とも思う。中々こんな純粋に笑う奴、いねェよ。これで同い年かよ。
こうやって笑って、馬鹿みたいに明るくて、おれはイオの、そういうとこ――…




「…ウソップのこと、好きになってれば良かったのかなぁ」




「――…」


突然、イオの云いだした言葉に、思考回路が停止した。
「なんてね」なんて云いながら、少しだけ眉を下げてへらりと笑うイオ。だけどおれは、そんな彼女を見やる気にも、なれなかった。


「…ふざけんな」
「え?」
「ンな気無ェくせに、変なこと云ってんじゃねェよ!!」


怒鳴って、釣竿もそのままにおれは歩き出す。
イオは呆然としたまま、きっと固まってるだろう。おれに怒られたこととか無かったし。




その日を境に、イオを避けだした。
普段仲が良かったおれらのその様子に、気づかないわけもなくて。ナミやサンジにどうしたのかと聞かれたけど、答えられるわけなくて。
「何でもねェ」と返して、おれはやっぱりイオを避け続けた。

そりゃあ、我ながらちょっと大人げなかったかなとか(同い年なんだけど、いつもの位置的に)やり過ぎかなとか、色々思った。
おれが怒った理由なんて分かっちゃいねぇんだろうな。なら、アイツは不安にも思ってるだろう。



あの日、喧嘩をした場所でやっぱり釣りをしていたおれ。
今日は一人。静かにただ釣り糸に反応が無いかと見つめ、ボーっとしているだけ。


 …おれが謝るべきなのか?

 そりゃあおれの勝手な気持ちで、怒ったわけだけど。

 でも、よ……




「………」


色々と考えているうちに、隣の気配に気づき横目で見る。
そこには、静かに海面を見つめ膝を抱えているイオがいた。少し驚いてから、慌てておれも海面に視線を戻した。

何だこれ、どうしたら良いんだ。
気まずくないわけないのに、こうやって側に来れるイオは凄いとか頭の片隅で思う。
これはやっぱ、謝るべきか。今がチャンスなのか?やっぱ何だかんだで、悪いのおれだよな。


よし、



「ごめんなさい」
「わり……、あ?」


口を開いた時には、既に謝られていた。
目を丸めてイオを見ると、いつもの笑顔はそこに無くて…泣きそうだ。


「変なこと云って、ごめんなさい…。嫌いにならないでください…」


声が震えていて、必死に泣くのこらえているっていうのが分かった。
呆然とするおれに見られたまま、イオは膝を抱える腕に力をこめて顔を埋める。


「……」


……何というか、格好悪すぎる、おれ。

好きな女に勝手に怒鳴って、謝らせて、泣かせて
おれなんかが好きでいる資格なんか、無ェよな。


ていうか、好きだから、応援すべきなんだよな きっと。




「……おれこそ悪かったな。お前は何も悪くないんだから、泣くなって」
「嫌いになってない…?」
「なるわけねェだろ」


頭を撫でれば不安げにこちらを見てきたので、安心させるようにいつもみたいにニッと笑ってみせた。
その顔を見たからか、だんだんとイオに笑顔が戻ってきて、溢れてきていた涙を拭ってからとびきりの笑顔を見せてくれた。



「ウソップ大好き!」









損な役回り

(くそ、こういうとこズルイんだよな)


つ…続きますきっと…これじゃ何か何も無いままだ…(汗)


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