※学パロ
ドキドキドキドキ
イオは高鳴る胸を抑えることが出来ないまま、昇降口へと向かって歩いていた。
鞄を掴む手はほんのりと汗をかく程、緊張や楽しみでいっぱいだった。
(あ、いた…!)
昇降口に到着すれば、赤い髪の同じ学校の男子生徒が、ポケットに手を突っ込んで立っていた。
壁に寄りかかりながらボーっとしていた男子生徒…ヒトカゲ。
校内一の不良で、町内一と云われる程喧嘩が強いヒトカゲ。そのうえ無愛想なので周りからは怖がられるばかり。
少し前まではずっと独りで行動していて、誰も人を寄せ付けない態度でいたヒトカゲだったが、恥ずかしながらも今では自分の彼氏である。
友達のカスミに報告すればかなり驚かれてしまったし、身を案じてきたが、イオはヒトカゲが本当は優しいのだと、知っているわけで。少し分かりにくい優しさを見せるそんな彼が、好きなわけで。
初めての恋人。そして今日は、
『あ、期間限定のケーキ今日までだったんだ…!』
『あ?』
『ここのカフェのスイーツ美味しいんだーでも一人でカフェ入る勇気、まだ無いんだよね…今日までかあ、どうしよう………あ、ヒトカゲ君も…た、食べてみる?なーんて』
『………、行ってやってもいい』
『え』
(初デートってことで…良いんだよね…!?)
二人でカフェに行くだけではあるが、そうとしか思えない。
声もかけずに「横顔格好良いな」などと思いながらヒトカゲのことを見つめていたイオ。
なのでヒトカゲがこちらを見てきた時には驚いた。
視線が合うなり、ヒトカゲは目を細めて歩み寄ってくる。
「テメェ来てたんなら声かけやがれ」
「ごっ、ごめんなさい!つい見とれてまして!」
慌てて答えたイオの言葉に、ヒトカゲは面喰う。
そして目を逸らし、赤く染めた頬を隠すように背を向けて呟いた。
「やっぱテメェ変だ」
「え!」
(俺みたいな奴に見とれるとか、まず俺のこと好きになること自体──…)
おかしいのだ。
背後にいるイオへ「行くぞ」と声をかけ歩きだす。後ろで駆け寄る音が聞こえたので、付いて来ているだろう。
「……」
イオは、ヒトカゲの後ろを付いて行きながら、ふと彼の背中から手へ視線をおろす。
自分とは違いごつごつとし、そして喧嘩をしてきたからマメが出来ている、身長は自分より小さいのにしっかりとしている手。
(手繋いだりは…ないか)
照れ屋の彼が、そんなことしてくれるなんて期待はしていなかったけど。
しかしやはり寂しいものはある。デートしてくれるだけでも奇跡なのだが、それらしいことをしたいというのが女子の憧れというものだ。
斜め前を歩くヒトカゲのあとを付いて歩くイオ。いつものように手は鞄を持つだけということに何だか寂しさを感じていると、ふとヒトカゲが足を止めたので、つられて止まった。
ヒトカゲを見てから、正面で行く先を塞ぐように立っている数人の男達に気づく。
制服からして他校の生徒のよう。手には、バットや木の棒など、物騒なものばかりを持っている。
「……」
「ケッ、孤高の一匹狼とまで云われたテメェが、女連れとはがっかりだぜ」
下品な笑みを浮かべた男達は、睨みあげるヒトカゲを嘲笑うように低い声で云う。
身長差で云えば圧倒的に相手が有利だ。元々ヒトカゲは小柄なうえ、相手は柔道でもやっているのではないかというほど体格の良い大柄な男。第三者から見れば優劣ははっきりしていた。
「可愛くもねえ女連れて、趣味悪ィな」
その言葉に、ヒトカゲが僅かに反応を示す。
ヒトカゲの一歩後ろにいたイオでは直接確認出来なかったが、恐怖で怯む相手の表情・ヒトカゲから漂うオーラで、どれだけ彼が恐ろしい表情をしているのか分かった。
ポケットから出された手が、グッと拳を作っていたことにハッとして、イオはヒトカゲの腕にしがみ付く。
「駄目!」
「ひっこんでろ」
「お願いやめて!」
「すぐ終わらせる」
「ヒトカゲ君!!」
付き合うようになってから喧嘩をすることもなくなっていたヒトカゲ。
イオにとってはそれが嬉しくて。だからこんな町中で、またヒトカゲが誰かを傷つけるのも…何よりヒトカゲが傷つくのが嫌だった。
イオの自分を呼ぶ声に、男をずっと睨んでいたヒトカゲがこちらを見る。
ヒトカゲにやめてもらおうと、イオは必死の想いで深緑の瞳を見つめた。
「お願い…」
「……」
「こんな人に…ひ、ヒトカゲ君が振るう拳なんてないよ」
イオのその言葉に、険しい顔をしていたヒトカゲが、場に合わず小さく吹き出す。
何故笑われたのか分からなくてぽかんとするイオに、ヒトカゲはくつくつと笑いながら云う。
「喧嘩させたくねぇくせにお前が挑発すんな」
「……へ」
ヒトカゲの言葉に、イオはゆっくりと相手の男を見やる。
米神に筋を作り、怒りを露わにした男がそこにいた。そして、イオもそうさせたのは自分の所為だと気付き顔を真っ青にする。
男への恐怖に顔を引きつらせ立ちすくむイオの腕を掴み、ヒトカゲが元来た道を走り出す。
「行くぞ」
「えっ!?」
「あ!?テメェこら!!逃げんのかよ腰抜け!!」
男の挑発する台詞に耳も貸さず、ヒトカゲは道を駆け抜ける。
引っ張られるように何とか走っているイオは、何故今走っているのかさえ理解出来ずにいた。
暫く走っていたが、やがてヒトカゲが足を止めてイオも止まる。冷静なヒトカゲに対し、イオは息を切らしていた。
「……おい」
「な…なに…?」
低く声をかけてきたヒトカゲに、イオは息を整えながら視線を向ける。
振り向いたヒトカゲは、呆れた表情でイオを見ていた。
「テメェのこと侮辱したんだぞ、腹立たねえのかよ」
「いや…だって、可愛くないのは、本当だし……それに、ヒトカゲ君が怪我するのは、もう嫌だし…」
「……ナメんな、んな簡単に怪我なんざしねえ」
そう云ってそっぽを向いてしまったヒトカゲだが、イオには分かる。彼が怒っているわけではないことを。
纏う空気も男と対面した時と違って穏やかで、先程のピリピリとしたものが嘘のようだ。
イオは、自分の言葉を聞いて逃亡を選んでくれたことも、自分のことで男に対し怒ってくれたことも嬉しかった。
思わず笑みを浮かべていると、目の前にすっと手を差し出される。
「…?」
「…腹減ってんだよ、早く行くぞ」
そっぽを向いたまま差し出されたままの手。
マメだらけで、ごつごつした男らしいしっかりとした手。
イオは戸惑い気味にヒトカゲを見つめていたが、緊張しながらも恐る恐るその手に自分の手を重ねた。
そっと、彼の性格からは想像出来ないぐらいに優しく握られて、ドキッとする半面嬉しくてたまらない。
緩む頬を抑えることも出来ないまま、歩きだしたヒトカゲに合わせて小走りで隣へと並ぶ。自分より少しだけ低い彼を見下ろせば、髪に負けないぐらい顔を真っ赤にしていた。
「…ヒトカゲ君、顔真っ赤」
「るっせえバーカ!」
周りは怖いと恐れるけれど
自分に付き合ってくれる優しいところも、こうして可愛く照れてるところも
そんな姿を見れば他の男の人と何ら変わりはなくて、
「……ねーよ」
「え?」
「可愛くないこと…ねーよ」
「──…」
「…ありがとっ」
だけど周りの男の人が視界に入らないぐらいに、彼が好きだ。
君を好きな理由!
(ヒトカゲ君、あーん)(──ッ!!!)
またまた長く…学パロは長くなる傾向があるらしい←
初々しい感じを目指したはずなんですが…あんまり出せなかった。手をつなぐのと、「あーん」が個人的にデートっぽいかなとw
「不良と平凡少女」の後の話って感じで書かせてもらいました。ど、どうでしょうか…。
タイトル酷いなあと、短編書く度に思います/(^o^)\
何か凄いタイトルつけてる人を見る度に憧れます。文才も欲しい。画才も欲しい。
苦情受け付けます…。気に入ってもらえると良いのですが!(ドキドキ)
ゆうさん、リクエストありがとうございました!^^