※学パロ
正直云って
顔が整っていて、愛想も良いし面倒見も良い僕はモテた。
成績も優秀だしスポーツだってそつなくこなすから先生からも一目置かれてるし、見事に優等生扱いだ。
別に猫かぶってるつもりはない。人へと向ける笑顔はだいたい心の底から笑っているものだし。
だけど最近気付いたことがある。
僕は、Sらしい…。
「キア〜…」
放課後。クラスメイトは帰ったり部活に行ってしまって教室には僕一人となっていた。
日直だった為に残って日誌を書いていたら、静かな教室に困った様子のイオが入ってきて。
手には筆記用具とノートと教科書。泣きそうな、そして少し遠慮しがちな感じでこちらを見ている。
何となく想像はついたけど、僕は「何?」と訪ねる。
「あのね…明日英語あたりそうだから訳教えてほしいんです…」
「……」
入学式で出会って、去年は同じクラスだったイオ。クラスの中心にいた僕とは違い、平凡で静かであまり人前で喋るようなタイプじゃない…まぁ、ちょっと暗めの子だ。
ただ、心を開いてくれると本当に懐いてくれて、頼りにもしてくれるし笑顔だって見せてくれるし。何となく受け入れられた数少ない人って感じが、妙に心地よかったから仲良くしてきた。
頭も特別良いわけじゃなく(まぁ悪いって程でもないんだけど)、英語は特に苦手分野で…しょっちゅう僕に訊いてくる。クラスが違う今は去年よりその数が減ってしまったけど。
“いいよ”
いつもの僕ならにこやかに笑ってイオを優しく前の席にでも促したところだろう。
だけど今日の僕は、わりと珍しく機嫌が悪かった。
『イオ!次クラスでレクやるってさ!』
『うそ!?珍しいね、そういうの!アオイ先生めんどくさがりだから』
『今回HRやることないんだって。体育館空いてたから使えるってさ!アオイ先生もたまには良いことしてくれるよなーっ』
『やったね、何やろっか!』
イオが…おそらく、最も受け入れているだろう人がいる。幼馴染のサトシだ。
去年も、今年も、…ていうか小さい頃からサトシはイオと一緒。共に過ごした年数が違くて、僕じゃ敵いやしない。
サトシと楽しそうに笑って話しているイオを見て、(分かっていたことなのに)僕だけが特別なんじゃないんだよなあと痛く実感した。
苛々が募る。
馬鹿じゃないし、何故かは分かる。これが嫉妬というやつだ。
モテるけど、女の子を好きになったことはなかった。恋愛とか、本気になれることはないと思っていた。
なのに…ああ、不思議なことがあるもんだね。こんなにどこまでも普通な子に惹かれてるなんてさ。…どうかしてるよ。
嫌いじゃないのに、友達であるサトシを恨めしく思う自分とか
僕だけに笑いかけないイオにとか
イライライライラ
「……いい加減ちょっとは学習しなよ。毎回こうやって訊きに来るつもり?」
溜息を吐いて頬杖をつきながら再び日誌を書きだした僕。視界の端で俯いて小さく謝るイオが見えた。
いつもと違いそっけなく「座れば?」と云えば、おずおずとイオが来て前の席を借りて座る。
「そうだね、今日はヒントだけにしようか」
「え」
「教えるだけじゃイオは覚えないでしょ」
「う、うん…」
いつもと違う僕に戸惑い気味のイオは、恐る恐るといった感じで訪ねてくる。
「…怒って、る?」
「何を?」
顔をあげ日誌からイオを見て笑顔を向けるけど、イオの表情は変わらない。
僕は気にせずにそのまま笑顔である提案をしてみた。
「そうだ、終わったらご褒美あげるよ」
「ご褒美?」
「そう」
「いや、教えてもらう立場なのにご褒美なんてそんな…」
「気にしなくて良いよ」
僕は遠慮するイオににっこりと笑い、すっとイオへ手を伸ばす。
短い漆黒の髪に触れると、びくりと体が震えた。何だか、そういった反応を見るのが…何だろう、楽しいというか。
「僕が、勝手にあげるだけだから」
目を細めて笑った僕は、少し怪しい笑顔になっていたかもしれない。
そんな僕を見たことがなかったイオは固まっていたけど、最後頬を撫ぜてから手を離すと一瞬にしてリンゴみたいに顔を赤くした。
こういう経験、無いんだろうな。まぁ僕にとっては好都合だけど。
サトシだって見たことないだろう、表情。
そう考えると優越感が生まれて、僕もまだまだ子供だなと思った。
「…早くやらないと帰るよ?それともおしおきしてほしい?」
「いえ!やらせてもらいます!!」
「じゃあ早くページ開いて」
笑顔で訊くとハッとしたのかイオが背筋を伸ばして敬礼なんてしてきた。
…いつも優しくしていたから分からなかったな。
ちょっと怯えさせるだけで色んなイオが見れるのか。
答えを教えない分いつもより時間がかかり、すっかり外は暗くなってきていた。
部活をやってる人もいるから、まだ校内にいても問題はないんだけど。
イオがやっと訳を終えた頃、ようやくかなり時間が経っていることに気付いたらしい。
外を見て顔を真っ青にした後、僕へと勢いよく振り向いて謝ってきた。
「ごごごごめんキア、こんな遅くまで付き合ってもらっちゃって…!キア忙しいのに」
「大丈夫、今日はこの日誌だけだったから」
よく先生に仕事を任されるから忙しいけど、今日は日直があったからか先生も頼んで来なかった。
イオが英語だらけの教科書と睨めっこして四苦八苦してる姿を見てすっかり気を良くした僕は、いつも通りの笑顔で接していた。
分からな過ぎて泣きそうな顔とか凄く可愛かったけど、苛めるのは程々にしておこう。…うん、でもまたやろう、楽しいから。
「日誌出しに行くから、イオは帰り支度して昇降口で待ってて。もう暗いし送ってあげるよ」
「あ、ありがとう(よかった、いつもの優しいキアだ…)」
日誌とバッグを手に教室を出ようとした時、僕はあることを思い出す。
そういえばご褒美あげるって云ったのは僕だよね。言い出しっぺがあげないわけにはいかない。イオはすっかり忘れてるみたいだけど。
立ち止まった僕に首を傾げたイオ。踵を返してイオの前にまで戻るなり、僕は呆然と見上げてくるイオの頬に触れてキスをする。
惜しいところだけどゆっくりと唇を離せば、目の前には真っ赤になっているイオが。…ああもう、いちいち可愛いよなあ。
「…今日はよく出来ました」
距離数センチというところで微笑み浮かべてそう囁き、最後に頬に触れていた手で離れ際に髪を梳いてから教室を出て行った。
顔真っ赤にして固まってたけど、一人で昇降口まで来れるかな。
何かに目覚める
(翌日とてつもない後悔と罪悪感に苛まれた僕)(でも、意識しまくってるイオを見て、たまには良いのかもしれないと思った)
な、長くなってしまった。文章まとめる能力なくてすいません…。
そして腹黒さとSさがイマイチ出せませんでした。彼が腹黒くなるのはヒトカゲと敵にのみだったので思いきりに欠けてしまいました。
ヒロインはからかわれた…のかな。ある意味そうかもしれませんけど、どっちかといえば色っぽい感じ…ですかね。攻めるキアで!
苦情受け付けます…!もしかしたら書きなおしているかもしれません←
記念すべき一人目のリクエストでした!ありがとうございました!^^