「リザードンはここで待ってて」
「は?何で」
「いいから!」
首を傾げるパートナーであるリザードンを置いて、私は町にあるお店の中に入った。
ボールの中からだと外が見えるみたいだから、外で待っていてもらうしかないんだよね。ちょっと見られたくない買い物だから。
『寒がり?炎タイプのくせに!?』
『炎タイプみんながみんな体温かくて暑がりだとか思うな!』
『えー…うそー…意外…』
炎タイプとしては珍しく寒がりな我がパートナー。
雪なんて冷たいだけのものだ、とかいうぐらいだし、寒いとボールの外に出ようとしない。私だけ一人寒い中外歩いてるのに、なんて想いやりのないパートナーだ。
そのくせ私良い子!
もうすぐリザードンと出会って1年経つから、その記念にマフラーをプレゼントしてやろうと思ったのだ。
手編みなんてもの、不器用な私には出来ないから市販のものなんだけどさ。…うぅ、ベタなことも出来ないのか私は…。
でも手編みじゃ時間かかるし隠し通せる自信ないから…うん、良いんだよ…うん。やっぱサプライズで当日に渡したいじゃない。
リザードンには赤色が似合うなあと思い、何種類もある中から赤いマフラーを手にとった。うん、デザインも悪くない。
気に入ってくれると良いな、とちょっと不安にも思いながら会計を済ませ、店の外に出た。
「リザードンお待たせー……ん?」
外に出てすぐにリザードンを見つけたは良いものの、私は思ってもみなかった光景に一瞬固まってしまった。
だって、人型のままでいたリザードンの足元には、何故かイーブイがいたからだ。
笑顔でリザードンの足にすり寄るその姿は、なんと愛らしいことか。
「どーしたのリザードン!」
「あぁイオ…それがこいつ、」
「可愛いねー!」
しゃがんでイーブイの頭を撫でると、イーブイは可愛い笑顔をこちらに向けてくる。やばい可愛すぎる。
可愛らしい姿にほこほこした気分でいた私だけど、この子はどうしたのかとリザードンを見上げた。
「?」
そしたら、何故かリザードンはつまらなそうな顔をしていて。
「リザードン?」
「…何でもねえ」
ぷいっと顔を背けてしまった。…何で機嫌悪いのさ…?
訳が分からないまま、私は首を傾げた後にイーブイを見下ろした。…可愛いじゃんか。
それから数日、町に滞在していた私たちのもと…ていうかほぼリザードンのもとへ、イーブイはよく訪れるようになった。
可愛いから大歓迎って感じだったんだけど、リザードンは全然乗り気じゃなくて。…うーん、リザードン、そこまで面倒見悪いってわけじゃないんだけどな。あんな態度示すのも珍しいな。
ちょっと無愛想だけど、別に子供が嫌いとか、そういうわけじゃない。懐かれて悪い気はしないはずなのに。
リザードンの態度を不思議に思いながら過ごしていたある日──私とリザードンが出会って1年になる日──のこと、私は衝撃の真実を知ることになった。
呆れ気味のリザードンに抱きついて嬉しそうにしている女の子……人型のイーブイ。
──…間抜けなことに、勝手な私の思いこみなんだけど…何故か、小さい男の子とかだと、思ってたんだ。
でも実際は、見た目は私より少し小さいぐらいの、思春期まっしぐらな女の子で。
…あれ?
なに…?リザードンってもしかして、逆ナンされてたの?そりゃ、顔は良いけどさ…。
慕われて云い寄られて、だからそう乗り気じゃない顔してたの…?あぁ、そう思えば納得いく、かも…。
「………」
逆ナンされてたんなら…きっぱり、断れば良いじゃん……なに?案外満更じゃない?可愛いもんねイーブイ…。
………何このもやもやした気分。
何か、何か分かんないけどムカつく…。誰に?…リザードンに?
前に買ったマフラーが入った紙袋を手にしたままその場で立ち尽くす私に、ようやく気付いたリザードンと目が合う。
いてもたってもいられず、私はその場から逃げるように駆けだす。別にどこに行くってわけでもなかったけど、何だか今はリザードンの顔を見れなかった。
「おいイオ!?」
後ろでリザードンの声が聞こえたけど、振り向けるわけない。
イーブイ、人型になっても可愛かったな…。
顔の良い二人が並んだら、お似合いなのかな…私可愛くないしなあ、性格も素直じゃなくて顔も普通で……
そのうえ人間、か。
「はぁ」
リザードンとイーブイがいた場所からある程度離れた場所で私はやっと足を止め、思わず溜息を零した。
パートナーとして大切に想ってた…はず、なのに。じゃあ何さこのもやもやした想いは。
何で、辛いの。胸が痛いの。
(なんか、泣きたい気分)
よく分かんないけど無性に泣きたくなった。悲しみなのか悔しさなのか、はたまた憎しみなのか…もう何で泣きたいのかさえ分からなかった。
(ああ、私ってリザードンのこと──…)
「イオ」
今聞こえるはずもない声に、目を丸めて振り向く。そこには微かに息を切らしたリザードンが立っていて。…え、走って追ってきた…の?
驚いたまま固まっている私に歩み寄り、腕を組んで呆れた表情で見下ろしてくる。
「…何だよさっきの」
「……何が」
「何で逃げたんだよ」
「……に…逃げてないし…」
リザードンを見ていられなくて顔を逸らす。
その場には私とリザードンだけで、勝手に私だけ気まずい想いをしていた。…ていうかイーブイはどうしたのよ。
「アイツなら帰した」
「…え?」
「イーブイだろ」
…ちょ、私今何も云ってないんですけど。
「顔に出てんだよ」
そう云ってふっと笑ったリザードンに、不覚にもドキッとした。
最近何故だか機嫌が悪かったリザードンはいつもより笑わなかった。だから笑顔を見れるのはちょっと久しぶり、で。
だからって別に、珍しいものってわけでもないのに…。
まずい、私、意識してる。
こんなこと考えてるのまでバレたくない。咄嗟に顔を逸らす私。
「……何でイーブイ帰したの」
「お前の様子が変だった。それなのにイーブイに引っ付いてられてちゃ困るからだ」
「……どうせ満更でもないくせに」
「あ?」
「よかったねーあんな可愛い子に好かれちゃってさ」
見事に可愛くない女になっている私。自分でも嫌な感じって分かってるけど…でも、止められないんだもん。
リザードンにも、イーブイにも、苛々しちゃってる私。そんな自分が一番嫌だ。何も出来ないくせに…。イーブイみたいに真正面からアタックも出来ないくせに。
「………お前、もしかして」
「…なに」
「妬いてんの?」
「──ッ!!」
リザードンの言葉に、一気に顔が熱くなるのが分かった。図星だったから恥ずかしくて、私は背を向け俯く。
だけど肩を掴んできたリザードンにすぐ振り向かされ、目が合ってしまった。咄嗟に逸らして、赤くなっているだろう顔を隠そうと、思わず持っていた紙袋を顔の前に持ってくる。
「…何これ」
「あっ」
そしたらリザードンに気付かれてしまい、奪われた。
返してもらおうと手を伸ばしたけど、私より身長の高いリザードンが手を高く上げてしまい届きはしなかった。
リザードンは勝手に紙袋から中身を取り出す。ちょ…それあんた宛てのものじゃなかったらどうしてくれたんだ…!
「…マフラー?」
「………」
見られたからには、仕方ない。
何かイーブイのこともあって渡しにくくなっちゃってたけど、元々リザードンの為に選んで買ったやつだし…
「…丁度一年前の今日、私とリザードンが出会ったでしょ。一年間まぁ、色々お世話になったし?…一緒に頑張ってきたし…これからも、頑張っていきたいし……だから、その…うん」
「……俺に?」
「うん…」
「もしかして手編み?」
「なわけないでしょ」
「だよな、お前そんな器用じゃないし」
「……」
くっそ、自覚してるけどこうもハッキリ云われると腹立つ。
「イオ」
「…?」
「俺、お前は何とも思わないんだと思ってた」
マフラーを見つめながらそう云いだすリザードンだけど、私は何の話をしてるんだか分からなくて首を傾げる。
「俺が女と仲良くしようが、イオには関係無いんだって」
「………」
いや、最初は私が勝手にイーブイのことを男の子と思い込んでいただけというか…
でもそんな正直に云ったって「馬鹿だろ」って云われて呆れられるのがオチだから黙ってる。
自分でも馬鹿だとは分かってるので目を逸らしていると、何故か首に温かいものが巻きついてきて
それが何か分かった私は驚いて正面を見る。思ったより間近にあったリザードンの顔に、驚いて固まってしまうんだけど。
私の首とリザードンの首に巻かれた、赤いマフラー。一人用のそれじゃ長さは足りなくて自然と近くなる私たちの距離。
「あったけえ」
嬉しそうに歯を見せて笑うリザードンの笑顔が、何か…何だろう、きゅんってきた。
目の前でそんな顔見せて、おでこ合わせられたら、顔真っ赤になるのは当たり前だよね?
恥ずかしくてリザードンも見れずに視線を彷徨わせている私に、リザードンは笑みを深める。
熱くてたまらない頬にリザードンの大きくて冷たい手が触れて、唇を重ねられた。
「ずっと俺はお前しか見てねえから」
可愛い奴
(イーブイより、目の前で顔真っ赤に染めてるお前のが可愛いっつの)
………何で…短くなんないんだろう…
「ヒロインの買い物中にリザードンが逆ナンされ嫉妬」というリクで、普通に女がリザードン引っかけてるのも考えたのですが…何か、そのまますぎかなとか思って…ちょっと違う方向に。だから長いんでしょうね/(^o^)\
そして切なく…ない、ね…うーん。
頑張って甘さは目指してみたのですが…如何でしょうか?
最初から作られたキャラ(キアとか)じゃなく、ポケモンで指定された短編だったので最初ちょっと書くのに戸惑いました。
私の勝手なイメージでリザードンの性格やらせてもらったのですが…イメージが違ってたらごめんなさい(汗)
リザードンは♀なら姉御、♂ならツンデレか俺様かなとか思ってます。…まぁこのリザードン俺様でもツンデレでもないけど←
歌音さん、リクエストありがとうございました!^^