※「changes」夢主
世間はクリスマスムードに突入していてカップルはイチャイチャし、友達は遊ぶ計画をたてて楽しんでいた。
そんな中、いつもと変わらない一日を送る女子高生…八代紗枝。
遅めの起床をした後、軽くご飯を食べて部屋に戻り、ゲーム三昧。
すっかり、今日はもうクリスマス・イヴだというのに。
「紗枝、ちょっとお遣い頼んで良い?」
「……」
せっかくゲームは良いところなのに。
母親にメモとお金を渡され、紗枝は渋々ゲームをやめて店へと向かった。
白い息を吐き出しながら手を擦り合わせる。暑いのも苦手だが寒いのも苦手。秋ぐらいの涼しい季節が一番良い。
こんなに寒いから、尚更外に出る気が無くなるのだ。
紗枝は溜息を吐きながら、カップルがイチャついている横を通り過ぎてゆく。
恋愛に全く縁の無い紗枝なので、クリスマスという行事はたいしたイベントではなかった。
友達なんていなかったので遊ぶこともなく、ただ食卓にケーキが出てくるだけ。
だから、今日は特別な日でもなんでもない。
…なかった。
「…あれ」
お目当ての店に行く途中、雑貨屋にふと視線がいき…足を止める。
店の中に見知った人物がいたからだ。
(田島君…)
いつも元気いっぱいで、部員の一人である田島がそこにいた。
田島は誰か(商品棚の影にいて見えない)と楽しそうに話していて、きっと友達とクリスマス・イヴを楽しんでいるのだろう、と考えがついた。なんせ彼は自分と違い友達が多いから。
きっと幾つものパーティに誘われたことだろう。
ぼうっと、田島の笑顔を眺めていた紗枝。道端に立ち止まり店内を見ているなんて、ただでさえ見た目に問題があるのに怪しいことこの上ない。
「――!」
突如、紗枝の目が開かれる。
田島と一緒にいるのがすっかり友達だと思っていたのに…隣にいたのは、女子だったから。
楽しそうに二人で話をしていて、その姿はまるで――…
「……、」
田島は野球が上手くて運動神経もよくて、馬鹿だけど明るくて人懐っこくて
野球部が注目を浴びるようになってから、すっかり彼はモテるようになった。
彼女がいたって、おかしくない。
紗枝はよく分からない、もやもやとした気持ちを抱えながら、歩き出す。
自分は母に頼まれた買い物をしなくてはならない。ずっと田島を見ていたら流石に相手に気づかれてしまうし。
すたすたと歩きながら、紗枝は先程の田島と女子を思い出す。
(……彼女、いたんだ)
「八代ー!」
「!?」
地面を見ながら歩いていると背後から声。それはずっと頭の中を占めていた人物の声で、今雑貨屋にいるはずの声で
驚いて振り向けば、こちらに駆け寄ってきた田島がいた。
「…!?な、なんで…」
「?八代が見えたから追いかけてきたけど」
「え…だ、だって…彼女さんは…」
「彼女?」
困惑している紗枝の言葉に田島は首を傾げた後、平然と云う。
「オレ彼女いねーよ?」
「………」
…どうやら紗枝の勘違いらしい。
「あれ?さっき見てたの?あいつはクラスメイトで、たまたま会っただけ!」
「そ…そうですか…」
「何だよ、オレのこと気づいてたんなら声かけてくれてもいーじゃん!」
つまらなそうに頬を膨らます田島を前に、何だか拍子抜けしてしまう紗枝。
勝手に勘違いして、馬鹿らしくなってしまい逆に恥ずかしさが込み上げてきた。
「そーいやさ、八代」
「?」
「八代は明日のプレゼントもう用意した?オレ何買おうか迷っててさー」
「……え?」
後頭部に腕を回し困った表情を浮かべる田島に、また田島が何を云っているのか分からずに聞き返してしまう紗枝。
明日?明日はクリスマスだが、自分は何も予定が無いしプレゼントなんて貰いもしないしあげる相手もいない。
きょとんとする紗枝の様子に気づき、田島がまた不思議そうに訊ねる。
「八代忘れたのか?明日野球部でクリスマスパーティするじゃん。プレゼント交換するのに用意してきてって、オレメール送っただろ?」
「………」
「…初耳です」
「え!?」
暫くの沈黙の後に発せられた紗枝の言葉に、田島は道端だというのに大きな声を出す。
そして慌てた様子で、
「うそだっ!オレ送った!」
「と、届いてませんよ…」
「うそだあっ!」
「嘘だと云われましても…」
田島はポケットから携帯を取り出すと、メールの送信履歴を確認しだす。
相当メールをすることが多いのか、紗枝を誘ったと本人が云うメールに辿り着くまで時間がかかった。
携帯と睨めっこする田島を、紗枝はボーっと見ている。
「………」
「…ありましたか…?」
といっても、紗枝はメールなんてそうしないので、貰ったメールなら忘れることはない。
田島の携帯でどうあれ、こちらにはお誘いのメールなど届いてないのだ。
「……あれ?」
「……」
どうやら…手違いで送っていなかったらしい。
申し訳無さそうにこちらを見る田島が少し可愛いな、と思いながら、紗枝は気にすることないとフォローを入れる。
「…まぁいいや!今日ちゃんと分かったし!明日予定ある!?」
「いえ…無いですけど」
「じゃあ明日三橋んちに11時集合!プレゼント用意しとけよ?」
そんな、突然云われても。
すぐに用意出来るわけないじゃないか。
困っている紗枝の考えていることに気づいたのか、田島はパッと明るい顔になり、
「そんじゃさ八代!オレもプレゼントまだだから一緒に買いに行こう!」
「え」
「決定!」
勝手に決めるなり、紗枝の腕を掴んで歩き出す田島。
紗枝は掴まれた腕と、そこから伝わる体温に顔を真っ赤にして、田島を見た。
これじゃあ、まるでデート――…
そう考えて、頭をふるふると振った。
自分みたいな見た目ではまず女にさえ思われない。思われたとしても、田島の女の趣味を疑うのが普通だ。
一体、今自分達はどういう風に見られているのだろう。
そんな考えで頭がいっぱいになっていた紗枝だが、田島に声をかけられてハッとする。
どういうのが良いんだろ?なんか良い店知らない?逆に困るものとかだと面白いよな!
そんな感じにどんどんと質問や提案を持ち出され、紗枝はそれに思ったままに答える。
去年――
夏に、たった数分だけ会話をした相手。
それ以来話すことなど出来ず、ずっと遠い存在だった、彼。
それが今は、目の前にいる。普通に、会話して…。
(…パーティ、か)
いつもは自分にとってイベントにもならなかったクリスマス。
だけど今年は――…いつもとは違うクリスマスになりそうだ。
君がいる
(みんなが、いる)
お相手や詳細が書いていなかったので、田島オンリーにしようか程よく他のメンバーも出させるべきか迷ってしまったのですが、結局田島オンリーになってしまいました。
未だにヒロインが田島とくっつくのが想像出来ていないんで(←)まだ友達、というところに落ち着きました。
原作によりますが、冬までに彼らはくっつくんですかね…うーん。
まあ、ちょっとグダグダになってしまいましたが、楽しんでもらえたら良いなと思います!
怜葉さん、リクエストありがとうございました!