学校の行事などで親が来るのが恥ずかしく思うようになったのはいつからだろう。

別に傍から見たら礼儀正しいし頭悪いわけでもないし、中々印象はよく思われるタイプだろう私の父。
けど娘の私に対しては口煩い。何か考えが古いっていうのかな、真面目っていうのかな、学生ではっちゃけたい年頃の私には合わないタイプの父親だった。

帰りが遅いとか、勉強しろとか、学校ちゃんと行けとか、部活やれとか
うっさいったらありゃしない…!

今しか遊べないのに、友達とめいっぱい遊んで何が悪いのよ。

友達と遊べる時間を他のことに費やすなんて、私には考えられなくて
ましてや早くに家帰る意味が分かんなくて、かなり夜遅くまで友達とカラオケで歌いまくっていた。


そして今、私は平手打ちされた。


「……」


頬に走った痛みが、未だにジンジンと余韻を残している。
叩かれた衝撃で横を向いたまま、私は言葉も出なかった。何で叩かれたの。遅くに帰って来たから?


「紗枝、お前…!夜遅くにどこほっつき歩いてたんだ!!電話ぐらい出ろ!」
「…カラオケ行ってたから聞こえなかった」
「着信あったことぐらい分かるだろ、何で連絡ぐらい寄越そうと思わないんだよ!」


そしたら早く帰れって云われるのがオチだったからに決まってるじゃん。

怒鳴りつける父にはもう慣れた。高校生にもなった今、怖いなんて思うわけがない。ちょっと怒られてすぐに泣いていた昔とは違う。そう、私だって成長してるんだ。
なのにきっとこの人は、私はずっと小さい時のままだと思ってるんだ。


「別に私が何しようと勝手じゃん!友達と沢山遊んで思い出作ることの何がいけないの!?今しか出来ないんだよ!?」


最後に睨みつけてから、横を通り過ぎ階段を上って部屋へと向かった。

…あの人…汗、かいてたな。この冬に、汗。…それだけ探したんだ、私のこと…。




「紗枝」


部屋に籠もってベッドに寝転がっていると、ドアの向こうからあの人の声が聞こえた。さっきの怒鳴り声はなく、落ち着いた声だった。
私は自分の名前を呼ぶ声に応えることはなかった。


「学校に行かなきゃ、学生生活の思い出なんて作れないぞ」
「……」
「遊ぶことに反対はしねえけど、友達とは遊ぶことでしか思い出作れないのか?」


……どういう意味。


「…俺がお前ぐらいの年の時は、野球しかしてなかったよ」


…野球部だったことは知っていた。小学生の頃に、学生だった頃の写真を見せてもらったことがある。
坊主で背の高い父は今と顔も変わらなくてすぐに分かった。周りには同じユニフォームを着た男の子達と、胸の大きな女の人や可愛らしい女の子と、顧問っぽそうな眼鏡の男の人。
高校の野球部の人達だと教えてくれた。今でも何となく、写真に写っていた人達の顔をぼんやりと思い出せる。


「1年しかいなくて主将にもなっちまって、練習も朝早くから夜までやったりして、辛い時だってあった。遊ぶ時間も野球にどんどん削られてた。練習の後なんて疲れて遊ぶ元気もなかったからな。──でも、俺の中でかけがえのない思い出だ」

「仲間と必死に強くなろうと努力して、勝利目指して協力して、勝った時は一緒に喜んで……練習の辛さも報われるぐらいに生き生きしてたと思う」


………。


「お前は女なんだから、夜遅くに不審者にでも襲われたらって…心配するんだからな!遊ぶのも良いけど、他にも思い出の作り方はあるんじゃないのか」

「カラオケ行ったら、それは大人になっても輝きを持ってるぐらいの思い出になるのか?」


…………。





友達にドタキャンすることへの謝罪のメールを入れてから、バッグを持って家を出る。
土曜日の今日は会社が休みのあの人だけど、近くの小学校のソフトボールチームのコーチに行っていて家にいない。
小学生の親たちには評判の良い父は、見事に馴染んでいた。


「……」


小学校へと足を踏み入れる。そこは私が通っていた母校でもあって懐かしさもあった。
後輩にあたる小学生たちは、父の打つボールを拾っては投げる、というのを繰り返している。
声をかけながらボールを打つ父は、昨日の厳しい顔が嘘みたいに楽しそうな顔していた。…本当、野球好きなんだろうな。
寒い中よくやるなあと思ったけど、生き生きとした表情をしてる小学生たちに気付いて…彼らも野球好きなんだろうなと思った。

スポーツ、か…。
小学校の時にミニバスやってたけど、中学からは何も部活とかしてなかったんだよね。
学校遅くまで残って練習とか、小学校の練習量と比じゃなくてやってられないと思ったから。





『友達とは遊ぶことでしか思い出作れないのか?』




──…そういや、

部活も、学生の時しか出来ないことなんだよね




「紗枝…」


ボーっと練習を見つめていたら目があって、驚いた表情でこちらに駆け寄ってきた。
遊具に座って頬杖をついていた私は、ちらりと見上げてから小学生へ視線を戻す。


「…野球って、見てても楽しい?」
「……人の好みにも寄るけどな、俺は少なくとも楽しい」
「…お父さんは野球関係全部楽しく思うでしょ。参考になんない」


小さく笑いが零れた私に、笑ったからなのか私が久しぶりに「お父さん」と呼んだからなのか、目を丸くしていた。
私の正面でしゃがみこんでいたお父さんを見て、少し照れくさいけど


「参考になんないから、自分で確認することにする」
「…?あぁ…」


いまいち分かってない様子なので、しょうがないからちゃんと行ってあげることにした。



「私、野球部のマネージャーやってみる」








思い出の作り方

嬉しそうにわしゃわしゃと私の頭を撫でまわすお父さんの笑顔を久しぶりに見て、私も笑っていた。


親子パロを初めて書きましたが…何か…え?これ、夢小説…?
親子が過ち犯すわけにもいかないし…でも花井が単なる親馬鹿になるとも思えないし…寧ろ真面目で口煩い親になると思いまして!←
とりあえずほのぼの、かな?何だかネタがありがちなようにも思えますが…しかも夢小説の内容ではないベタなネタにも思えます…が…
ううん…まず花井短編を初めて書いたものでして…お、お許しください…!
まんごおさん、如何でしたでしょうか?望んでいるものと違う結果でしたら本当に申し訳ないです…!「花井は絶対こんなお父さんだよ!」みたいなのありましたら是非教えてください!時間かかるかもですが再度挑戦したいと思いますので!
リクエストありがとうございました!



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