「ゴールデンウィーク終わっちゃったなー…」
「オレろくに遊べてねーよ」
「オレだって練習で疲れてそんな元気無かったよ」
「あ、阿部そーいや彼女とデートとかしたの?」
「あぁ?してるわけねーだろ、寧ろ会えてもねーし」
ニヤニヤしながら聞いてきた栄口に着替えながら言ったオレの言葉で、
部室が一瞬静まり返った気がした。
▼△▼
「阿部ありえねー」
部室で着替えながらある話題になった時、オレの話を聞いた途端に水谷が顔を顰めて言い放った。そんな言葉にオレの頬がピクリと動く。
「何がだよ」
「だってゴールデンウィークに八代ちゃんと一緒に遊んだりとか全然しなかったんでしょ!?彼氏として失格!」
「だって部活で忙しかったろーが!」
そりゃ申し訳ないとは思ったけど、八代はオレが真剣に野球に取り組んでいることを知っているし、理解してくれている。だから連休でたとえ学校が無くても、オレたちは遊んでる暇なんか無くて、連休中に遊びに行くのは難しいと話せば八代だって笑って「分かってるよ。頑張ってね」と言ってくれた。
八代が分かってくれるからこそオレもそんな八代にホッとして、心おきなく部活に集中できたわけだ。
オレは八代が理解してくれてることをしっかりと話してやるが、水谷は「分かってないなあ」と首を横に振り肩を竦める。何でお前が上目線なんだよ、彼女出来たことないくせに。
「分かってても寂しいに決まってんじゃん」
「……」
何も言い返せなくなってしまい、水谷に負かされたことへの悔しさと八代への申し訳なさに眉間に皺が寄る。
「…阿部さー」
一瞬静かになった部室で口を開いたのは、オレたちの様子を見かねた栄口だった。
「普段八代が自分のこと理解して支えてくれてんだから、たまには阿部の方が八代のこと理解して何か返してやったりしないの?」
「──…」
「あれ?阿部君どうしたの」
部活終わりだともうすっかり外は暗くなっていたが、オレは遅い時間にも関わらず八代の家を訪ねた。玄関のドアを開けた状態でオレを見るなり驚いて目を丸める八代。確かに、オレが八代の家に来るのって結構久々だもんな。連絡もせずに突然来たし。
「……あのよ」
「うん?」
「ゴールデンウィーク…全然会えなくて、悪かったな」
「え…いいよ、最初から練習で忙しいって話してくれたじゃん。分かってたことだから気にしてないよ」
オレの謝罪が珍しかったのか一瞬驚いた八代は、すぐに手を振って笑みを浮かべる。
「…当分は一日全部空くことはないけど、こうやって部活終わってからとか…なるべく会いたいんだけど」
「……へ」
「またこう…家、来ていいか?」
こんな、「会いたい」とか、オレから言ったことがなくて
言うまではいかにちゃんと八代に言えるかということで緊張してたから気にしなかったが、言い終わると途端に恥ずかしさに見舞われる。顔が熱くなっていくのが嫌でも分かった。
「──…うん、待ってるね」
顔を見れなくてだんだんと視線を落としていくオレに振りかかる、優しい声。すぐに顔をあげれば、笑顔の八代がいた。いつでも笑顔でいた八代だけど、今目の前の笑顔がいつもと違うものだとすぐに分かった。
──こんな嬉しそうに笑ってくれるなんて。
ああ、そうだよな。いくらオレの野球に関して理解していたって、気持ちでは寂しいとか思ってくれるんだよな。そう思ってくれてるうちはまだ良い方だ、そのうち愛想疲れてたかもしれないんだ。そんなことにも気付かず八代に甘え、全然構ってやれてなかったけど、それでもまだ八代はオレのこと 好きでいてくれてんだ。
「……八代」
「わっ」
思わず八代の小さい体を引き寄せて抱き締める。唐突の行動に戸惑っていた八代だけど、オレが小さく囁いた言葉に嬉しそうに笑い、背中に手を回してくれた。
“──好き だ”