「ウソップなんか嫌いだよ」
イオの言葉に、ウソップは目を見開いた。
いつもいつも子供みたいに笑って駆け寄ってくる彼女が、今日は冷めた表情でそんなことを云うのだ。流石に驚く。
「――…」
丸い目を更に丸くして固まっていたウソップだったが、やがて眉を寄せる。
ウソップの顔を見ていないイオが気づくことはなかったけれど。
「…おれも嫌いだ、イオなんか」
頭をかきながらウソップはそう吐き捨てると、イオの目の前から立ち去った。
普段滅多に聞かない冷静なウソップの声、その言葉にハッとして顔をあげたイオ。しかしウソップはこちらに振り返ることもなく歩いていて、その背中を見て悲しげに顔を歪めさせた。
戯れていたルフィとチョッパーのもとへ行き、混ざって一緒に馬鹿をやっているウソップはいつもの彼のはずなのに。先程の言葉は確かに聞き取ってしまっていた。
「……」
目頭が熱くなるも、必死で堪えた。
本日4月1日は、ウソップの誕生日であった。
夕方頃からウソップを祝うパーティが始まり、腕を振るったサンジの料理がテーブルには沢山並べられている。おそらくほとんどが船長の腹の中に消えるだろう。
一頻りベタにクラッカーを使って盛り上がった後、食事へと入る。いつもとは違う目立つ席に腰掛け料理を食べていたウソップは、一つ空いた席を見やる。
「…おいナミ、イオどうした?」
「見張りしてるって。今ぐらい良いって云ったのに、イオ聞かないのよ」
「……」
ナミの言葉にウソップは少し考えた後、席を立つ。ナミの後ろを通り過ぎ、部屋を出ようとすると
「嘘も大概にしなさいよね」
酒を飲みながら呟いたナミの言葉に、「何だ聞いていたのか」と苦笑いを浮かべた。
見張り台に行くと、そこに彼女はいた。
しかし寝転がり、すっかりと寝息を立てている。寝ていたら見張りでも何でもない。
イオの側でしゃがみ、彼女の目元が赤くなっていることに気づき困った様子で溜息を吐いた。
「おいイオ、こんなとこで寝てんなよ」
体を揺すってやると案外早く目を覚ました。ボーっとしながら起こした人物…ウソップを見上げ、ハッとして体を起こす。
だけど顔を見ることが出来ず、俯いてしまった。
「……おれに何か云うことあんだろ?」
ウソップがそう促すと、俯いていたイオがぼそっと呟く。
「…ごめんなさい」
「何が?」
「………、今日はエイプリルフールだから…嘘吐いてやろうって思って…だから本当はウソップのこと嫌いじゃなくて、寧ろ大好きで」
喋っていくうちにだんだん涙声になってきていた。それでもウソップが静かに聞いていると、
「だから…嫌いになんないで…」
ぐす、と鼻をすする音。
子供みたいな彼女に、ウソップはふっと笑みを浮かべる。
俯いたままのイオを引き寄せて腕の中に収め、頭に手を置く。
「あのなー云って良い嘘と悪い嘘があんだぞ」
「う」
「流石に嫌いだって云われると傷つくんだよ。それに腹立つ」
「…ごめんてば」
「…ま、でもおれもイオ傷つける嘘吐いたから、おあいこな」
ウソップの言葉に、イオは顔を上げる。
「…嘘?」
「おう。エイプリルフールにおれが嘘吐かないわけねェだろ」
「…いつも嘘吐いてるじゃん」
「うるせェ」
最後、ウソップの言葉に安心したのだろう。やっと笑顔を見せてくれた。
ウソップの背中に腕を回してぎゅっと抱きつく。
「下行って飯食おうぜ。早くしねェとルフィが全部食っちまうぞ」
「もうちょっとこのままがいいー」
「…しょうがねェな」
嫌い!
(…おい何でルフィボコボコなんだ?)(イオちゃんの飯食おうとしたからだ)(おれの飯は?)(知るか)(今日の主役おれ!!)
振り回されるウソップばっか書いてたので、たまにはウソップが振り回してみようかと。
ちょっとウソップが大人っぽいのは、ヒロインが年下だからです。多分15,6。
やっぱり恋愛にまでは進展しない…ww
ウソップ誕生日おめでとう!