「ルフィなんか大っ嫌い!!早く海にでもどこへでも行っちゃえ!!」


















「ルフィ、忘れ物はない?食料持った?」
「ん!マキノから貰ったのが樽ん中ある!」
「ちゃんと後のことも考えて少しずつ食べるのよ」
「おう!!」
「無茶なことばかりしないでね…って、ルフィじゃ無理な話よね」
「ししし!」


まるで息子を心配するように不安そうなマキノ。
ルフィはずっと笑顔でいた。


「……それにしても、イオ来ないわね」


そう呟いてマキノは村の方へ視線を向けた。
港にはフーシャ村の人々が揃いも揃ってルフィの船出を見送りにきていた。
しかしそこには、ルフィと一番仲の良かった幼馴染のイオの姿が確認出来ない。
その場にいる誰もが今日はイオを見てないと云った。


「……イオ…どうしちゃったのかしら」









昨日のこと。
ルフィが旅立つということで宴が行われた。
結局酒目当てなのがすぐに分かるが、それでも楽しければそれでよし。ルフィもゲラゲラと笑いながら宴を楽しんでいた。
翌日の船出が楽しみでしょうがないのかいつもより数倍元気に見える。

そこにイオもいた。
ルフィに連れてこられて、渋々という感じで宴に参加した様子。
普段はルフィと一緒に遊び元気いっぱいな笑顔の絶えない少女なのだが、昨夜はまるで別人。
思い耽た様子でボーっと窓から星空を見ながら酒を飲んでいた。
そんなイオの異変に勿論ずっと一緒にいたルフィが気付かないわけがなくて、いつもの調子で沢山話し掛けた。
普段なら、笑顔で返してくれるのだが、昨夜は適当な返事が返ってくるだけ。
ルフィの思うようにはいかず、昨夜彼女の笑顔が戻ることはなかった。
寧ろ、











『ルフィなんか大っ嫌い!!早く海にでもどこへでも行っちゃえ!!』










ルフィもよく分かっていないが、彼女を怒らせてしまった。
怒らせるようなことをした覚えはない。
いつものように、笑顔で話し掛け他愛ないことを喋っていただけなのだ。

だからこそ混乱しているルフィにそれ以上何も云わず、イオは家へ帰ってしまった。


あれから誰もイオを見ていない。
ルフィも彼女を追いかけることをしなかった。
暫くは驚き、何故彼女が怒ったのかと首を捻らせていたが、それもすぐに無くなり何事もなかったかのように村人達と騒いでいた。










「…んー、まぁいっか!じゃあ俺出るよ」
「え!?」



暫くはイオを待っていたのだが、ルフィは来ることはないのだろうと悟り小船に乗ろうとした。
それにハッとしてマキノが腕を掴む。


「待って!ルフィ、本当にそれで良いの?」
「何がだ?」
「イオと喧嘩しちゃったのよ?そのまま別れるなんて……」
「昨日のイオは機嫌悪かったんだろうなァ。あいつ機嫌悪いととことんうっせーんだ。すぐ怒ってすぐ泣くから」


ケラケラと笑いながら昔のことを思い出すようにルフィは云う。


「それに、別れるんじゃねぇし」


「また会えるからな!」と云って自信があるのかニッと笑う。
マキノも、隣にいた村長も呆然としていた。


「…ルフィ、あなた事の重大さを分かってる?あなたはこれから海賊王を目指して旅をするんでしょう?」
「おう」
「強い敵だって沢山出るはずよ。死にそうになることだって沢山あるはず」
「おう。だから何だ?」
「あなたが…必ずここへ帰ってこれるという保証はないのよ?」
「何だ?マキノは俺が死ぬと思ってんのか?」


特別怒っているわけでもなく、寧ろあまりマキノの云いたいことが分かっていないようで平然としている。


「それに…イオがずっとこの村にいるとも限らないのよ」
「イオが?」
「ええ。もしかしたらイオも旅をするって云い出すかもしれないわ。そしたらルフィがここに戻ってきてもイオがいる可能性は低い」
「そうかー」
「つまり、もうイオと会えなくなるかもしれないってこと」


「成程」と腕を組んで呟いたルフィ。
本当に理解しているのだろうかと不思議になる。


「んー…そうだな、何でイオが機嫌悪かったのか気になるし、ちょっと見てくるか」


やはりあまり理解してないようだったルフィに苦笑しながらも、「行ってきなさい」とマキノは背中を押した。















++













やってしまった。



正直とてつもない後悔が押し寄せている。
けど…もうどうしようも出来ない。そろそろルフィは船出した頃。
あぁ、もうルフィとはさよならだ。会えないんだ。

今までずっと一緒だった幼馴染が途端にいなくなるって考えると、何か変な感じ。(まぁまだ実感、湧いてないんだけど)
なんかまた、ルフィが笑顔でひょっこりと部屋に入ってくる気がする。いつもどおりノックもしないで、遠慮なしにズカズカと。

明日から、あたしは何を楽しみに生きていけばいいんだろう。
ルフィと遊ぶのが好きだったのに。ルフィと過ごせる時間が、好きだったのに。



ルフィが、好きだったのに。




“行かないで” “置いてかないで” “さみしい”


云いたいことは沢山あった。全部泣き言。
けど、云えるわけなかった。
あたしは小さい頃からルフィが海賊に憧れてて、絶対海賊王になってやる!とかほざいてたのも知ってるから、
ずっとずっと、前だけを見て走りつづけていたのを知っているから、何も云えない。
あたしにアイツを止める権利はない。


いつからだろう、アイツに距離を感じるようになったのは。
小さい頃からずっとずっと一緒だったのに、最近までもずっと一緒だったんだけど
あいつが海賊に憧れて強くなろうと修業を始めるようになってから、自分の情けなさを思い知らされたんだ。
同い年なのに夢を持って、その夢のために頑張れるアイツに、
ずっと今の時間が続いてほしいと現実を見ようとしないあたし。
あれだな、きっと、“月とスッポン”ってやつだろうな。






「イオーー!」




「――――!」



嘘、まさか、本当に?



バタン、とドアが開いた瞬間にあたしは思わず手元にあったクッションとか枕とか目覚し時計とかとにかく色んな物を投げつけた。
「ぐえっ!」とか云って怯んだルフィを蹴ってあたしはすぐにドアを閉めた。

駄目だ、今あたしを見ないでほしい。


「イオ!何すんだお前!時計痛かったぞ!」
「アンタ何しに来たの!?」


ドアに寄りかかってルフィを拒む。
ドア越しに聞こえるルフィの声はちょっと怒ってるようだった。(あぁ、ごめん)


「何って…昨日イオ機嫌悪そうだったからよ、どうしたかと思ってな」
「………」


あたしに大嫌いとか云われても、コイツ何とも思ってないんだ。
なんか、悔しい。腹立つ。ムカツク。殴ってやりたい。


「別に…機嫌悪かったわけじゃ」
「何だよ、だって昨日怒ってたろ」
「怒ってないし!」


怒ってるっていうかもう、あれは八つ当たりだ。



「ッただ本当のこと云っただけだもん!!アンタがいなくなって清々するよ!早く海出て近海の主にでも食べられちゃえば!?」
「あんな奴に俺は負けねぇぞ!」
「海王類の胃の中で死ぬんだよどうせ!!」
「じゃあ内側から俺が海王類食う!!」


バッカじゃないの?


その言葉を飲み込んで、黙った。
何してんだろ…あたし。
こんなに捻くれた奴だったっけ。可愛くない女。
まだ昔の方が素直だった気がする。ルフィに反抗したりしなかったのに。



「………イオまだ機嫌悪いみたいだな」
「だから機嫌は…」
「んじゃ、次会うまでに機嫌直しとけよ。じゃあな!!」





え?





足音が、小さくなってく。
あ…ルフィが行っちゃう。行っちゃう。



「ちょっと!!」



結局自分から扉開けちゃうなんて。
ルフィは後頭部に腕を回した状態で振り向き、あたしを見た。



「……次って…何?」
「ん?何って、俺が帰ってきた時だ。あ、それともイオも旅出たりすんのか?そうすると俺イオと会えるか分かんなくなっちまうから困るんだよなー」
「…………」


何、云ってんだろ、コイツ。
次?次なんて、あるわけないじゃん。
海賊王を目指すんでしょ?だったら強い敵と戦うんだから、ルフィが絶対勝てるなんて保証もないんだし……
もしかしたら…ルフィは冒険の途中、海賊王にもなれず死んじゃうかもしれないんだし…
ましてや、またここに来るなんて



「俺、絶対海賊王なるからよ、見ててほしいんだ、イオには」



ルフィの言葉に思わず肩が揺れる。



「遅くなるかもしんねぇけど、イオにはここで待っててほしいんだよなー。海賊王になったら、一番にお前に会いに来るからよ」
「……」
「だからそん時は、また笑って迎えてくれよな!」
「……」


ニッと笑ったルフィに、泣きたくなった。
あたしは、情けないうえに醜い。

(ただ馬鹿なだけかもしんないけど)あたしが酷いこと云ったって怒ることもしないで、いつもみたいな笑顔を見せてくれる。
それなのにあたしは勝手に怒って、勝手に塞ぎこんで。…馬鹿、みたい。


「……るふぃい…」


ルフィの方まで小走りで行って、肩に腕を回して抱きついた。
やっぱりルフィはよく分かってないようだけど、あたしの背中に手を回して優しく叩いてくれた。
いつもルフィが子供みたいなのに、今はまるで逆だ。


「あたし、ずっとここいるから…ルフィのこと待ってるから…」
「おう」
「だから…お願いだから、帰ってきてね?」
「イオが待ってるもんな!」


ししし!とまた笑ってルフィはあたしをぎゅっと抱き締めた。
ルフィの赤い服を掴んで馬鹿みたいに泣いていたあたしを、何も云わずにルフィは抱き締めてくれていて、それがまた嬉しくて泣けてきた。












「イオはやっぱ泣き虫だよなー」
「うっさい」
「俺しか知らないんだよな、イオ負けず嫌いだから泣き顔見せねーもん」
「ほっとけ」


あたしの家の前で一部始終笑顔だったルフィを見送ることにした。
今更港行って村の人達に合わす顔もないし、港向かってる間にあたしまた泣きそうだから。

ルフィが笑顔でいられるのは、自信とかがあるからなんだろうな。
それだけ強いのは、前から知ってたはずなのに。

…あぁ、あたしやっぱ、コイツが好きなんだな。



「ごめん、ね…ルフィ。大嫌いとか、云って」
「ん?あぁ、平気だ、気にしてねーから。どうせ嘘だろうなって思ってた」
「……」


何でも、お見通しなんだ。
馬鹿のくせに、何でこういうことは分かるんだろう。(ただ、信じなかっただけなのかな)


「ルフィ、あたしさ、本当はアンタのこと……」






「――――――」








「……え…?」


驚くあたしに、ルフィは目の前でまた歯を見せて笑った。
ちょ、何で、アンタ笑顔なの。今、だって確かに――



「帰ってきた時の楽しみにするから、行っちゃ駄目だ!」
「……」
「次会った時は海賊王の妻にしてやるから、イオも楽しみにしてろよ!!」
「………ばーか」


何でだろう、コイツが云うと本当にまた会えるような気がする。
あたしは海の過酷さも世界の広さも全く知らないけど、それでもルフィは笑って全て乗り越えていける気がした。
だって、ルフィだもん。




「またな!!」
「うん、ばいばい」
「また、な!!」




二度も、云われた。
ぽかんとして何がしたいんだろうと数秒考える。
ルフィは動く気配はない。あたしに、何かを求めてる。










『遅くなるかもしんねぇけど、イオにはここで待っててほしいんだよなー。海賊王になったら、一番にお前に会いに来るからよ』

『だからそん時は、また笑って迎えてくれよな!』









――――――……あぁ、そっか。そうだよね。









ルフィに負けないように、大きく息を吸い込んで、笑顔で云ってやった。
アンタに、笑顔で船出してほしいから、さ、



















またね


(ぎゃああああルフィが賞金首になってるぅううううう)(三千万ってこいつ…)(…まぁ、元気そうで何よりだ)
やっぱ君は、笑ってるんだね。




久々の歌夢。

映画見たさにYoutubeで欲求満たそうと「またね」を聞いていたら思いついたネタ。
歌詞がね…あまりにもさ…
ていうかこれドクトリーヌ中心ですか?そうなんすか?
まぁおかげでやりやすい歌詞なんで書けたんだけど。
いつしかは書こうと思ってたんだよね。
これは良い曲だと思う。微笑ましい。

…テスト前に何故ネタが浮かぶんだ…
ていうか何故テスト前に映画公開するんだ…orz


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