※男主。友情
※死ネタ





「お!チョッパーいらっしゃい!」
「ミズキ、具合はどうだ?」
「平気!」


習慣にもなってる二日に一度のミズキの診察。
ドクトリーヌに担当を任された俺の初めての患者。
病気なんて嘘みたいな程にミズキは太陽みたいな暖かい笑顔を見せてくれて、俺はその笑顔が大好きだ。


「チョッパー、俺外行きたい」
「それは駄目だ!外はただでさえ寒いんだ、状態が悪化したら大変だろ」
「えー」


そう云って頬を膨らます。
ごめんな、俺が、ミズキの病気を治せないから。
やっぱり俺は未熟だ。もっともっと、勉強しないといけない。


「絶対治してやるから」
「あぁ」
「俺、『万能薬』になってみせるから」


何でも治せる、絶望も希望に変えられるような医者になるから。
ドクターみたいな。ドクトリーヌみたいな。

ミズキは俺からいつもの苦い薬を受け取って、笑った。




「おう、楽しみにしてる」




この笑顔を見ると、くじけそうになる気持ちとかも全部吹っ飛んで、
まだ未熟な俺でも、本当に「万能薬」になれるって思えるんだ。



「そしたら、一緒に外で遊ぼう」
「あぁ!雪合戦しよう雪合戦」
「おう!」


二人で笑って、指切り代わりの握手をした。







「なぁチョッパー?」
「ん?」
「ドクターって誰?」


ベッドで寝転がりゴロゴロしながらミズキに訊かれた。
俺は薬を作る腕を止めて振り向く。
一度ミズキを見てからまた正面を向いて、そこにあった窓から雪景色を見た。


「……俺の、大切な仲間」
「仲間?」
「うん。色んなこと教えてくれたんだ」


独りぼっちの俺を助けてくれて、何も知らない俺に色んなことを教えてくれた。
喧嘩も仲直りも、プレゼントも、海賊も医者も、桜もドクロも。
医学っていう医学は全然教えてくれなかったけど(ドクターはいつも研究してたから)それでも俺にとって必要なこと、全部教えてくれた。


「そっかー。じゃあそのドクターって凄いんだ」
「凄いぞ。この国を救おうと頑張ってたから」
「救うって、どうやって?」


その質問に、俺は思わず笑顔で振り向いた。





「桜を咲かせるんだ!」





嬉しそうな俺に、ミズキはきょとんとして目を丸めてた。


「…桜?」
「うん。俺は見たことないけど、ドクターは桜を見て病気が治ったって云ってた。桜は“万能薬”なんだって」
「凄いんだな、その桜って!」


笑顔に戻ったミズキに俺も嬉しくなって笑って頷いた。


「ドクターの研究は完成してるはずだ!今はまだ無理だけどいつかきっと見せられる。そしたらお前の病気もきっと治るぞ!」
「あぁ!」


ドクターの死ぬ間際に云った言葉…俺は覚えてる。
確かに「完成した」って云ってた。
だから、この冬島にも桜はきっと咲くんだ。
















+++















頭の中が真っ白になった。
思わず手に持っていた沢山の本をその場に落としてしまって大きな音がたつ。
目の前にいるドクトリーヌはいつも通り酒を飲んでた。



「…今…何て…」
「何度云わせるんだい。ミズキの病気はもう、治らない」






嘘だ。








『チョッパー!』








「…嘘だ!そんなことない!治らない病気はないんだ!だから…」


治らないなんて。
そんなのあんまりだ。
病気は辛いだろうにあんなに笑って、いつでも希望を失わないあんな良い奴に
何で、そうやってどんどん辛いめに遭わせるんだよ。
ミズキが何をしたんだよ。


どうしよう笑わなくなったら。
(俺、あの笑顔大好きなのに)


どうしよう泣いてしまったら。
(俺まで泣いちゃうよ)


どうしよう嫌われたら。
(あんなに治るって豪語してたし)



知ってる、ドクトリーヌは病気のことで嘘は吐かない。
本当はドクトリーヌが優しいことを、俺は知ってるから
だから今告げられたことも真実だってのも、本当は痛い程分かってる。ましてや俺が担当してる患者のことで嘘吐くなんて絶対ない。
ドクトリーヌは俺よりずっと前から医者で俺に医学を教えてくれた人だから、ドクトリーヌの云うことのほうが説得力もある。



治らない、んだ。







「いいかいチョッパー」


色々考えちゃって泣き出した俺を背に、ドクトリーヌは落ち着いた声で遮った。


「まだお前は『万能薬』にはなれてない。治せない病気もある。だったらお前にやれることは何だい?」
「え……」
「病が治せないなら、心を治すのさ」


ドクトリーヌは、俺を見ようとはしなかった。
今気付いた。
そっか、ドクトリーヌも、辛いんだ。いつも何でもないようにしてるけど、本当は、






「……心を…治す…」



俺に、出来ること
















+++++















「え?」


ミズキは予想通りきょとんとした。
それに驚いてる。そうだろうな、今日は診察日じゃないから俺が来るのはおかしい。
目を丸めてるミズキに、俺は荒れる息でまた云った。




「雪合戦しよう!」




俺の言葉の数秒後、ミズキは凄い嬉しそうに笑って大きく頷いた。











++











「ぶべっ」
「直撃ー!」



顔面に丸められた雪をぶつけられて倒れた俺を指差してケラケラ笑ってる。
俺も負けじとすぐ雪で団子を作っていっぱい投げつけた。
それに慌てて避けるけどミズキは雪が積もった地面に慣れてないからか見事に転んだ。
真っ白の地面にうつ伏せ状態になって、そのまま起きようとしないからちょっと心配になって近づく。


「お、おい、大丈夫か?」


そしたら、


「隙あり!」


バッと起きて団子も作らず雪をそのまま投げつけてきた。
それに驚いて尻餅をつく俺に「してやったり」というようにまた笑った。


並んで丁度あった丸太に腰掛ける。
俺の隣でまだ笑ってるミズキはあまりに楽しかったのか涙まで出してた。


「あー楽し」
「俺、ぶつけられてばっかだ」
「チョッパーって単純だからな。分かりやすー」


何も返せなくて俯く。
それにまた笑ってるから、何だか俺もどうでもよくなってきて一緒に笑った。





「…チョッパー、」
「何だ?」


ミズキを見ると、その場で小さな雪だるまを作ってた。
そのままそれから視線を逸らさず、いつの間にか消えた笑顔に目を開く俺に訊ねる。


「俺、もう駄目って感じ?」
「――――!!」


ビクッと体が震えた。
そんな俺の様子を見て、ミズキは苦笑する。


「やっぱな」
「………」


俺は、嘘を吐けないみたいだ。
吐いてもすぐバレるんだろうな。


「…えと、その…」
「………ありがとよ」
「!」


驚いて俯いてた顔を上げて隣を見た。


「俺が外行きたいって云ってたから、連れてきてくれて、雪合戦してくれたんだろ?」
「…ッ」
「俺ちっさい時から体悪いからさー、外で遊ぶことってほとんど無くて。だから凄い楽しかった」


そう云って、やっぱり笑ってたミズキを見て、俺はボロボロと涙を零してた。
ミズキはそれに予想外だったのか吃驚して目を丸めて慌てだす。


「え!?ちょっ、何!?チョッパー!?」
「ごべっ…ごべん…!オ゙レ゙、医者のぐぜにっ…何も出来ないがら゙…!!」


本当は病気治してやりたいのに
俺、まだまだ未熟だから、こんなことしか出来なくて


「やだよ…!オ゙レ゙…!お前に、死んでほしくない…!!ごうやっでまた、外で遊びだいぞ…っ!」
「……チョッパー…」


駄目だ、俺。
本当は患者を不安にさせないように、目の前で泣いちゃいけないのに。「死んでほしくない」なんて、尚更。
患者に死んじゃうんだって、知らせるようなもんなのに。



「…バッカだなー!」
「!?」



バシッ、と、頭を叩かれた。
何かと目を丸める俺に、またいつもみたいに笑って


「死なないさ」


と、云った。


「…え」
「人ってさ、誰かに忘れられた時が死ぬ時なんだぜ。だからさ、チョッパーさえ覚えててくれれば俺は生きてる。ドクターも、チョッパーの心の中で生きてる」
「………」
「心臓が止まるのとは、違うんだ」


胸に手をあてて笑ってみせたミズキに、俺は言葉を失った。


「チョッパー、俺さ!」
「…?」
「海賊になりたかったんだ!」
「海賊……」


ドクターに教えてもらった、海賊。
俺も少なからず、憧れてた存在。


「だからさチョッパー、俺の分まで人生楽しめよ」
「……」
「海賊なってさ、ギャーギャー騒いで、自由気ままに生きて、色んな世界を見る」

「俺はいっつも家ん中いたから何も知らん。だからその分チョッパーは世界を知るんだ!」
「世界、を…」


そうだ。
心の奥底でずっと気になっていた、世界。
俺達はこのドラムを出たことがないから、何も知らない。
他の島ってどんな形をしてるんだろう?どんなものを食べてるんだろう?雪は降るのか?桜は咲くか?
謎は、いっぱいだ。


「……けど…俺には、海賊は無理だ」
「何で?」
「だって…俺は、化け物だから」
「化け物?そんなのこの世界にはいっぱいいるさ!だから何度も云ってるだろ、俺達は世界を知らない。島を出れば化け物なんてきっと沢山いる!」


両手を広げて自信たっぷりに云うもんだから、本当にそんな気がしてきた。
俺みたいな想いした人も、沢山いるのかな。


「俺にはチョッパーしか友達出来なかったから、チョッパーはもっと友達作るんだぞ」
「…友達…?」
「おう。きっとチョッパーには凄く大切な友達が出来るはずだから、チョッパーはそいつらを大事にしてやれよ」
「……俺と…友達?」
「…ん?違う?」


ミズキが眉を寄せて少し不安げに俺を見たから、慌ててフルフルと首を横に振った。
頬が思わず緩む。
友達、友達、友達


「…エッエッエ 友達、か…」
「…な、なんか恥ずかしいな…」


小さく笑う俺に、ミズキは少し照れた様子で頬をかいた。


「ミズキ、」
「ん?」
「俺はもう、大切な友達が出来てるぞ」
「え」


「ミズキが、大切な…大好きな友達だ」



笑って云うと、ミズキは凄く驚いた顔をして、
だけどすぐにはにかんで、俺を抱き締めた。


「ったく可愛い野郎だなお前はよー!」
「ぐえっ、ミズキ、くるし…っ!」




医者と、患者じゃないんだ。
俺と、ミズキは、







「友達」
「おう」







初めて出来た、同い年の、友達。
そいつは俺の患者で、いつでも明るく笑顔が印象的な、同じ憧れを抱いた、凄く大好きな奴だった。

























「…ッパー」



「おーい」



「チョッパー!!」




パシパシと頬を叩かれてて、ハッとする。
目の前には少し心配したようなルフィとウソップがいた。


「お、やっと起きたか」
「俺……」
「どうしたチョッパー、何か嫌な夢でも見たか?」
「え?」




「泣いてるぜ」




ウソップに云われて、俺は頬に触れる。
確かに俺の目からは涙が溢れていた。

俺、寝てたんだ。



「……」











『人ってさ、誰かに忘れられた時が死ぬ時なんだぜ。だからさ、チョッパーさえ覚えててくれれば俺は生きてる』










けど、もう、君はいないんだ。







「………」
「チョッパー!?」
「何だ何だ!?何かもっと泣き出したぞ!!」
「ウソップお前何かしたろ」
「してねーよ!側で見てたろお前はよ!!」


鼻水流して、大泣きした。
何事かとナミもサンジもフランキーも来て、俺が泣いてるのを見て驚いてルフィとウソップを責めてた。



ミズキ、お前は生きてるって云うけど



側にいてくれなきゃ、俺は嫌だよ。





また、俺の前で笑ってくれよ





















君がいない



(ル゙フィ、)(ん?)(オ゙レ゙を仲間にしてくれてっ…あ゙り、がどな…!)(何云ってんだ?今更)(ル゙フィもみ゙んな゙も、オ゙レ゙の大切な、友達だから…っ)(……)(ししし!おう!!)





久々に書いた短編。
映画公開記念ということで公開前日の晩飯時に思いついたネタ。…なので走り書き。文が雑ですんません;

最初は女主だったんだけどやっぱり友情なら男主の方がしっくりくるかなと思い最後の方で変更しました。

男主の「忘れられた時死ぬ」みたいなことはヒルルクの言葉なんだけど、チョッパーはこの言葉聞いてないから聞かせたかったんです。
チョッパーがヒルルクを忘れなきゃヒルルクは生きてるんだぜ!みたいな。

夢の時の時期はルフィ達が来るちょっと前かと。夢の最後のシーンの数日後に男主は亡くなります。
最後まで大泣きするチョッパーを笑ってやってました。
結局男主は生きてる間一度も泣きませんでした。…そういう人です。はい。

それと今回はさり気無くルフィ達との友情も書きたかったので最後の一行が出来た。
キャラソンに「Family」って歌あるけど…あそこで「友達じゃなくて」って云ってるけど…どうしようか
仲間って何ともいえない位置。友達と仲間を使い分けるのが難しい。
ワンピは「仲間」を強調してるけど…どうも私的に友達の方が親密な関係に思えるんですが。うーん。
でもルフィが「仲間だ」を連呼してるところを見ると仲間って良い存在…!!と思える。流石おだっちパワー。

映画が凄い観たいです。そんな願望の塊ですすんません。
誰か一緒に観にいきませんか…!!(勉強しろよお前テスト前だろー)

ごめんなさいもう病気です。

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