※千石が色々とひどい
※菊丸出張り
※少しいかがわしい








ねぇ、君が分からないよ



















して
 して
  をして
























「ねぇ、千石」
「ん〜?」
「あたし達、付き合ってるんだよね」
「そうだよ〜」




千石は、いつものように適当に答えてる。
手には携帯。いつものことで。
あたしの知らない誰かと、メールをしている。


ねぇ、隣りに彼女いるんだよ?


「……何してるの?」
「メール♪」
「……それは、今じゃなきゃ駄目なの?」


せめて、彼女がいる時ぐらいはさ、止めてほしいよ。
毎日、登下校一緒なのに、楽しく会話した記憶がないよ?
いつもいつも、千石は誰かとメールしてるから。


「ん、もうちょっと待ってね」
「………」


それ、さっきも云ったよね。
聞き飽きたよ。



「………」


千石がメールを止めてくれないから、あたしは話しかける事も出来ずに無言で歩く。
沈黙が辛い。
千石って、もっと明るくて、優しくて、人を楽しくしてくれるような人じゃなかったっけ?


ねぇ、あたしつまんないよ。



「…ねぇ、千石」
「ん?」
「日曜日、遊ぼ?」
「あ〜…ごめん、日曜は無理…」
「…土曜は?」
「土曜も…」
「……そう」


つきあい始めの頃は、一緒に遊んだのに。
最近はいつも「無理」ばっかだね。
日曜は、部活無かったよね?
どうして「無理」なの?


ねぇ、あたし寂しいよ。




「それじゃ、ここでね」
「…うん」
「ばいばい〜また明日
「…ばいばい」


分かれ道になって、千石と別れる。
いつもの笑顔だった。あたしが、大好きな笑顔のはずなのに。

…どうして、虚しくなるんだろう。

家まで送ってくれたりとか、一日でも良いからしてほしいだけなのに。
千石はそんな事気づかないんだか、知らんぷりなんだか、全くしてくれない。








+++++








「…今の子、誰?」



あたしと千石はクラスが違う。
千石のいるクラスに行くと、必ずと云っていい程千石は女子と一緒にいる。
楽しそうに喋ってる。
…あたしの時には、どうして喋ってくれないの?


「友達だよ〜」


千石はそうやって笑うだけ。


あたしが来ても、千石の周りにはクラスの女子が集ってくる。
千石はそれを拒まない。
みんなと話してる。
…あたしは、こうしてまた疎外感というものを感じる。



あたしは千石が初めて付き合った人で、

初めて好きになった人で、

付き合うって、何するんだか分からないよ。

彼女って何だろう。




一番隣りにいて

一番構ってもらえて

一番愛してもらえて

一番愛して良い存在じゃないの?




もっと一緒に遊んだりして

そうじゃなくても側にいて、あたしの事を見てくれてたら良いんだよ。

何もいらない。

千石が欲しい。



ねぇ、泣きたいよ―――








「ね、紗枝ちゃん」
「…?」
「今日さ、一緒に宿題やらない?」
「…え?」


お昼をたまたま一緒に食べることになって、初めて来た屋上でそんな事を云われた。
千石とあたし以外は誰もいない。


「あれ、そっち出てない?英語の宿題」
「…あ、あぁ、出たけど」
「それ!結構量あるでしょ?だから、一人でやるよりは二人でやった方が早く終わるかなって!ほら、紗枝ちゃん凄く頭良いし」
「…そんなに、良くないって」
「そんな事ない!…で、どう?」
「…良い、けど」


あれ、何かしらで、誘われたのは初めてかもしれない。
二人きりで何かするの、初めてかもしれない。
デートなんて、した記憶がないし(それっぽいのはあっても、千石が違う女連れてきたし)
誘っても、断られるし

そりゃ、ただ宿題やるだけだけど。

それでも、やっぱり違う。


「それじゃあウチおいでよ。紗枝ちゃんまだ来たことないよね?」
「うん」


アンタが、いつも遊ぶの断るからね。


「それじゃ、帰りまたあとで」
「うん」




ねぇ、喜んでも、いいの…?









+++++










「上がって上がって!」
「…おじゃまします」



初めて千石の家に来た。
初めて千石の家を見た。
初めて千石の家に入った。

千石の部屋は予想以上に綺麗に片づいていた。
テーブルの側に鞄を置いて座る。
千石はジュースを持ってきてくれた。


「はい」
「ありがと」
「それじゃ始めよっか」


宿題を出してすぐに始める。
ちょくちょく教えてやって、まぁまぁそれなりに進められた。
それで、宿題がほとんど終わってあとちょっとだなって時に、千石が落ち着きを無くしてきてた。


「…どうしたの?」
「いや、気にしないで!さ、進めよっ!」
「…?」


暫く進めてたけど、やっぱり千石は落ち着きが無い。
でもすぐに集中してて、宿題ばっか気にしてたら、







「…!?」







後ろから、抱き締められた。






「…せ、千石?」


千石と触れたのは、初めてかもしれない。
キスさえしたことない。抱き締められたこともない。
するような感じにもならなかった。

そして、今もそういうことをする感じではなかったはず。


「…紗枝ちゃん」
「?」




















「シよ?」






















「………え?」


頭の中が真っ白になった。
「しよ」って何を?
普通男女のこういう場面では…やっぱりそういうことをするんだろうけど。
まさか千石があたしに、そんな事云うはずない。
だって、手を繋いだことさえないのに。
何で、急にそこまでいっちゃうの?


「…ひゃ…っ!?」


首筋らへんを舐められた。

一気に顔が熱くなって、恥ずかしくて
心臓がバクバクと煩くて


「んぁ…ッちょ、せんご…く…っ」


首筋周辺を舐められて、キスをされて、吸い付かれた。
制服のボタンを外されて、まずいと思って千石の手を掴むけど、止める事は出来なかった。
胸を触られた。


「紗枝ちゃん…胸、大きいね」
「や…っ」


千石が、あたしの胸揉んでる。
恥ずかしくてたまらない。


「な、んで…ッ」
「何でって…だって紗枝ちゃん、俺達付き合ってんだよ?」
「…!」
「俺、男だよ?やっぱり、ヤりたいって思うよ」


……ねぇ、そこであたしを選んでくれたのは、素直に喜んでいいの?


それとも、他の人はもう抱いたの?



「……いいでしょ?」
「………」



付き合ってる人は、やっぱり、エッチぐらいすると思うけど

ここであたしが抱かれたら、あたし好かれてるって思って平気?





「―――…うん」











ねぇ、千石






あたしずっとアンタに憧れてたの






恋なんてしたことないあたしが、アンタの笑顔見てから生活が変わったの






アンタを見れるだけで一日素敵な日だと思えた






笑顔を見れたら、もっと好きだって思えた






勇気振り絞って告白して、アンタがOKしてくれた時






泣きたいぐらい嬉しかったんだよ













ねぇ、千石…好きだよ―――























+++++










恥ずかしくて死にそうだった。

けど、嬉しかった。

腰痛かったけど、何事も無かったように夜中に家に帰った。

多分、とても幸せそうな顔をしてたんだと思う。

千石が、あたしに触れてくれた事が、嬉しかった。

付き合うって、こういう事でもあるんだ。




浮かれてたんだ。






「…あの、千石は?」
「え?あぁ、さっき裏庭に行ってたけど…」
「ありがと」


休み時間千石のいるクラスに行ってみたけど、千石はいなかった。
クラスメイトに聞いてみた通りに裏庭に向かうと、千石はいた。




千石と、一人の女の子がいた。






千石と、一人の女の子が、キスをしていた。









「…え…?」
「あ…」
「…紗枝、ちゃん」


二人も、あたしに気づいた。
女の子はどっかに逃げた。
人の彼氏に手を出す女を許すものじゃないけど…あたしには分かる。


悪いのは、全て千石だ。



「…どういうこと?」
「いや、これは…っ」
「…何で?」


何で、そこらへんの女子にはメールもよくして、キスだってしてるのに


あたしには、何もないの?


やっと、前に繋がったばっかでさ




「…アンタが、色んな子と仲良くするだけでもあたしイヤなのに……嫉妬ばっかで…それでも、千石に嫌われたくないから…我慢してたんだよ?けどさ……こればっかりは、許せないよ……」



視界が歪んだ。
正面にいる千石の困った表情が、何が何だか分からなくなる。



「前々から、ずっと不安だった……よく考えれば…あたし、アンタに『好き』って云われたことない……」



あの時も









『好きなんです…付き合って、ください』
『…いいよ』










『せん、ごくぅ……ぁ…っすき、だよ…だいすきぃ…!』
『…っうん』












「いつも…曖昧に答えて、云ってくれなかった……」


嬉しかったから、その時は何とも思わなかったけど
今じゃ…あれも、これも、まさかあの時も…そうやって不安な面がいっぱい出てくる。


「好きじゃないんでしょ?別にあたしこと、何とも思ってなかったんでしょ?」


「クラスに遊びに行ってたから、今ならアンタのタイプ分かるよ……『来る者拒まず、去る者追わず』…アンタ、そーいうタイプだ…」


アンタにひっつく女子一人一人に笑いかけて優しくして
別に、ものすごい不細工とかデブじゃなかったら、誰でも良かったんでしょ?


「断って、泣かれたりとか気まずくなるの嫌だなとか思って……OKするタイプだ……そうだったんでしょ?今までも」
「…っ」


図星って顔だ。


「けどね…っ本気で好かれてもないのに付き合ってる方が、ずっと辛いんだよ…!諦めらんないんだよ!」




「…あたしが、どれだけアンタを好きか知ってる!?アンタが思ってるより、ずっとずっと好きなんだよ!?ずっと片想いしてて、やっと告白したんだよ!?……初めて好きになった人が、アンタなんだよ…?もう、これ以上好きになれる人はいないって程…大好きだったんだよ…?」




「ふざ、けんな…っあたし、アンタのこと信じて何も云わなかったのに……」




「何で…抱いたの……」


「……」



「何で!?」


「………紗枝ちゃんが、可愛かったから」
「…!」


つまり、顔が良ければ誰でも良いってことだ。



「…じゃあ、何で他の子とキスしたの…?」



「……『キスしよう』って、云われたから」
「…!」



怒りで、腕が震えた。
殴りたくなる衝動を抑えて、最後の質問をした。










「あたしは…沢山の女子の一人…?」









「――…うん」











パシン と、掌がヒリヒリする程強く叩いた。
千石はこっちを見ない。
走って逃げる前に、泣きながら捨て台詞を吐いた。




「…サイテー。別れる…」






どれだけ好きでいても

どれだけ側にいようと

心は、側にないんだ

触れられても、「好き」と繋がるわけじゃないんだ


あたしはただ夢を見すぎていたんだ

世の中、そう上手くいかないんだよね……










家に帰ってから、子供みたいに泣きじゃくった。
ご飯も食べないで、ただずっと部屋に閉じこもって、泣き続けた。
暫く学校を休んで、友達からメールが来ても、見る気にもなれなかった。
すごく心配をかけさせて数日、




「紗枝!!いい加減学校行きなさい!!今日も休む気!?」

「……」



ドアをどんどんと叩く音が煩くて仕方なく起きた。
目に泣いた痕は無いし…学校行かないと授業遅れちゃうし、そろそろ行かなきゃとは思ってたし。
…でもやっぱり多少憂鬱にはなる。

未練残しすぎのあたしが、凄く嫌。





学校に行くと、友達が泣いてあたしの身を心配してきた。
千石には、会わなくて済んだ。
クラスが別で、心底良かったと思う。










「紗枝ちゃーんっ♪」
「!?」


一人でボーっとしながら帰ってたら、急に後ろから抱きつかれた。
これには少し過敏に反応する。良い思い出ではないから。
けど声ですぐに安心した。



「…英二」
「久しぶりだにゃ♪」



あたしの従弟の、菊丸英二。
山吹じゃなくて青学に通ってる。
メールはするけど、あまり会えない。
英二はテニス部で頑張ってて、練習大変みたいだから。



「…何で、ここに?」
「ん〜、気紛れ?」
「…そう」
「にゃんだよー、もっと嬉しそうにしろよー」


頬を膨らましてそう云う英二は、可愛い奴だと思う。
コイツも人気者だ。
でも、千石とは随分違う。


「ごめん、今日はちょっと疲れてるっていうか…アンタの相手出来ないっていうか」
「えーにゃんでぇ!?紗枝ちゃん部活してないでしょー?折角遊びに来たのにー」
「ていうか、普通に平日なのに、何でアンタここに来てんの?部活は?」
「今日は休みにゃんだ♪」


ピースして笑ってみせる英二。コイツは百面相だ。


「ねぇねぇ!普段あんま遊べないんだしさ、今日は遊ぼうよ!ね?」
「……まぁ、いっか」


少なくとも、一人でいると色々考えちゃうし。
コイツを見てると、少し気分が楽になるから。



ゲーセンに行って、
アイスを一緒に食べて、
くだらない会話をして、
くだらない会話に笑ってる。



そうだ。
あたしが男と付き合うというのは、こんな感じなんじゃないかって思ってたんだ。



…これが、英二じゃなくて千石だったらいいのにって思ってしまう自分が、嫌になる。



…何であたし、こんなに千石好きになってるんだろう。
酷い事されたのに、嫌いになりきれないあたしって何。



「そーいえばさ、千石とはどーお?」
「…やっぱりそれ聞いたか」
「え?」
「別れた」
「……え!?」


食べ終わったアイスカップをゴミ箱に向かって投げる。
見事に入ったそれに内心で自分に拍手した。
隣りで英二は目を丸くしてる。


「にゃんで!?紗枝ちゃんすっごい嬉しそうだったじゃん!!」
「…そりゃ、嬉しかったけど……けど千石はそうじゃないから」
「…?」
「本気じゃなかったんだよ。あたしのこと」
「…!」


食べかけのダブルアイス片手に固まってる。
溶けそうなのが気になって隙がありすぎの英二のアイスを食べてやった。
けど英二は怒らなかった。


「…そう、なの?」
「うん。えっちもしたけど、なんかヤリ逃げって感じ」


結構、冷静に話せてたと思う。
数日のうちに随分泣いたからかな、やっぱ。


「………」


何も云わない英二に何かと思って視線を向けてみた。




「…何で、アンタがそんな辛そうな顔してんのさ…」

「…だってさぁ…っ」




どうしてそんな、泣きそうな顔してんの。
アンタは関係無いじゃん…


「…千石、そんな奴だったなんて…たしかに、アイツは女の子好きだけど……」
「一人の女だけを好きになれないんだよ。悲しい奴だよね」


アンタが泣きそうな顔してるから、あたしまで泣きそうだよ…
もう、アイツのことで泣きたくないのに…


「…いいんだよ英二。もう、忘れる。早く他に素敵な人でも探すよ」
「……ごめん」
「…だから、何でアンタが謝ってんのさ」


英二は、優しすぎる。
馬鹿で煩くて単純で…けど、明るくて、いつも誰か元気にしてくれる。


「…英二」
「?」
「あたし、アンタが従弟でよかったよ」


きっと、英二がいなかったら、押しつぶされてしまっていたのかもしれない。
英二が側にいてくれるから、あたし随分救われてるんだよ?





















+++++






















「先輩、どうしたんですか?最近調子悪いです」
「ん〜…ちょっとね」


太一は心配そうに訊ねるが、苦笑しながら曖昧に答えるしか出来なかった。
好きなテニスをしていても、どうしても脳裏に浮かんできてしまう紗枝の泣き顔。


(…女の子の泣き顔は、きついなぁ)


オレンジの頭を掻いて、一つ溜息を漏らした。


嗚呼、調子が狂う。
女の子には飢えてないはずなのに、
俺は、何かを求めてる。




  ―――何を…?









「千石!!」
「?」




聞き慣れない声に振り向く。
普段ここにはいるはずのない人物がそこにいた。


「あれ、菊丸君じゃないか。部活はどうしたの?」
「今日は、無い…っそれより!」


息を切らす英二。相当の距離を全力疾走してきたのだろう。
何をそこまで急いでいるのか、千石には分からない。


「千石は、好きな人いないのっ?」
「え…?」


急に、何を云い出すのだろう。
何とか息を整えながら、英二は続けた。


「俺は、いないけど…っ大切な子はいるよ」
「…はぁ」
「誰だと思う?」
「…ん〜…誰?」


英二が何を云いたいのか、意図が掴めなかった。




「紗枝ちゃんだよ」




一瞬、頭の中が真っ白になった。
英二は今までのようなヘラヘラした笑顔は見せず、試合をしている時のような真剣な顔で千石を見据えた。
横で太一がオロオロとしている。

考える事が出来るようになった時一番に思ったのが、ああ、そういえば紗枝ちゃんと菊丸君、従姉弟なんだっけ…だった。




「…だから、紗枝ちゃん泣かす奴は、許さない」




きっと、彼は知っているのだろう。

そう察した千石は、太一にどこかへ行くように云ってから、少し人気のない所へ来た。
相変わらず英二の顔は真剣なもの。


「…知ってるんだね、紗枝ちゃんから聞いたの?」
「今さっき」
「…そっか」


少しの沈黙のあと、英二が口を開く。


「…俺…部活あるからあんま紗枝ちゃんとは会えないけど…メールはしてた。千石の話、いっぱい出てきた」

「千石を見かけられたら、一日が素敵な日なんだって。笑顔を見れたら、もっと好きだって思うんだって。…千石は、紗枝ちゃんが初めて好きになった人なんだよ」

「千石と付き合うようになれて、電話かかってきて……凄い、嬉しそうな声してた。幸せなんだろうなってすぐに思った」

「千石の笑顔見れるのが凄く嬉しくて、隣りでそれが見れるのが幸せだったんだって。紗枝ちゃん、千石が影でテニス凄い練習してるの知ってるよ?部活はあんまり熱心にやってないけど、本当は凄い努力家なんだって知ってるよ?」

「他の女の子に…そういう子いたのかよ。紗枝ちゃん程、千石好きだった奴いたのかよ。お前は、幸せ者だよ。凄い愛してもらえてるのに……なのに…」



「…何で…愛すこと返せないんだよ……」



英二が泣きそうだった。


「…愛せないんなら、最初に、断れよ……今よりずっと、傷付かずに済んだよ……」
「……」


紗枝も似たような事を云っていたな、とあの時を思い出す。
今でも鮮明に、叩かれた頬の痛みを思い出せる。


「……菊丸君…俺、本気で好きになるって、よく分からないんだ」
「…?」
「女の子は、可愛くて柔らかくて……そんな存在。みんな、そういう考えしか持たない。誰でも一緒。だから…誰と付き合おうと、別れようと、どうでも良かったんだ」
「……千石、それサイテー…」
「……紗枝ちゃんにも云われた」


英二が少し睨むようにこっちを見てきて、それに苦笑した。


「…でもさ、紗枝ちゃんは…それだけじゃ、なかったかな」
「…え…?」


「……エッチの時のキスって…普通のキスとちょっと違って、俺でもなんか大事なものなんだよなって思ってた。だから…エッチの時はキスしないんだ」
「…なんだよそれ」


英二の声は少し呆れているように聞こえる。
千石は苦笑したまま続ける。



「…けど…紗枝ちゃんには………気づいたらいっぱいキスしてたんだよね」



「…紗枝ちゃんは、他の子みたいに求めなくて…逆に、俺が求めてて」
「……」
「恐くて手が出せない反面…大事にしようって思った反面……触りたいな、って思ってて」
「……紗枝ちゃんが、特別ってこと…?」
「……よく、分かんない。でも…紗枝ちゃんを初めて抱き締めた時……  凄い、温かくてさ」


柔らかい感触。
凄く、温もりがあって。
女を抱き締めて、こんなに心地よくなったこと、なくて


「紗枝ちゃんの笑顔がさ…凄い、輝いて見えて……凄い、可愛くて」

「また見たいなって思ってるんだけど…思うようにいかなくて、紗枝ちゃんは笑わなくなった」

「それが……エッチした時、嬉しそうでさ…―――」





「俺…なんか、紗枝ちゃんの笑顔みたいのに……どうしたら良いか、分かんなくなってきちゃって」





そう云った瞬間、英二が千石の胸倉を掴んできた。
急な行動に千石が目を丸めると、



「一つめ!!千石が紗枝ちゃんの為だけに笑う!!」

「…?」


「二つめ!!紗枝ちゃんだけを見てる!!」





「三つめ!!紗枝ちゃんに『好き』って云う!!!」





「……え…?」
「紗枝ちゃんの笑顔みたいんなら、さっき云った事は最低限でも守ること!!」
「……」


英二は、やがて笑った。















「千石…その気持ちが、『好き』ってことなんだぞ」

























+++++

















「千石清純」


…未だにメモリ消せてないあたしって何だろう。
凄い嫌だ。自分が。
…連絡なんて、来るはずないのにね…馬鹿みたいじゃん、あたし。

英二に忘れるって云ったのに…
全然、吹っ切れてないや……


6時。


…まだ、男テニ部活の練習やってるな……
千石は、また一人で特訓してるんだろうな……




…………。




………だめだ、千石の事ばっか考えてる…








「…?」




ベッドに項垂れてたら、インターホンが鳴ったのに気づく。
今家には誰もいないから、あたしが出るしかない。
怠い体動かして、階段降りて、玄関の重いドアを開けた。


「はーい…」


開けた瞬間、体が硬直した。
そして、開けたドアを静かに閉めた。



「え!?ちょ、紗枝ちゃん!?」



…何で、




何で…千石がいるの…!?





無理。無理無理無理…!
絶対ドア開けられない。顔見れない。
顔見たら、泣くかもしれない。





「…紗枝ちゃん!ドア開けなくて良いからさ、そこで聞いててほしいんだ」
「……?」


何を、今更云うっていうのさ。


「……前は、ごめん。…俺さ、一人の女の子好きになったことなくて…よく分かんなくて」
「……謝りに来たんなら、帰ってよ。もう良いから」
「…帰らないよ」


…何で、よ。


「女の子って、可愛くて柔らかい。……紗枝ちゃんも、それぐらいだったよ。最初は」


…柔らかいって何だ…
下ネタ、いらないし…


「けどさ…紗枝ちゃんは、温かかった。抱き締めた時、凄い心地よかった」


………。


「こんな気持ち、なったことなくてさ……ほんと、気付けなくて…ごめん……」






「紗枝ちゃん、俺と付き合ってよ」






…………は?


「…都合良いんじゃないの!?何それ!!」
「都合良いのは分かってる!!けど…俺、紗枝ちゃんの笑顔見たいんだ!!」
「…?」


笑顔を消したのは、お前の所為だよ馬鹿。


「…紗枝ちゃんとキスしたい。紗枝ちゃんと以外としない。紗枝ちゃん以外とはしたくない。俺…紗枝ちゃんが欲しい」
「……」
「紗枝ちゃんとエッチした時…俺、凄い嬉しくて……いつもは、ただ時の流れの一つとしてっていうか…なんか、何とも思わなかったのに……紗枝ちゃんとなら、ずっとしてたいって思って」
「……」













「紗枝ちゃんが……好き……」














……初めて、聞いた。
千石の声で「好き」って。
何度も何度も、望んだ言葉。

………あたしは、信じていいの?
また、あんな辛い想いしなくていい…?




「!」




ゆっくりと、ドアを開けた。
千石と目が合うと、千石がホッとしたような感じで笑った。
…初めて見る、笑い方。


…でも、あたしの好きな、笑顔だ。



今は、虚しくならないよ―――…



「…デート、してくれる?」
「勿論。紗枝ちゃんの為にいっぱい時間空けとく」
「登下校中、ずっと携帯片手にメールしない?」
「紗枝ちゃんと手繋いで登下校したいかな」
「…他の人と、キスしない?」
「さっきも云ったように、俺は紗枝ちゃんしか見えない」
「……また、そうやって、笑ってくれる?」
「紗枝ちゃんの笑顔見れる為なら、何でもするつもり。何でも出来るつもりだよ」



泣きそう。




「……ねぇ、あたし、信じて…いいの?」
「…うん。信じて」





泣いて、いいよね?





「……あたしも、好き…っ」
「…紗枝、ちゃん」




笑えてる、かな?
あたし、酷い顔してないかな?

千石は苦笑してあたしの涙指で拭って、瞼にキスを落とした。
そう思ったら、額に、鼻に、頬に、色んな所。





最後に、唇。

























「――――…大好き、紗枝ちゃん」











































……うーん、何故だか不完全燃焼。
最初に考えてたストーリーと違う…
最初はヒロインが嫉妬してばっかで、その嫉妬が嫌って千石が云って、別れて…んで、ヒロインと男子仲良くしてるの見て千石が嫉妬する…みたいな感じだったのに。
また別で書こう。
最後…もっと良い感じにしたかったんだけどなぁ…
思った通りの文に出来なかった。文才欲しいorz
英二が出張ってます。相手を英二か千石か迷ったからです。
……長いなこれ。
…えー、千石は、女好きだけど、本気で好きになった子はいないって感じだと思う。こんな小説の感じじゃないかなと思う。
でも付き合ってる子放っておいたりは、しないと思う…
…ああ、俺設定……;


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X i c a