※「ヒカリヘ」夢主
※サブ夢主少し出ます
12月25日
それはキリストの誕生日であり人間も天人も喜ぶイベント、クリスマス。
友達とパーティを開いたり恋人とデートをしたり過ごし方は人様々である。
その日と、その日の前日のイヴは特別な日であった。
ただ、一部を除いては。
「楽しそうですね、みんな…」
「いいなぁ〜ずるいアル。私もケーキ食べてプレゼント貰いたいアルヨ」
窓から歌舞伎町を歩く笑顔の人々を見下ろす新八と神楽。
新八は溜息を吐き、神楽はつまらなそうに酢昆布をくわえていた。
家の掃除をしていた紗枝はそんな二人を見て苦笑いした。
「うっせーよお前ら。そんなの見ても虚しくなるだけだから見るな!」
「銀ちゃ〜ん!私プレゼントいらないからケーキ頂戴ヨ。酢昆布ケーキ」
「何だよ酢昆布ケーキって!!なんかすっごい恐ろしいんですけど!!」
「糖をそんなもんで汚すなァァ!!」
「そんなもんって何ヨ!!」
ギャーギャーといつものように騒ぎ出す三人はいつもの光景。
紗枝もそれにすっかり慣れて一人掃除を再開させた。
「銀さん確かケーキ作れたじゃないですか。たまには役に立ってくださいよ」
「何『たまには』って!俺いっつも役に立ってるでしょーが!」
「立ってないネ。銀ちゃんはまるで駄目な大人略して『マダオ』だからな」
「え、何それ。おい、お前ら、どうしてメシが食えてると思ってんの」
「僕らの精一杯の働きと紗枝さんの家事を全て受け持ってくれてることですかね」
「あーもういいよ!誰がお前らのためにケーキなんか作ってやるかァァ!!ていうかまず材料買う金が無ェんだろうが!!」
そんな会話を聞きながらも紗枝は一人静かに掃除を続けていた。
一通りのいつもの言い争いが終わると、不信に思い皆で紗枝に視線を向ける。
クリスマスにも関わらずいつもと同じ一日を過ごす銀時達とは打って変わって、いつも煩い紗枝が今日は静かだったからだ。
「…紗枝さん?」
「んあ?何ー?」
「具合でも悪いんですか」
「へ。何で」
「今日の紗枝変ヨ」
「そうかな?」
「だって朝も銀さんところの布団入ってなかったし」
「あーそれは昨日仕事が長引いたからだよー」
へらへらと笑って紗枝はまた掃除を再開する。
「……紗枝さん」
「んー?」
「…今日ぐらい、家事しなくていいですよ…」
折角のクリスマスなのに。
紗枝も若いのだから楽しみはいくらでもあるはずなのに。
「あともうちょっとで終わるからさ!あ、あたしのことは気にせずどーぞ!」
「………」
紗枝の笑顔を見てから三人で目をあわす。
調子の狂う三人は一応紗枝の云われた通り思い思いのことをしようとする。
「あ」
そこで紗枝が思い出したように声を出した。
「銀さん、明日暇ですか?」
「あ?何で」
「ちょっと付き合ってほしいんです!」
「やだ」
「えー!!いいじゃないですか!」
「新八連れてけよ、どーせ暇だろ?」
「銀さん少しは動こうよ!!ダラダラダラダラダラダラダラダラと!」
「そうですよ、いつも紗枝さん家事頑張ってくれてるんですから、たまには付き合ってあげたらどうなんですか?」
「何だよいっつもお前は紗枝の味方じゃねーか。何、惚れてんの?惚れてんですかー?」
「なっ!誰がこんな人!!」
「『こんな人』ってどーいう意味」
いつもの調子で銀時が紗枝の誘いを断り続けていると、紗枝も流石に諦めたのかつまらなそうに溜息を吐いた。
「せっかく美味しいケーキ屋さん見つけたのになぁ……いいや、沖田さん誘って行こ」
そのまま掃除を終えて家を出て行こうとする紗枝を銀時が「ちょっと待て」と引きとめた。
それに振り返る紗枝の表情は「してやった」というようなニヤリと笑っている。
(銀さんの扱いになれてきたな、紗枝さんも……)
+++++
「帰りは新八と神楽の分も買って帰りましょうね!!」
「いいって。もったいない」
「何云ってんですか!二人が可哀想です」
二人で並んで歩き紗枝の見つけたという美味しいケーキ屋へ向かう。
周りには同年代のカップルがちらほらと。
「だいたいお前金あんだろーな。俺今日何も持ってきてねーぞ」
「ばっちりですよー!この日のためにあたし頑張って稼いだんですから」
ムフフ、と笑って財布の中身を確認する紗枝を横目に銀時は気付く。
だから一昨日は帰りも遅く夜這いする暇もなかったのだろう。仕事が忙しかったから。
毎日忙しかったら良いのに、と切実に思う銀時だった。
「あ、あれですよ」
紗枝が暫くしてある店を指差す。
その指差す先へと視線を向けると、少し洒落た見覚えの無い店があった。
最近出来たにしては随分客もいる様子。
「銀さん、ここで一つ頼みが」
「?」
「あたしの彼氏のふりをしてください」
そう云って紗枝の指差す先をまた見る。
出入り口の横にある掲示板には、「カップル限定サービス」というように書かれたポスター。
ただ店員に「カップルです」と一言云えばケーキを安く食べれるというのだ。
「やだ」
「えぇ!?」
正直紗枝には予想外な答えだった。
何せ、少し我慢をすればケーキにありつけるのだから。普通に食べるより多く食べれるのだから。
糖を味方にしてまでも、自分は拒否をされてしまったのである。
「…………」
「普通に買うぞ。ほら」
「…………」
紗枝はショックでその場に立ち尽くしていた。
そんな紗枝がいつ動くだろうかとじっと見ている銀時。
紗枝が財布を持っているので、まず彼女が動かなければケーキを食べることは出来ないのである。
「…………銀さん…そんなに、あたしが彼女は嫌でしょうか…?」
「嫌だね」
「…別に、キスしろとか抱きしめろとか手を繋げとか云ってるわけじゃないんですよ…?」
「嫌なもんは嫌」
「…………あたしの、何がそんなに嫌なんですか…っ?」
少し震えている紗枝の声に気付きながらも銀時は答えなかった。
否、答えられなかった。
銀時の脳裏には、かつて愛した女の姿
自分の女はずっと彼女であって、たとえそれが嘘であろうと紗枝を恋人だと云うことは出来なかった。
愛しい彼女を、思い出してしまって辛いばかりだから。
「…………ッもう良いです!!銀さんのバーカ!!」
紗枝は財布を銀時の顔面目掛けて投げつけて走り去ってしまった。
顔面にクリーンヒットした紗枝の財布を手にとり、銀時は一人溜息を吐く。
周りにいた人たちやケーキ屋の店員が驚いてこちらを見る視線が痛い。
「………」
『銀、クリスマスケーキ作ってよ』
『え、何で俺。そこは普通俺のためにミズキが作ってくれるもんじゃねえの?』
『あたし銀のケーキ好き』
『俺は?』
『じゃあ好きってことにしといてあげる』
『え、何それ』
『ほら早く』
『んーご褒美でもあれば作るかねー?』
『例えば?』
『ミズキからのキスとか』
『…じゃあいいよ』
『よし』
『…ゲンキンな奴』
『いらっしゃいませ。二名様でよろしいですか?』
『あ、俺達付き合ってんで。なんか今日それ云うと安くなんでしょ?』
『はい。サービスとしてケーキも差し上げます』
『……銀あげる』
『美味いけど』
『もういいよ…銀のケーキ食べたし』
『んじゃもーらい』
『糖尿病なんないでね』
『どうだろうなァ?』
『それにしても…カップル多いね』
『みんな考えることは同じだな』
『……「あたしたち付き合ってます」なんて、よく云えるねみんな……』
『普通云えるだろ』
『何でよ』
『だって、自分の彼女自慢できるんだぜ?』
『……しなくていーよ』
この時期はあまり好きではない。
思い出すのはあの頃の大好きな日々ばかり。
大好きな笑顔ばかり。
何故、今日なのだろう。
何故、店は同じことばかり考えるのだろう。
何故、クリスマスに「カップル限定サービス」などをやるのだろう。
(…せめて今日じゃなかったら、ケーキのために彼氏役でもなってやったのによ)
銀時は手に持つ紗枝の財布を見る。
これさえあれば、お目当てのケーキを買ってとっとと帰ることも可能なのだが。
「………」
『…………あたしの、何がそんなに嫌なんですか…っ』
「……あのアホ女め」
いつもいつも、へらへら笑ってひっついてきて着いてきて
馬鹿でアホで色気も全くないどうしようもない女なのに
何故、こうも頭から離れないんだろう。
++
「……もうやだ…」
自分が何をしたというのだろう。
頑張って働いて、家事もこなしているというのに。
何故神様はとことん自分を嫌うのだろう。
一瞬だけでも、好きな人の恋人気分になったって良いじゃないか。
紗枝は一人通路の端で膝を抱えて座っていた。
周りには恋人たちばかり。
紗枝にとって嫌な光景のことこの上ない。
「パンツ見えんぞ」
そんな声と共に、遠慮のないチョップをくらった。
頭を押さえながら紗枝は振り向く。
そこには紗枝の財布を片手に銀時が立っていた。
「な…なんですか。ケーキ早く買って帰ればよかったじゃないですか」
「あたしと恋人のふりをするの嫌なんでしょ?」と付け足して紗枝は銀時に顔を背けてまた膝を抱えた。
そんな拗ねている紗枝に銀時は溜息を吐いてまたもチョップ。
「いっ……ちょ、殴んないでください!馬鹿になります!!」
「もう手遅れだから大丈夫だって」
「全然大丈夫じゃないっすよそれ!!」
銀時をひと睨みしてから、また顔を背ける。
「銀さんは優しいんだよ」
「何急に云ってんですか。優しさの一欠けらもあたしには見えないんですけど」
銀時は紗枝の後ろでしゃがんで続ける。
「…ま、最近家事とか頑張ってたからなァ……銀さんがクリスマスプレゼントやる」
「……へ…?」
振り向いた紗枝と視線が合うと、銀時は微かに笑みを浮かべて立ち上がる。
そして紗枝の前に来ると、すっと手を差し伸べた。
「おら、彼氏役でもなんでもなってやるよ」
「―――――」
大きな目を更に開いて呆然としている紗枝に銀時は手をひっこめることなく続ける。
「『カップル限定サービス』やるんだろ?」
「…………」
「…そうかやりたくないんだな」
「わーー!!やりますやります!!是非やらせてください!!!」
手をひっこめて歩き出そうとする銀時を引き止める紗枝。
それに銀時は「ったくよォ」と本心ではない悪態をつきながらすっと自然に紗枝の手を握った。
「……っ」
予想外すぎて、心臓が跳ねる。
歩き出す銀時についていくように紗枝も歩を進める。
(…こんなでも、恋人に見えたりするのかな)
否、それよりも
『…別に、キスしろとか抱きしめろとか手を繋げとか云ってるわけじゃないんですよ…?』
(………手、握らなくても、よかったのに……)
銀時から、握ってくれた。
「……………えへへぇ」
「キモイ」
「無理ですーあたし嬉しすぎて死ねますー」
「じゃあ死んでこい」
僕からのX'mas present
(……悪ぃな、ミズキ。ちょっとだけだからよ――――…)
(え?何か云いました?)
(何、頭が腐りすぎてとうとう幻聴が聞こえたか?)
銀さんは雪が似合うよな、と友と話した。高杉は紅葉が似合うよな、とも。(めっさどうでもいい話)
「First Say You」と似た感じがするのは気のせいじゃない。
でも…二人はこういう関係なんで。はい。
銀さんは一見ヒロインに冷たいんですけど、本当は結構大切に思ってたりとかね。
銀さんはこのとき…ヒロインが好きなのか………微妙なとこだ。うーん。
まぁ、みなさんのご想像にお任せします(おい)