「副長」





呼んでも、返事はなかった。
聞こえてくるのは、ボリボリと激辛せんべいを食べる音と少しの嗚咽だけ。


こんなに泣いた副長は、初めて見た。



プライド高くて強がりで、結構馬鹿なマヨラーで
それでも沢山の隊士をまとめる程の力を持ってる そんな、あたしらの副長。
自分でいうのも何だけど、まぁまぁ仲がいいと思ってた。
局長に気に入られて、総悟といたずらを一緒にしあう友達になって
それで、言い争いは多いけど、何だかんだであたしのことも信用してくれてた副長。



知らなかったよ、そんな副長に好きな人がいたなんて



いっつもいっつも剣振るってて全く女に興味なさげだったから、
あたしちょっと、安心してたのに



「………」



あたしは真選組が出来てから入隊したから、副長達がどんな生活をしていたかも、ミツバさんのことも知らなかった。
…あたしは、総悟にも局長にも 副長にも、肝心なことを教えてもらえてなかったんだ。




あたしだって、泣きたいよ




副長は、自分がミツバさんを好きでもいつ死ぬか分からないから、だからわざわざフって、素っ気無い態度をとってたんでしょ。
それじゃあたしは、本当に好きになってもらうどころか 女としてさえ思われてないんじゃないの?

隊に入れば、副長の側にいれると思ってたのになぁ――


副長、まだミツバさんが好き?


あたしは、副長が好きだよ。



あたしがいるにも関わらず(ていうか、万事屋の銀さんも後ろに多分いるんだけど)まだ泣き続けてる副長の背中がいつもと違って随分小さく見えた。
…そんな背中を、抱きしめたいって思うあたしは、きっと重傷。
それだけ副長を好きになってたのも、知ってたよ。



「…副長」
「こっち、来んな…っ」



副長のところに行こうとしたら、止められた。





「…今の俺、格好悪ィから…!」




普段じゃ絶対聞けない、くぐもった声。



「………いや、普段からそんな…格好良いわけじゃないっすし…大丈夫ですよ、マヨラーって時点で格好悪いんで」
「てめ、マヨなめんじゃねェ…!」


マヨより、あなたをナメてます。(絶対総悟といるから影響受けてるなあたし)


「……泣いてるのが格好悪いってのは、違いますから」
「……」


あたしは、ミツバさんをたとえ好きでも、あなたを好きでいられる自信がある。
あなた以外、考えられないんだ。


「泣こうが、惚れてた女がいたとか意外すぎる事実があろうが、副長は副長なんだし」





「だから そっち行って、いいですか」





副長はまた何も云わなかった。
拒否されなかったのを良いことに、あたしはゆっくりと歩いて近づく。
副長の顔は見ないで、横にきてフェンスに寄りかかった。


「弱味にしたりしないんで、思いっきり泣いちゃっていいですよ」
「………っ」


総悟なら、しそうだな。
でも、総悟も今は 泣いてんだろうな。



「……俺」
「?」
「好きな女には、幸せになってほしかったんだ」
「………」
「どこかで笑ってくれれば、それでいいと思ってたんだ」
「…さいですか」


何で、ミツバさんの話するかな。
ああ、きっとこの人あたしが惚れてるって知らないんだ。うん、絶対そうだ。
鈍感だよ、絶対。



「………何でテメェが泣いてんだよ」

「……っ泣いてないです」



もうやだ。
この鈍感な人を好きになったせいで、どんどん辛くなるよ。
それでも嫌いになれないなんて、何やってんだろあたし。


「………」


フェンスに置いてた腕に顔を埋めてたら、不意に頭に掌がのせられた。
吃驚するけど、頭を上げられないように凄い力込められて副長を見れなかった。


「……アイツと離れてから…俺のことを忘れてほしいと思う反面、側に置いておきたい気持ちになった」
「…」


やめて。


「ずっと笑顔見ててぇと思った」


ミツバさんのこと、話さないで。




「…俺は、喧嘩が好きだし」


「こういう役職で、喧嘩の時は最前線にいるから、いつ死んでもおかしくねェ」


「剣振ってばっかで相手にどうしてやったら喜ぶかもいまいち分かんねェ」





「それでも、好きな女には、側にいてほしいって、思っちまうんだよ」





分かったから。


分かったから、もうやめてよ。






「幸せに出来るか、分かんねェけど、」







「俺の我儘に、付き合ってくんねェか」









…………。




「………は?」


「絶対守るから。お前より先に死ぬかもしんねェけど、俺が死んでからいくらでも男作ったって構わねェから。  だから、俺が生きてる時だけでも、俺の側で笑っててくれ」
「………」
「もう  こんな後悔、したくねェんだよ」
「…………」
「勝手なこと云ってんのは、分かってる」





「……………………」





「………何か云え」


いつもの、怒ったような副長の声。


「………え、副長 それ、どういう意味?」
「そのままの意味だ」
「…ごめ、あたし馬鹿だから…分かんないよ」
「……テメェが馬鹿なのは知ってる」
「じゃあ、もっと分かり易く云って、くだ さい」
「…………」


「…やだ、絶対云わねェ。自分で考えろ」
「えー!」


まだ頭には副長の大きな掌。
心臓がどきどきと煩い。
ねえ、期待していい?いいのかな?
あたしの思ったとおりで、いいのかな?副長の云いたいことって、そういうことなの?

副長は今、どんな顔してるのかな。



「……副長」
「…あ?」
















是非、付き合わせてください。

(その、我儘)








「ちょっとちょっと、あいつら俺のこと完全に忘れてるよね?絶対忘れてるよね?銀さんが弱味にしちゃうぞコノヤロー」

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