「さぁーむぅーいぃー!」
叫んだって、どうしようもないんだけどさ。
勿論分かってんだけど、それでもやっぱり叫ばずにはいられない。
身体が震えてしょうがない。
歯もガチガチいっちゃって止まらない。
あぁ、だから冬って嫌いなんだ。
布団にずっと入ってられるんなら話は別だけど。
「身体動かしたら暖かくなんぜ!お前も滑れよ!!」
楽しそうに白い大きな坂を滑ってきたホロホロを見上げる。
こいつ、自分がスノボできるからって。
そうか、そうやって運動神経のないあたしに見せびらかしてるんだな、そうなんだな。
なんて憎たらしい奴なんだ。一発殴っていいかな。
「滑れてたら苦労しないね!!クソバカ!!死ね!死ねばいいのにバカホロ!」
「てめっ…云いすぎだ人がせっかくスノボの楽しさ教えてやろうと思ったのによ!!」
「楽しい!?修羅場ですよ修羅場!!」
うわ、周りの人に何事かと見られてるよ。
恥ずかしい…いつもの癖(ホロホロとの口喧嘩)だけど人前ではやめとこう。絶対迷惑だよね。
「もういいよ…ホロホロ一人で行ってきなよ。あたしボーッとしてる」
「スキー場でボーッとしてる奴なんていねぇよ」
「ここにいますぅー。滑れないんだからどうしようもないじゃんかアーホ」
「じゃあほら、俺が教えてやるから」
やだよ、恥ずかしいじゃんか。
「いいってば…。行ってらっさい、あたしのこと構わなくていいからさ」
あぁもう、ほんと、冬なんて大っ嫌い。
ホロホロは北海道から来たしそりゃ何か故郷思い出すから好きかもしれないけど。
寒さにも慣れてるだろうからホロホロは平気だろうけど。
あたしは、都会もんだし。
暖房あるところでのんびりしてばっかだったんだから急に真っ白な世界に連れて来られたら、寒すぎて凍死するかと思ったよ。(そりゃ、最初ははしゃいでたけど…)
「………」
ホロホロは静かになったかと思えば、あたしの前で腰をおろした。
スノボはつけたまま。
「俺はだなぁ…」
「…何さ」
頬をポリポリと掻いて視線を逸らすホロホロ。
じれったい…でもとりあえず我慢して待ってみる。
「お前と、スノボやりに来たんだよ」
「だから一人で滑ってたらいつもと同じで意味無ェの!」
後半自棄くそになって云い切ったホロホロの顔は、さっきと違って赤く染まってた。
寒い、からなのかな。
何だかな、こいつ。可愛い奴だ。
「……えー、じゃあ教わってあげよっかなー」
ニヤリと笑って云ってみるとホロホロは納得のいかなそうな顔をした。
「教わるくせに何偉そうなんだ」って思ってる。絶対。
ホロホロに手を引かれてゆっくりと立ち上がる。
滑ってこけないか不安だからやっぱホロホロにしがみつく形になって。
何か自分情けないなぁ。
早くまともに滑れるようになりたくて、ちょっと真面目に教わったり。
また手を握られ、一緒に坂を自力で登っていく。
今度はさっきよりも高いところに行くみたい。うわぁ……。
まぁいざとなったらホロホロになんとかしてもらおう。しょうがない、うん。だってあたしは運動神経がない女なんだから!
「どうだ!?お前もスノボの良さが分かったか!?」
「…………まぁ…ちょっと楽しいかも…」
悔しい、けど。
ホロホロはあたしの答えに「だろ!?」と嬉しそうに笑った。
…何だか、コイツの笑顔を見ちゃうと何もかもどうでもよくなっちゃうんだよね。何でだろ。(コイツの笑顔が、好きだからなんだろうな)
「……あのね、ホロホロ」
「んあ?」
「あたしさ、ホロホロがスノボしてるの見るのも好きなんだよね」
顔を赤くして君は「バカ」と云った。
君となら嫌いな冬も好きになれるよ