「好きです!!」




急に告白をされた。
本当に、急に。

目の前にいるのは多分クラスメイトの、遠くの席にいる女子。名前は知らない。
顔を真っ赤にして、真っ直ぐと俺を見てた。
高校生の女子にしては珍しく、化粧もしない香水もつけない、飾り気無し色気無し でも自然体な、そんな感じの人だった。


「…ごめんなさい」


俺は化粧とかの匂いで酔うから、女子は苦手だった。
この人は何もしてないけど、名前も知らない今まで興味も全く無かったそんな子を簡単に彼女にするような軽い男でもない。というか、本当に女子には興味ない。


「うああああ…やっぱりそうっすよね急ですんまっせん引かないでくださいねホント馬鹿なんですけど」


がっくりした様子のこの人を見ながらやっぱ顔なのかな、と思った。
近寄ってくるのはみんな俺の顔が良いみたいで。


「あの、ただ伝えたかっただけなんですよ付き合おうなんてね、無理だってわかってたんですよ勿論!ただね、あなたの茶道やってる時の姿っていうか茶道室で会った時にですね、」
「………茶道?」


茶道って、


「…俺の名前知ってます?」
「へ?浅羽悠太君でしょ」
「………」


この人きっと、馬鹿なんだろうな。


「…祐希です」
「………………」


とてもアホな顔をした。(あ、なんかこの子面白いかも)





「……うそん!?」





目を丸めて大きな声を出して驚いて、それから暫くして顔を真っ赤にさせた。
今度は恥ずかしくて、だろうな、うん。


「え、ちょ、じゃああたし…えぇ!?人違いしてたの!?あれ、あたしのクラスにいるのは浅羽悠太君!?」
「それも俺ですね」
「あたし好きな人の双子の弟を毎日見てたの!?」


あ、毎日感じる視線はこの子が原因か。
本当に馬鹿で、アホなんだな。面白いけど。


「えー!?じゃあ本物は何処!?」
「隣りのクラス」
「マジっすか!!ややこしいなぁ!ていうかあたし…恥さらしぃ!!やば、馬鹿発揮しすぎじゃねあたし!」
「そうですね」
「フォローしてよう!!」


なんだか泣きそう。
真っ赤になったり落ち込んだりアホな顔したり焦ったり泣きそうになったり…ころころと表情が変わる。
俺とは、大違い。


「あああぁぁああ……あたしなんでこんな馬鹿なんだろう…うわぁ穴があったら入りたい状態だ。恥ずかしくて死ねる」


頭を抱えてるんでとりあえずじっと見ててみる。
そしたら「あたしを見ないで!」と云われた。そんな彼女を見るのが、また面白い。
珍しいな、こうやって人に興味持つの。


「隣りのクラス行って同じこともう一回云ってきたらどうですか」
「ねえあたしが今の告白にどれだけの勇気を振り絞ったと思う?もうあたしにはそんな勇気ありません…第一見込みがない」
「好きって、伝えたかったんでしょ?」
「いや、そうなんだけど…やっぱり今断られてさ、結構ショックだったわけでさ…本人前だと泣きそうだ」


今度は、静かになってその場にしゃがんだ。
さっきみたいな煩い声もなくなって沈んでる。


「今は泣かなかったのに?」
「今も頑張って泣くの抑えてました」
「そうですか」


悠太は人のことよく見てるから、絶対気付くだろうな。
俺は、ただがっくりしたようにしか見えなかったけど。


「当たって砕けてきなよ。俺が慰めてあげるから」
「マジですか」
「嘘」
「…うわぁ腹立つ〜」















「――――と!」




「――ちょっと!」





「すんません!!」









ばし、と頭を叩かれた。あまり痛くはなかったけどその声に目も覚めた。
屋上にいる。ああ、今のは夢か。


「…何」


俺を起こした張本人を見上げてまだ掠れてる声で簡潔に訪ねた。
今日の彼女は、いつもと違って何だか改まって俺の前に正座した。






「好きです!!」






…………。





俺は前にもこんなことが起きたのを覚えてる。
というより、今さっきまで夢で見ていた。
何であんな夢見たのか分からなかったけど、今の状況で分かった気がする。



「…俺の名前知ってます?」



あの時…初めて、彼女と話して 興味を持ったあの日と同じように、聞き返した。
この馬鹿でアホな子は、俺を悠太と間違えて告白をした。
今はもうちゃんと見分けが出来るはず。そう思ってたんだけど俺の勘違いだったらしい。
まだ、区別できてなかったんだ。

やっぱり彼女は馬鹿だ。
まだ俺と悠太の区別は出来てない。
そしてきっと、俺が彼女を好きなことも。

自分の勘違いの告白で、俺が傷ついてるなんて、全く分かってないんだろうな。




「浅羽祐希」




「…!」


柄にもなく、目を開いて彼女を見た。
真っ直ぐとした目で俺を見てた。
あの時、みたいに。



この子は馬鹿だ。



だから嘘を吐いたら、すぐにバレてた。
俺も、すぐに見抜いた。

いつもこっちを見ようとしないで目が泳いでて、しどろもどろになる。
いつもと様子のおかしい状態だって分かれば、もうそれは完全に嘘を吐いてる時。




「………すんません、反応をください」



混乱してた俺の心なんて知りもしないで、顔を真っ赤にさせて俯いた。
最初はこうやって表情が変わることが、面白いって思ってたんだけど、今は普通に可愛いな とか思った。(らしくない、な、俺)


「………ちょ、浅羽祐希?あの、頭壊れました?え、シカト?聞こえてる?あたし見えてる?」


今度は戸惑って俺の前で手を振ってみる。
俺はその手を掴んで、引き寄せた。





「俺も、好きです」





目の前でそう云ってから、一瞬だけ唇に触れた。
柔らかい感触に、ほっとするような温もり。



見れば、彼女は顔を真っ赤にしながらも、嬉しそうに笑った。




















それは俺に向けた、俺だけの笑顔


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