※「Blue eyes」夢主
「ねぇ、チョコって食べる?」
あたしが聞いてみると三蔵はこっちに視線も向けず新聞を見ながら機嫌の悪そうな低い声で答える。
「食うように見えるか」
「全っ然。寧ろ食べてたら気持ち悪い」
腐れ生臭坊主がチョコとか
気持ち悪くて引いたあと悟空と悟浄と一緒に笑うと思う。
「フン」
怒らなかったからやっぱチョコ食べないんだ。
まぁ甘いの好きには見えないしね。
「じゃあ三蔵のはいっか」
「…何の話だ」
「チョコ」
「何故チョコ」
「バレンタインだから」
「…………」
そのまま三蔵は黙ったのであたしは無言で手を差し出した。
それに相変わらずの目つきの悪さで見上げてくる。
「カード貸して。チョコの材料買ってくるから」
「…そんなくだらねぇもんに使うな」
「前挑発にのって店の酒買い占めた奴が云わないでくんない」
「……」
「いいじゃん、そんな高いの買うわけじゃないんだから」
紫の瞳が逸らされ新聞に戻った。
何これ、そのまま無視するって寸法?
なんて奴だ、腐れ生臭坊主に今度からケチをくっつけてやろう。
ケチな腐れ生臭坊主…ゴロ悪いけどまぁ気にしない。
「悟空とか楽しみにしてんだよね、今更無いとか云えないじゃん」
「………」
「それともアンタ、本当は欲しいの?」
「違ェ!」
声を荒げてこちらを睨むケチな腐れ生臭坊主に内心で笑う。
最年長であたしと同い年だけど、絶対この人はからかいがいのある一人だ。
「甘いもんは好かんと云ってるだろうが」
「あたしには強がりに聞こえるけどね」
「…てめぇ」
面白い人。
クールぶってるくせに案外熱くて、からかわれると予想通りの反応を見せてくれて
こういうの見るのが好きだから、あたしはこの人といるのが…好きなのかな。
「とにかくカード頂戴。準備だってあるんだからさ」
「……」
改めて手を差し出すと、腐れ生臭…なんか飽きたな、三蔵は渋々と懐に手を突っ込んだ。
そして出した手には金色に輝くカード。
それを受け取ろうと手を伸ばすと、カードが姿を消して腕を掴まれてしまった。
「!?」
グイッと腕を引っ張られて驚いて目を開くと、
「――――」
三蔵が、口付けてきた。
「…な……」
「…前も云ったろう。俺をからかうとろくなことがないとな」
驚いたままのあたしに、目の前で整った顔でニヤリと笑われた。
……あー、やっぱさっきの無し。コイツからかうのは確かに面白いけど一緒にいるのは好きじゃない。無し無し。
「…むっつりスケベ」
「あぁ?」
眉を寄せる三蔵からカードを奪い取ってあたしはさっさと部屋を出た。
よし、決めた。嫌がらせで三蔵には一番大きい甘ったるいチョコ作ってやろう。