※「ハルカナ約束」夢主





「貰って、くれますか…?」




スッと差し出されたそれを見てから、相手を見る。
顔を真っ赤に染めている彼を見るのは、面白いと思う。


「…何、これ」
「えっと、その…チョコです」


気付けば口調が敬語になってる。
敬語やめていいかって聞いたのはそっちじゃないっけ。まぁ、どっちでもいいけど。


「何でチョコ」
「ファイさんが、今日はバレンタインだって云ってて…」


…あぁ、そんな日もあったっけ。
でも僕が知ってるバレンタインを思い出すと、彼が僕にチョコをやるのは道理が合わない。


「…バレンタインが何か、知ってる?」
「え?感謝の意をこめてチョコをあげる日じゃ…」
「………」


世に云う、義理チョコみたいなものなのか。
義理チョコなのにこの人顔赤くしてるんだ。

きっと本当のバレンタインを知らないんだろうな、この様子だと。


「吃驚した。告白してるのかと思った」
「…………え!?」


チョコを受け取りそう呟く。
あぁ、本当にからかいがいのある人。顔が更に赤くなった。


「な、何云って…!」
「バレンタインって、普通好きな人にチョコあげる日」
「!?」
「変とは云わないけど、男からチョコあげるのも珍しい」
「……!!」


真実を云うと言葉を失って固まっていた。
それを拝みながら僕は貰ったチョコを食べる。ちょっと苦味のある、甘すぎないチョコ。
僕の好み、ちゃんと分かってるんだな。


「あの、その…ッ!これは…!!」
「姫に本命あげれば?」
「…!!!」


本当に、面白い人。

魔法使いにも、そうやってからかわれてるんだろうな。
誰でもからかいがいがある奴って、思う。

今もし僕が表情を変えられてたなら、きっとニヤリって感じに笑ってると思う。




「ありがと」




……表情を変えられたら、今、笑ってお礼を云ってるんだけどな。


「…いえ…そんな」
「お返しは今度ね」
「お返し?」
「うん」


ホワイトデー。一ヵ月後とか云っても時間の流れが世界によって違うみたいだから、正確には分からないけど。
だったら僕も、君と同じように感謝の意をこめてクッキーでもあげる。




「お返しは、自分もあなたが好きですって意味になるんだよ」
「……!!」


「え、それって…!」
「冗談だけどね」
「……!!!」


…君は優しいね。
僕が冗談云おうと怒りもしないんだから。


その優しさで僕は救われた。
こうやってまた冗談云うようになったのも、君のおかげだから。
塞ぎこむ僕を支えてくれて、受け入れてくれた君。


「…ありがとう」
「え…」




ありがとう、小狼



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