「ふーん、海にねぇ」
「そうだ、俺はッ、決めたんだ…!」
「そっか」
イオは後頭部に腕を回して前を歩くウソップを見ながら呟く。
一方のウソップはどうやら海賊になるため海に出るらしく、自分より数倍大きな荷物を背負い、引きずりながら何とか前に進んでいるという感じだった。向かう先は海。海まではこの長い長い坂道を下っていかなければならないのに。
分速数メートルが良い所だろう。
見ているこっちが重い。
「…ていうかそれ重くない?」
「うる、せぇよ!」
「それ全部必要?何かダーツとか目に入ったんだけど」
「ひつよ、う、だッ!」
「……」
馬鹿みたい。
内心で呟いた。
海賊になるというのならダーツなんて必要なのだろうか。食糧とある程度の金があれば何とかなると思うのだが。
「……イオ、」
「んー?」
「お前、よ、よく俺のこと、信じたなッ」
「は?」
「俺、が!海賊来るって、云った時」
いつも信じないで、鼻で笑うくせに。
そう付け足したウソップにイオは一度目をパチクリとさせた。
ウソップはこちらを見ようとはせずただただ歩き続ける。
そうだ。今回ウソップが海に出ようと決心することになっただろう事件。
本当に海賊…クロネコ海賊団がこの村を襲おうとしたのだった。
そしてウソップはクロネコ海賊団が襲ってくる前日、怪我を負い、涙を流しながら家に駆け込んできて、「海賊が来る!!」と大声を出したのだった。
最初は驚いたが、すぐにウソップの言葉を信じてとりあえず家を出て避難はした。
まぁ結局ウソップと、人が良い海賊がクロネコ海賊団を倒してくれて村はいつも通り平和…こちらにまで被害は無かったのだが。
「……だってウソップ嘘下手じゃん」
「何だとお前ーー!!」
必死に歩いていたウソップがその言葉で怒りながら振り向いた。
振り向いたウソップは、そのままイオを見て目を開いてしまう。
「分かるよ、ウソップのことはさ。何年付き合ってきたと思ってんの」
「あんな必死な顔ウソップじゃ作れないからね。本当なんだって思った」
イオはとても優しい表情でいた。
幼い頃からの付き合いであるイオのこんな表情は、ウソップでも初めて見るものだった。
「私に危険を教えてくれようとしたんだから、それを信じないわけがないでしょ」
――…昔からそうだ。イオには敵わなかった。
頭もそこそこ良いし、女なのに男の自分と張り合う程運動神経が良くて、顔も良くて、度胸があって、嘘も簡単に見破って
何度彼女を騙そうと思っただろうか。数え切れない。騙せた数は未だに0だけど イオになら、それで良いかと思えた。
イオは、自分自身を見てくれていたから。
「……イオ、」
「んー?」
「お前…格好良いな」
「ウソップはヘタレだね」
「ほっとけよ!!」
例え彼女と出会えるのが最後だろうと、二人の雰囲気はいつものままだった。
だからこそ、イオは格好良いと思う。別れを悲しまないあたり、なんて男らしいのだろう。
「…イオ、」
「さっきから何、何度も人の事呼んでさー…」
「俺、幼馴染がお前で良かったよ。ありがとう、元気でな」
ウソップは云うと、イオの返事も聞かずにまたゆっくりと歩き出した。
イオは暫く呆然としている。ウソップの言葉が頭の中で何度も流れた。
「……」
そして、不満そうな顔をする。
早歩きで簡単にウソップに追いつくと、荷物を掴んでウソップを止めてやる。
振り向いたウソップに溜息交じりでイオが口を開いた。
「なーに会うのが最後みたいな云い方してんの。行くからにゃ『帰ってくる!』ぐらいの意気込みで行け。のたれ死んだら呪ってやるからな」
「…お前だと本当にやりそうで怖ェよ」
「でしょ?なら他に私に云う事あるんじゃなくて?」
ニヤリ、とイオが笑った。
「………」
あぁ、やっぱりお前男らしいよ。俺より格好良い。
ウソップは内心でそう呟くと、笑みを零して、
「――…行ってきます」
「よし!行ってこい!」
イオもニッと満足げに笑い、お互いに笑顔で気持ちの良い出発、のはずだったのに…
イオは荷物を思い切り蹴っ飛ばしウソップを坂道へ転がしたのだった。
「さよなら」なんて云わない
(何でだよ!!?いっつもいっつも何でアイツはまともな別れ方が出来ねェんだよ!!)(文句があるなら海から戻ってから聞いてやろうじゃないのさ!)
またも走り書きw
ワンピの3、4巻ちょっと読んでパッと浮かんだのでね。
ホント…あれだね、イソップ物語だね(当たり前)