終わりを知らないいつかでいたい


 些か耳触りな、けれどもう随分と耳慣れた電子音にふと意識が覚醒した。アラームではない。そもそも設定していないし、何よりまだカーテンから光も差し込まないような時間である。ということは多分枕元のサイドテーブルの上に置いてある通信端末からだろう。億劫だなと思いつつも隣にある温い体温をやんわり退けながら少々気怠い身を起こして音源を手に取る。そこで初めてその端末の持ち主が自分ではなく、この耳触りな音など何も聞こえませんとでも言うようにすやすやと隣で眠る男のものだと気付いてため息を吐いた。

「かがり、…かーがーり、」

 んん、と軽く唸って甘えるようにこちらに身を寄せる動作は正直猫のようで可愛い、ので、ついその鮮やかな色合いの髪に指を通してしまったのだが。一度途切れた電子音が間をおかず響き始めたのでその手でそのままそいつの額をぺしりと叩いた。着信相手が着信相手なので当人がいないにもかかわらず怒られた気分だ。

「縢ってば」
「んー…なーに……」
「宜野座さんから連絡。早く出ないと」
「……、おはよ」
「おはよ」

 とても嫌そうな顔をしたことには突っ込まないでおいてやる優しさを持ち合わせている。
 縢は体を起こしてなまえから端末を受け取ると少しばかり身を引きつつ着信に応答した。

『出るのが遅い!!』
「っうわ、すいません」
『緊急招集だ、さっさと来い』

 予想通りの第一声に忍び笑いをもらしながらベッドを出る縢はまだ少し眠そうだ。軽く身嗜みを整えながら宜野座といくつか言葉を交わしている縢を眺めつつ自分はもう少し微睡みを堪能しようとなまえは布団に潜り込む。ふわ、と欠伸をもらすといつの間に宜野座との通話を終えたのか縢に恨めしそうに睨まれた。
 優越感を多分に含んだ笑みを浮かべて見返せば分かりやすく悔しがっている。思わず口元が自然に緩んだ。

「今から行くの?」
「ん」
「そう」

 べりっと顔から布団が剥がされて唇に一瞬触れるだけのキスが落とされる。離れる前に縢の右手の指を軽く絡めるとなまえはそっと微笑んだ。

「いってらっしゃい。気をつけて」
「ん。いってきます」

 絡めた指をするりと抜いて縢が部屋を出るまでじっとその背中を見つめる。ばたん、とドアが閉まる音を聞いて待つだけの時間ができる限り早く過ぎ去るようにと、なまえは目を瞑って再度布団に潜り込んだ。

181028


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