取るに足らないほど、ちいさなものだった。彼は生まれてこのかた、少なくとも物心ついたその日から指先が凍えてしまうほど冷たく、手のひらがすりきれてしまうほど硬いものしかその手に与えられてはこなかったので、あたたかくてやわらかなそれをどうすればよいのか、彼にはとんと見当がつかなかったのだ。
安全装置を抜き──ときにはその行程すら必要はなかったけれど──、両手を添え、指をかけて、引き金を引く。
重心を下げて、柄をしっかりと握り、ためらいなく振り下ろして、できるだけ乱暴に刃を回して、勢いよく引き抜く。
彼の小さな手にはまだ有り余るほどの銃の扱い方も、お日さまの当たらない場所で濁った光を反射させるナイフの扱い方も、彼は知っていたのに。無防備に彼の手のひらに預けられたちいさなぬくみを扱うすべだけはどうやっても思い出せずに途方にくれて、決して大きくない彼のそれよりもまだ随分と小さなてのひらをただじっと見つめ、彼はなにかを堪えるようにきゅっと奥歯を噛みしめた。
(190128)
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