「かわいそうな柊くん」
六道骸は歌うように軽やかに、いっそ優しげなほどの声音でそう言って、カツンと靴音を響かせた。一対の色の異なる宝石はにんまりと弧を描いて俺を見上げる。どろりと濁った光を反射するそれを薄気味悪く思って、俺は唇の端を引きつらせた。
「あれだけ尽くしてきたのに。努力してきたのに。あれだけ優しくしてやったのに。君は選ばれなかった。君は報われなかった」
「……何の話だ」
自分で想定しているよりもずっと低い声が出たことに俺はぎくりと肩を強張らせて、口元をはっと手のひらで押さえる。
六道骸は滑稽だとでも言いたげにそんな俺を見て嗤い、もう一度大きく靴音を鳴らした。
「誤魔化さなくて構いませんよ。僕にはすべて分かりますから。悲しいでしょう? 悔しいでしょう? 羨ましくて、恨めしくて、しかたがないんですよね」
「……っ、だから、何の、」
「君は選ばれなかったから。沢田綱吉の『とくべつ』に、君はなれなかったから」
すぅ、と背筋に冷気が落ちた。そう感じたのは全身から一気に血の気が引けたからだと、俺がそのことに気付いたのは数秒止まった息を吸うために開いた唇がわずかに震えてからだった。
(190210)
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