空気最悪チームで挑む特異点攻略


※死ぬほど仲の悪い人たちが仲悪いままわやわやしてる話。地味にオベロンの真名バレ。




 現代にほど近い年代に発生した特異点へのレイシフトを行うことになりメンバーの最後の一人を連れて管制室に入室した悠乃は管制室の異様に張り詰めた空気感に全てを悟った。
「わあ〜〜〜最悪の空気だね〜〜〜〜〜」
「言葉と表情の乖離がすごいよマスターちゃん」
 そう言われてもここまでどうしようもないと人間はもう笑うしかなくなるのである。そして気まずげながらも場を和ませようと口を挟んでくれた斎藤には大変悪いのだが、この空気に最も貢献しているサーヴァントにここでもう一つ特大級の地雷を悠乃は放り投げようとしている。
「えーと、それで最後のメンバーね」
「はぁ〜い。ご紹介に預かりました今回のレイシフトに同行するメンバーの一人、『光の』コヤンスカヤです♡」
「……は?」
 多分管制室の温度が二度くらい下がった。まずい、ただでさえ端の方で様子を伺っていたゴルドルフがいよいよこちらを見なくなってしまった。
「あんなのがいるだけでも最悪なのにさらにソレ連れて行動しろって? もしかしてきみ、喧嘩売ってたりする?」
 カルデアに召喚されて以来最悪の機嫌で以て「あんなの」でちらと視界の端にマーリンを映し、「ソレ」で据わりきった視線を悠乃の後ろに向けたオベロンはそれはもう驚くほど素敵な笑顔で悠乃の胸ぐらを掴み上げる。大丈夫だ、この展開は大体想像通りである。
「わ、私が、というか、その、トリスメギストスの予測データがあって……結構大きな特異点みたいだから、慎重には慎重を期すべきと判断を」
「そ、そそそうなのだよオベロン・ヴォーティガーン! 何もこれは悠乃の意思による選出というわけではなくてだね……!」
「あ?」
「ヒィッ」
「がんばれーゴルドルフくん!」
「負けるなーゴルドルフくん!」
「そこなマーリンも技術顧問も茶化しとる場合かね!?」
 微妙に気が削がれるやり取りに毒気が抜けたのか、オベロンは特大音量の舌打ちをして――やっぱり毒気は抜けていないかもしれない――悠乃の襟元を唐突に離した。わずかにたたらを踏む悠乃にオベロンは微塵も隠す気のない顰めっ面で吐き捨てる。
「アレとソレを処分するか俺と縁を切るか選べ」
「どっちも嫌!」
「本当にクソだなきみ」

  *

 そんなやり取りが琴線に触れたのかどうかは分からないが大人しく(?)四者四様にレイシフトに同行してくれることとなった。直前に「よくもまあああも真っ向勝負で行くね」と斎藤に感心されたが、案外ゴリ押せば何とかなるのだと悠乃は経験で知っている。
 今回は不備もなく座標通りの場所に降り立てた。
「ちょっとエリアが広いから手分けして情報収集するよ。ざっくり東西南北で分けて……」
「マスターはどのエリアを?」
「私は……魔力反応が一番高い北かな」
「ではわたくしがお供いたしますわマスター。女同士の方が気兼ねないでしょうし」
「いやいやいや、ここは悠乃くんと一番付き合いの長い私が適任だよ。ほら、グランドキャスターだし?」
「お付きなら白兵戦のできる僕が適任でしょ。護衛の経験もありますし」
「どいつもこいつも信用できないから相対的に俺が一番マシ」
 信用の話をするならマーリン以外は自分を一度は殺しに来ているのでマーリンが圧勝している。どうするんだという四つの視線を受けて悠乃は言葉を飲み込むとカルデアとの通信を確認しながら口を開く。
「じゃんけん」
 どうでもいいから早くしてほしかった。ちなみにじゃんけんはコヤンスカヤが勝った。


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