パンッと拍手の音が響きわたる高台にあるとある神を祀った神社。

ーアマテラス大神に畏み、畏み申す

高台にあるため、そこからは海と空が見渡せる。
漆黒の闇に染まる空。
その色に同調するかのような海。
二つが合わさる境目に一つの光がこぼれる。

ーその太陽の光を…我らの国に…

その光は時間と共にゆっくりと大きくなり、漆黒の闇に覆われていた空と海に色が付き始める。

ー光明を与え給え

光を発する太陽は今日も日出国を明るく照らすのだ。
真言を唱えた人物はキラキラと輝く金髪を揺らし、拍手を鳴らす。
パンッと音が響くたび、空気がピンと張り詰められるかのようにあたりに響く。
その人物はあたりが静かになると顔を上げ、己の目に映る太陽と空と海、そしてこれから芽吹くであろう木々を見つめる。

「今年もあいさつに来たぞ…燈」

そう言って彼は神殿に一礼するとふぅと白い息を吐きながら、鳥居の方に向かって歩く。
それを神殿の屋根からジッとみている一匹の白い狼。
彼が鳥居を抜けるのを見て、その漆黒の瞳を今しがた昇ってきた太陽に向ける。
そして四肢にグッと力を籠めその頭を天に上げ、天に届くほどの遠吠えをする。

青年…降谷はその声を聴いて後ろを振り向くがそこにはすでに彼女の姿はなかった。
だが、彼女が見てくれている…そしてその力で己を護ってくれている、それだけで降谷は笑みがこぼれた。

ーさぁ新年の始まりだ。

今年の干支である風神が神殿から躍り出て、日本中にその風を届けるのだった。