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五月…ここ日本屈指のマンモス校愛譚学園では昼時の心地良い風が睡魔を促す時間帯。
そこには様々な生まれ変わりが集まり日々日常を送っていた。
その生まれ代わりの中でも最も注目の的と言えるのは、三大退鬼師である桃太郎の生まれ変わりである…桃園 祐喜だろう。
物語同様三体の獣基である猿…高猿寺咲羽、雉…雉乃木雪代、犬…犬飼雅彦をお供に己にかけられた呪いを解くために日々過ごしていた。
しかし彼らが注目を集める理由はもう一つある。
それは彼らと共に食事をしている人物たちが理由だ。
一人は赤い髪をした今絶賛人気モデルである暮内紅、ボーイソプラノで有名な柳裏葉…この二人は桃太郎に呪いをかけた鬼たちの一人であり、既に桃太郎の呪いを解いた人物たちである。
今まで鬼の呪いはその者を殺していたが、鬼が出す条件をクリアすることで、呪いを解いてもらうことも可能のようだ。

「ーとのことです。慈母」

彼らが中庭で楽しそうに食事をしている姿を屋上から見ている人物は、笑みを浮かべてその姿を見ていた。
五月の風がさぁっと彼女の真っ白に輝く髪をさらい、報告をしていた男の鼻孔にその匂いは流れる。

「銀、今日も心地良い風…眠くなるね」
「誠に、疾風が喜びましょう」

ギャーギャーと騒がしい中庭を男…凍山銀も共に見下ろす。白銀に輝く髪で右目を隠した男はその浅葱色の瞳を細め小さく呟く。

「この学園はおかしいです」
「…というと?」
「生まれ変わりがこう一度に集結することなどそうそうあることでもないと…」
「凍神、それはゼロというわけじゃない」

そう言って慈母…白野#hinata#は凍神の腰に着いた小さな法螺貝のキーホルダーを触る。

「いつかは集まる…私たちもそうだ」
「…そうですね」

その言葉に笑みを浮かべて彼女はまた眼下に広がる中庭を見る。

「そういつかは集まるんだ…ただそれがこの学園に集中していることが異常なんだ」
「…奴もいるのですか?」
「無きにしも非ず」

そう呟いた小さなつぶやきを突然吹いた風が攫って行く。

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