●組織壊滅済み
●過去話あり
●捏造あり
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「これ懐かしいと思いません?」

組織が壊滅して数か月。
今まで三雲が過ごしていたマンションを出て、降谷名義で買った部屋に引っ越しすることになった。
やはり女性…ましてや恋人名義のマンションは男としてどうかと思ったためでもある。
現在は二人で荷ほどきをして部屋にモノを配置している時だった。
突如彼女がそう言ってきたので、自然とそこに視線を向けた俺は、一度目を見開いて、そのあと眉間に皺を寄せた。
目の前の彼女はそんな俺の表情を見て、「プッ」と吹き出した。…よっぽどの顔をしているのだろう…否、自覚はある。
彼女が持っていた物、それはおもちゃのネックレスが付いたそれなりの大きさのあるテディベアだった。

「…なんであるんだよ」
「えー、捨てられなくて」

音符でもつきそうな程彼女はすぐさまに言葉を返す。
テディベアをもつ彼女はかわいい。
これを送ったのはは組織に潜入している時だった。

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「はー、今日も寒いですね」
「………」
「?ライ?」

今日はクリスマスイブ。
周りはクリスマス一色でキラキラと光るライトや、クリスマスソングがあちらこちらで流れ、周りにいる人を見れば、恋人や家族連れでにぎわっている。
…うん、今日も俺の日本は平和だ。
そんな日に俺とライの二人は任務に駆り出されていた(ちなみにスコッチは海外に出払っている)。
任務も終わり、夜が更けてきた中早く帰ろうと歩いていれば、ライが突如一点を見て立ち止まった。
どうしたのかと見、その視線を追えば一組の家族がおり、父と母親の間にいる女の子はクリスマスプレゼントなのだろう大きなテディベアのぬいぐるみを大切そうに抱きしめていた。
え?なんで?
俺はそれを見てますますライの考えていることが分からなくなり、困惑して彼を見る。すると、彼はチラッとこちらを見て呟く。

「成人済みのイギリス人の35%はテディベアと一緒に寝ているらしい」
「…???」

いきなり何を言いだすのだこの男は…。
そしてすたすたと歩きだしたと思ったら、先程の家族が出てきたおもちゃ屋に入っていくではないか。
俺は思わず、ビックリして後を追いかけてしまった。

「ちょ、貴方もテディベアを抱きしめて眠るつもりですか!?」
「俺は間に合っている」
「間に合っているって…じゃあ、何のために…」

必要ないのにライは、テディベアが売っているコーナーに着くと、俺の質問もほとんど答えずジッと品定めをしだした。
見た感じどれも同じように見えるんだが…。
暇になってしまった俺はクルっと店内を見渡す。だいぶ夜も更けてきた為、おもちゃ屋には数組のカップルと家族と数人のスタッフがいるだけだ。
今どきのおもちゃという物は俺らの時とはだいぶ進化しているようだ。
…そう言えば俺はこう言ったおもちゃなどを買ってもらった記憶はないな…。
警察官のバッチをモデルに作ったおもちゃを眺めていれば、買い物が済んだライがやってくる。その手には大人でも抱きしめることのできるテディベアを持っている(高さ30pぐらいだろうか)。

「…貴方、大人なのにそんなでかい物を…」
「?何を言っている、これはブルームーンのだ」

ライの言葉で俺はようやく納得した。
今日はブルームーンこと三雲は任務の無い為留守番だ。
家族というモノがいない(という設定)ブルームーンは一人このクリスマスイブの日に一人寂し気に俺たちの帰りを待っているのだろう。それを考えると昔一人寒い部屋にいた頃を思い出す。

「…すこし待っててください」

俺も何かプレゼントしたくなり、店内を見渡す。
そうすれば、最近彼女がDVDを借りてきて熱心に見ていたとある映画のおもちゃがあった。


【一方…】

「ツナ、そっち皆のプレゼント送っているから…着いたら例年通りお願いね」
『分かっているよ…でも、姉さんのいないクリスマスを後何回繰り返せばいいかな?』
「あと少しだけよ」

そう言って笑えば、液晶画面の中の弟も同じように眉を下げ、困ったような笑みを浮かべる。
少しの間だが、弟と話していれば、アサリから二人が帰ってきたと表示される。

「帰ってきたみたい…」
『みたいだね』
「じゃぁねツナ、皆をよろしく」
『うん』

そう言って映像が切れれば、微かに聞こえるテレビと暖房の音。
飲みかけの紅茶を持ってリビングに行けば、案の定アサリが違和感ない程度にテレビをつけて暖房もつけてくれていた。
そしてその二分後にカチャンとカギの開く音が響き、「ただいま」とバーボンの声が聞こえる。
スリッパを鳴らしながら玄関に行けば、ところどころに雪を纏った二人の姿があった。

「おかえりなさい、雪降っているの?カーテン閉めてたから気づかなかった」
「えぇ、先程降りだしましてね…それよりブルームーン」

そう言ってバーボンが差し出してきたのは綺麗にラッピングされた箱。

「?」

さらにライからも子供の自分が持つには大きなテディベアを差し出された。

「「Merry Xmas」」
「!!!」

二人の言葉に納得した。
クリスマスでは親しい友人でも家族同士でもプレゼント交換はする。先程ツナに連絡したのもファミリー全員にプレゼントを手配したという連絡だったし。
まさかこの二人から貰えるとは思っていなかった為、驚き固まっていれば、バーボンは心配そうにこちらを見、ライも気になるのか靴を脱ぎながらチラチラと見てくる。

「Grazie!!」

二人にそう言えば、バーボンもライも笑みを浮かべてくれた。

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「ふふ、懐かしい」

そう言って彼女はライから貰ったテディベアを抱きしめながら、その首元に着いたおもちゃのネックレスを触る。
テディベアに着いたネックレスのおもちゃはあの日俺から送ったものだ。
映画「モイナ」で出ていたネックレスだ。
彼女が座っているソファーの隣に座ってテディベアを改めて見つめる。

「…なんか今思うと俺のプレゼントは子供向けすぎてダメだな」
「そう?私はあの時子供だったし、嬉しかったわ」

そう言って彼女は俺の頬にキスを一つ送る。
めったにそんなことをしてくれない彼女からのキスで俺は舞い上がり、その身を抱きしめようと手を伸ばしたが、俺の腕には彼女が持っていたテディベアが…。

「さぁ、これから私たちはサンタにならないといけないから早く終わらせましょう」

本当この娘はファミリーの為ならどんなことでもしようとする。
まぁ今日のパーティーが終わった後は俺からの大人のプレゼントをもらってもらおう。

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おまけ

「え、あの時の赤井の間に合っているというのは…」
「俺は自分のテディベアを持っているという意味だ」
「あ〜、赤井はイギリス人と日本人のハーフだもんな」
「あぁ、俺はアレックスと一緒に毎晩寝ている」
「「…ぶっ!!!」」
「…何故笑う、降谷くん、天野くん」
「イギリス人はプレゼントでテディベアを貰って、名前を付けてあげるらしいから仕方ないよね」