・組織潜入中
・正体ばらしていない。
・短い上にどうでもいい話
・ライが相変わらず不憫
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のどかな午後。
本日はスコッチ以外任務の無い日だった。
そのため、暇を持て余した三人は自然とリビングに集まったのだ。
TVを見ていれば、自然とのどが渇くモノ。そのため、バーボンはのそりとソファーから立ち上がってキッチンの方に向かう。

「三雲、何か飲むかい?」
「ん、紅茶」
「どれがいい?」

そう言って言葉をかけてくれるバーボンの後ろをトコトコとついていく。棚の上からコーヒー豆やら紅茶の缶やらを取り出すバーボンの横から、どれを飲むか決める。

「ん〜」
「ダージリン?レモン?」
「ローズ」
「好きだね」

バーボンの言葉にニコッと笑ってキッチンからリビングにいるライに声をかける三雲。バーボンは「あっ」と声を出すがそれはすでに遅し。別に聞かなくてもいつものブラックだろ…とバーボンは思う。

「ライは?」
「…なんでもいい」

その回答に三雲はキョトンとしてから「ふ〜ん、分かった」と言葉をかける。
ライのなんでもいいは、コーヒーならという意味だったが三雲はニヤリと笑みを浮かべている。バーボンは「奴の分まで作らないといけないのか」とブツブツ言っていたが、服のすそをチョイチョイと引っ張られ、視線を下に向ける。三雲はあくどい笑みを浮かべると、バーボンの耳にこそこそと話をする。それを聞いたバーボンもニヤリと笑みを浮かべるのだ。
コーヒーの良い香りが漂ってくれば、TVから視線を外さないライもチラッとキッチンの方に視線を向ける。
バーボンと三雲は楽しそうに話をしながら飲み物を作っているようだ。

そしてようやく出来上がったのだろう。それぞれのコップには蓋がついており、暖かさが抜けないようになっている(タンブラーのように直接蓋から飲める奴)。
三雲はオレンジ色のマグカップを、バーボンは青色、ライは緑だ。それぞれを三雲が手渡しで渡してくる。ライも緑色のマグカップを貰い、それをすぐに飲まずに手を温めるように両手で持つ。

「バーボン、キャラメルマキアート美味しい?」
「えぇ、初めて作りましたがまずまずの出来ですよ」
「…そんな甘いモノよく飲めるな」
「ふっ、おいしいですよ?」
「私もさすがに無理かな…ライは甘いモノ苦手?」
「…好まないな」

そう言ってライはマグカップに口をつけた。

「っ!!??」

口に液体を入れた瞬間、いつものポーカーフェイスが崩れ、眉間に皺を寄せ、近くにあったティッシュを素早く引き寄せて口元にあてがっていた。

「はははっ引っかかりましたね!!」
「…バーボン」
「おっと、バーボンを怒らないでね」

げらげらと笑うバーボンに殺意がこもった視線を向けるライ。勿論それを止め、ネタ晴らしするのは三雲だ。

「だって、ライなんでもいいって言ったじゃない」
「…それはコーヒーということだ」
「でも、なんでもいいって言った、なんでもいいって言ったんだから、出されたモノに文句言わないで。文句言うくらいなら、なんでもいいはやめて、腹立つ。あぁ勿論捨てるのもダメ!!」

めったに怒りを見せない三雲の言葉にライは黙ってしまった。

ー確かに彼女はコーヒーのことを聞いたわけでもない。なんでもいい、と言ったのは確かに自分だ。

ライは一つ溜息をこぼすと、マグカップに残っているキャラメルマキアートを一気飲みする。
そしてマグカップを二人に差し出すと…

「コーヒー、ブラックで」

その言葉を受けてバーボンと三雲は顔を見合わせて笑いあう。
その時のライの顔と言ったら…バーボン曰く、最悪に不細工だったそうだ。
丁度スコッチも帰ってきてため、四人でマグカップを持ってそれぞれの飲み物を飲む。

三雲はオレンジのマグカップで紅茶を。
バーボンは青色のマグカップでキャラメルマキアートを。
ライは緑色のマグカップでコーヒーを。
スコッチは赤色のマグカップで緑茶を。

この時からライはこのメンバーでいる時は「なんでもいい」という言葉を使わなくなったそうだ。