序章

私には前世の記憶というものがある。


その世界ではとある暗殺一家の長女として生まれ、暗殺を生業として生きていた。
その時の私の髪は父譲りの銀色の髪に翡翠色の瞳をしていた。


人を殺すことに疑問を持つこともなく、ただ坦々と依頼された仕事をこなす毎日だった。
そんな毎日でも私には充実した人生だった。


周囲からは怖いが優しい家族たちに囲まれ、可愛い弟たちの友人とは笑いあい、自分にも師匠兼友人もできた。

殺しだけの毎日だったけどとても楽しかった。
そのうち私も恋をし、子供を授かり、暗殺という仕事はしていたけどとても幸せな人生だったと思う。


そう、幸せだった。
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「起きなさい、シャル」

"シャル"それが今の私の名前。
私を起こした人物は顔の半分にひし形のような刺青を入れた男性…この世界での私の父親だ。
ハンターではなく海賊がはびこるこの世界で政府に喧嘩を売る革命軍と呼ばれる反政府組織のリーダーだ。

「また毒を致死量ぎりぎりで飲んだのか?」
「うん…」
「何度言っても辞めないな…ほら、見えてきたあれが別名"白い町"…フレバンス王国だ」

首に巻き付いていた紺色のマフラーに口元を埋めながら海に浮かぶ島を見る。
毒の影響でグラグラする視界に移るのは白い雪だった。