「おじい様、おばあ様できました!!」

そう言って先程習ったばかりの料理を己なりにアレンジして持っていけば、祖母は嬉しそうに頭を撫でてくれる。
祖父も一口食べては良い所だけではなく、改良点を教えてくれる。ここは私の実家から離れた母方の祖父母の家。
幼い頃から喘息の酷かった私はこうして祖父母の家に預けられることが多かった。
料理店を経営している祖父母の家は地元の人は勿論、ちょっとした有名人が脚を運ぶ隠れた名店なのだ。
父はここで働いていた母に惚れたとかなんとか…まぁその話は置いといて、仕事の終わった二人は私の我儘に付き合って料理を教えてくれる。

私には幼い頃から二つの潜在能力があった。
一つは驚異的な目利きの才。
これはその名の通り、食材の良しあしを一目で見ただけでわかることだ。
そしてもう一つは食の声が聞こえることだ。
実際声という表現はおかしいが、その食材が生きてきた映像を見るというモノに近いのかもしれない。イワシを例にしよう。イワシはイワシでもそれぞれ個がある。どの親から生まれたのか、何番目に卵から孵化したのかなど、そのイワシが生きてきた人生を見ることができるのだ。
その二つを使うことによって私は食材一つ一つに向き合い食材の望む姿にしていった。

いくつかある大会にも出て、それなりの成績を治めれば、実家にかかってきた一本の電話。
それは祖父母がかつて卒業した遠月學園からの電話だった。
父は既に家を継ぐのは弟にしている為、私には基本甘い。そのため、高校から家の仕事の一部をすること(パーティーに出る等)、赤司の名を使わない事(万が一退学になっても世間に知らせない為)を条件に料理人としていくことを許してくれた。

そして私は今年…
日本屈指の名門料理学校、遠月茶寮料理學園に特待生として入学することになった。